理系公務員への転職を考える

今回は、理系公務員(技術職)への転職を考えていきます。いわゆる「第二新卒」など、大学などを卒業して、新卒で既に社会人として働いている経験のある方が、理系公務員への転職を検討する場合に考慮すべき事柄を説明します。

理系公務員に転職するメリット

ここで、理系公務員に転職するメリットを列挙してみます。

  • 安定して働くことができる。
  • 一定の福利厚生が得られる。
  • 民間とは異なる事業に関わることもある。

まず、「安定して働ける」のは、公務員の世界は、倒産やリストラの心配が無く、基本的に終身雇用が約束されている点です。理系公務員であっても、民間企業のように、個々の業績や成果を問われることが無く、安定した身分が保証されています。

「一定の福利厚生」に関しては、公務員は民間に比べて、残業や休日出勤は相対的に少ない傾向があります。また、給与も安定的に保証されており、育児休業、介護休暇などが取得しやすく、ワークライフバランスを取りやすいといえます。

「民間とは異なる事業」に関しては、利潤を追求する民間企業とは異なり、公共に奉仕する事業に従事できるやりがいです。理系公務員では、職種や区分にもよりますが、大規模な公共施設、インフラ整備、再開発などの街づくりに関わることもあります。

理系公務員に転職するデメリット

理系公務員のデメリットは、公務員である以上、避けられないことも多いですし、メリットの裏返しともいえます。

  • 大幅な収入アップは見込めない。
  • 転勤がゼロでは無い。
  • 前例踏襲や縦割り主義。

「大幅な収入アップは見込めない」は、民間企業に比べると、個々人の成果やキャリアが反映されることは無いことを意味します。理系公務員でも、長く勤めるほど、一定の給与上昇が見込めますが、個人の成果で特に収入が増減することはありません。

「転勤がゼロでは無い」とは、国家一般職大卒の技術系区分など、国家公務員では、全国に転勤する可能性があります。地方公務員は、それぞれの自治体の範囲に限られるものの、その地域内で異動することがあります。

「前例踏襲や縦割り主義」とは、大きく業績を伸ばす必要が無い公務員の世界では、安定的に業務を遂行するため、新たなことを行わないこと(前例踏襲)や、部署ごとの職務だけを行い、部署同士で融通しあうことが無い(縦割り主義)ことを指します。

理系公務員にはどんな人が向いているか?

理系公務員への転職を検討するにあたって、自分が向いているかどうかは気になるところです。ここで、理系公務員に向いている人について、どんな人だろうか、列挙してみます。

  • 事務処理能力が高い人
  • 組織への順応性が高い人
  • 全体の奉仕者になれる人
  • ルーティン通りにできる人
  • コミュニケーション能力が高い人

「事務処理能力」に関しては、理系公務員も、結構な割合でデスクワークがメインになることが多いです。資料の作成や書類申請など、的確な事務処理能力が必要です。

「組織への順応性」に関しては、民間から公務員に転職すると、上意下達のピラミッド構造や、他の部署との間で融通することが無いなど、独特の習慣やしがらみに戸惑うことも多いと思います。公務員では、組織の中で上手に立ち回ることが必要です。

「全体の奉仕者」とは、自分の個性や個人の成績を捨てて、公共の事業に社会貢献できるかということです。民間と違って、一人一人の成果やキャリアを伸ばすとか、個人の活躍が報酬などに反映されることは、ほとんどありません。

「ルーティン通り」については、公務員の世界では、一見すると無駄と思われることも含めて、決められた事柄を決められた通りに繰り返す業務が多いです。公務員は、すべての職務が法令に基づいて行うため、これに慣れることが必要です。

「コミュニケーション能力」とは、理系公務員であっても、さまざまな方々と出会って、仕事を進める機会が多いことを意味します。他の省庁・機関・自治体、業者や住民など利害関係者など、適切な意思疎通や説明責任を果たす能力が必要です。

理系公務員への転職方法

理系公務員の場合も、転職する方法は、一般的な公務員試験を受験する方法と、転職者向けの採用試験を受験する方法の2つが挙げられます。

まず、一般的な公務員試験を受験する方法とは、卒業予定の学生さんなどと同じ、新年度採用予定の採用試験を受験することです。公務員試験では、新卒が有利ということは無く、既卒者というだけで不利になることは無い、公平な試験です。

