理系公務員の勉強法を考える

今回は、理系公務員の勉強法を考えます。今回の記事は、国家一般職大卒の技術系区分、および、地方公務員の技術職(大卒)を想定しています。

理系公務員は何から勉強すべきか?

まず、理系公務員では、何から勉強すべきかを考えましょう。理系公務員の場合も、教養試験(基礎能力試験)と専門試験の択一式対策、および、論文(作文)を勉強しておけば、併願受験の幅が広がります。

その一方、地方上級(都道府県、政令市、東京都特別区)の一部の自治体では、専門試験を記述式で課すところもあります。また、政令市以外の一般の市役所や町村役場では、専門試験を課さず、教養試験のみという自治体もあります。

公務員試験は一定の人材の安定的な確保が目的ですから、頻出項目や難易度が、年度によって大きくブレることがありません。これは択一でも記述でも同じです。専門記述の前に、専門択一の勉強を行っておくと、頻出項目の理解が進みやすくなります。

こうしたことから、教養と専門の択一式、および、論文対策を行えば、かなり多くの公務員試験を併願できると思います。専門を記述で課される場合も、まずは専門択一の勉強をしてから専門記述の勉強をすると、頻出項目(論点)が理解しやすくなります。

教養でも専門でも、最初のうちは、正答率が低い科目ばかりかもしれません。解答・解説を読んだ後はそれを閉じて、自力で解く練習をしましょう。過去問を3回でも5回でも10回でも繰り返すことで、解法パターンの習得を意識すれば、正答率も上がっていくはずです。

どんな科目から勉強すべきか?

また、教養も専門も、やたら科目数が多い一方で、科目ごとの出題数にはバラツキがあります。出題数が多い科目で、単純な暗記が通用しない科目(論理的・数的な思考を要する科目)は優先的に取り組み、時間的な余裕があるうちに勉強を済ませておきます。

その一方、出題数が少なく、単純な暗記で済む科目は、早期に勉強したところで、忘れることばかりになってしまい、もう一度覚え直すことになります。こうした科目は、主要科目をクリアしてから直前期を迎える前に、集中的に勉強しましょう。

教養試験(基礎能力試験)の勉強法

教養試験(基礎能力試験)は、職種や区分を問わず、同じ試験内容が課される試験種目です。択一式で課されることが一般的で、一般知能(知能分野)と一般知識(知識分野)に分かれます。

教養試験は、勉強というより演習とかトレーニングといった方がよいかもしれません。確かに暗記科目も多いのですが、限られた時間の中で、次々と解いていかないと解き終わらないこともあります。演習を通じて、解法パターンを習得していきましょう。

一般知能(知能分野)

理系公務員の方は、教養試験、特に一般知能を甘く見てはいけません。教養をSPIのようだという方もおり、一見そのように見えなくも無いですが、問題を解いてみると、全然別物で、明らかにこっちのほうがやっかいで難しいことに気づくと思います。

実際に勉強すると、理系公務員の方でも、一般知能、とりわけ数的処理(判断推理、数的推理)や文章理解が、存外に手間がかかると実感するでしょう。特に、合格者の中でも、数的処理は5割も取れなかったという方がおられます。

とはいえ、一般知能も採用試験の一環ですから、必要とされる論理的思考や数学的な解き方は、一定の範囲に収まっています。過去問を中心に、類型化された解法パターンを一通り習得すれば、どなたでも解ける問題がほとんどです。

数的処理は、難問も混じりますが、その割合はわずかです。過去問演習でパターンさえ習得すれば、これは難問だと見抜いてスルーする一方、大部分を占める基礎~標準問題を解き続けることで、合格ラインに十分に届くことが可能です。

理系公務員であっても、一般知能の勉強は、問題を見たらすぐにどんな解法で解けるかが浮かぶくらいまで、早く正確に解く練習を、何度でも繰り返し行うことが合格への近道だといえます。

一般知識(知識分野)

一般知識は、単純に暗記だけで通用する問題が多いのですが、社会科学(政治、経済、法律、社会など)、人文科学(日本史、世界史、地理など)、自然科学(物理、化学、生物、地学など)と、やたら科目数が多い分野でもあります。

ただし、一般知識は、高校の教科書から共通テストレベルの問題が多く、自然科学であっても、典型的な法則や公式、原理などをそのまま当てはめれば解ける問題がほとんどです。どの科目も、単純に暗記だけで解ける問題が多いのが一般知識です。

知識科目は科目数が多い一方、1科目当たりの問題数が少なく、大半が純粋な暗記で通用する基礎~標準問題です。このため、なるべく捨て科目は作らないことや、各科目の基本かつ頻出テーマだけ抽出して、効率的に勉強することが、合格への近道です。

もちろん、やみくもに全科目を勉強しようと言うわけではありません。出題数の多い科目や、ちょっと勉強して出来そうな科目は絶対に攻略する一方で、出題数が少なく、時間を掛けた割に全然取れない科目は、1~3科目程度なら捨てても良いと思います。

ただし、一般知能はできるだけ点数を稼ぐ我慢の勉強ですが、一般知識はみんなが点を取る傾向があります。一般知能で足りない点数を、少しでも多くの知識科目で稼ぐ必要があります。食わず嫌いをせず、出来るだけ全科目に取り組むことをおすすめします。

捨て科目は無いほうが良い

理系公務員の方でも、学習経験の無い科目で、捨て科目を作る傾向があります。しかし、物理でも化学でも、過去問を解いてみると、高校教科書レベルの初歩的な公式や原理をあてはめるだけの、ごく単純な問題が多いことに気づくと思います。

教養試験で要求される算数や数学の計算能力は、中学~高校の教科書レベルがほとんどです。こうした点からも、捨て科目を作るのは実にもったいないですし、他の受験生に差をつけやすいチャンスでもあります。

さらに、やはり公務員試験は採用試験ですから、毎年出てくる必要な法則や公式というのも、一定の範囲に収まっています。一般知識は、なるべく広く浅く、数多くの科目を過去問をベースに頻出項目をさらっていくことで、独学でも十分に対応できます。

専門試験の勉強法

理系公務員における、専門試験の勉強法ですが、教養試験(基礎能力試験)以上に、軽い気持ちで捨て科目を作るのは避けるべきです。理系公務員では、専門は教養よりも、受験生の得点率が高い傾向があり、全ての科目に取り組むべきです。

また、専門試験について、理系公務員だから大学などで勉強した内容がそのまま出ると思って甘く見ていたら、大変に痛い目に遭うと思います。理系公務員(技術職)の試験科目で取り上げた通り、出題科目を確認した上で、しっかりと公務員試験に向けた勉強をすべきです。

とはいえ、満点を取る必要は無く、専門試験では、おおよそ7割を取れれば十分です。先に述べた通り、出題数が多く、思考プロセスの理解に時間がかかる科目を優先し、出題数が少なく、単純な暗記で通用する科目は、その後で集中的に勉強しましょう。

工学の基礎(数学、物理)

専門試験は、職種や区分ごとに異なる試験内容が課される試験種目です。これに加えて、いわゆる工学系の区分と呼ばれる理系公務員では、「