2つ目の方法は、転職者向けの採用試験を受験する方法です。理系公務員においても、国家公務員でも、地方公務員でも、経験者採用や社会人試験などの名称で、こうした転職者向けの採用試験を実施するケースが増えています。

近年は、理系(技術系)の公務員であっても、UIJターン採用や、チャレンジ枠など、転職者向けに受験しやすい採用枠を設けて、採用試験を実施する場合も増えています。理系公務員であっても、転職できる方法は広がっているといえます。

当サイトでは、理系公務員に関して、国家公務員は国家一般職大卒の技術系区分、地方公務員は地方公務員の技術職(大卒)で、主に一般枠を前提にして解説しています。

理系公務員になるための受験資格

理系公務員への転職を目指す場合、受験資格を必ず確認しましょう。受験資格は、それぞれの志望先によって異なります。自分が受験できるかどうか、それぞれの受験案内(募集要項)が公開されたら、まずはそこから確認しましょう。

理系公務員の場合も、受験資格のうち、年齢要件はほとんどの採用試験で設定されています。一般的な公務員試験よりも、転職者向けの採用試験のほうが、幅広い年齢の方が受験しやすい傾向が見られます。

その一方、一部の公務員試験を除けば、例えば建築職なら建築系、化学職なら化学系といった、採用枠に応じた学科等の卒業を要求することは、あまり見られません。

文系出身で理系(技術系)公務員を受験する方は、あまり見られません。これとは逆に、理系出身で、行政系・事務系、警察官、消防官などを受験する方は多いです。

また、一定の資格が必要な公務員試験もありますが、理系(技術系)公務員の場合、特定の資格を必須とする採用試験はそう多くありません。こうした点も、志望先によって違うため、出願時によくチェックすべきでしょう。

理系公務員でも、転職者向けの採用試験の中には、民間での勤務経験を、受験資格にしている場合があります。中には、厳しい基準を設けた採用試験があるものの、一般的には、志望先の職種と関連した経験である必要は無く、パートやアルバイトも経験年数に認める採用試験も少なくありません。

理系公務員への転職にあたっては、こうした受験資格を志望先ごとによくよくチェックしましょう。公務員試験は日程さえ重ならなければ、いくらでも受験できるため、併願も念頭に置いて、自分が受験できる採用試験をキープしましょう。

公務員試験は、基本的には受験料がかかりませんし、異なる職種や区分、あるいは、一般枠と転職枠など、同日実施で無い限り、いくつでも併願受験が可能です。

理系公務員になるための採用試験

理系公務員になるには、志望先ごとに、採用試験である公務員試験を受験して合格する必要があります。これは、転職者向けに特化した転職枠でも、新卒の方と一緒に受ける一般枠でも、変わることはありません。

このうち、教養試験(基礎能力試験)は、SPIのようなものだと説明されることもありますが、実際に解いてみると全くの別物だとわかります。公務員試験特有の試験種目ですし、公務員試験に特化した試験勉強が必要です。

なお、公務員試験でも、転職枠の採用試験の中には、SPIを課すところもあります。この場合も、民間企業と違って、試験の成績が厳密に反映される(合否の決め手になる)点は注意しましょう。

また、専門試験も、択一式(五肢択一式)が一般的ですが、理系公務員の場合は、記述式で課すところもあります。専門試験の科目に関しては、理系公務員(技術職)の試験科目でも注意すべき点を取り上げています。

このほか、理系公務員でも、論文(作文)試験や面接試験が課される場合があります。特に、志望動機を問われた場合は、なぜ公務員なのか、なぜうちの職場なのか、前職との違いなど、転職者独特の質問に対応する必要があります。

公務員試験が民間の就活と決定的に違うのは、これら試験種目の配点が、公平かつ厳格に適用される点です。これは転職者でも変わりません。筆記試験でも、面接や論文(作文)でも、各自の得点が確実に合否に反映される点は留意すべきです。

また、たいていの場合、転職枠の公務員試験は、一般枠よりも受験者の負担を軽くする傾向があります。とはいえ、どちらを受ける場合でも、それぞれの志望先の受験案内(募集要項)をしっかり読み込んで、試験内容をよく確認しましょう。

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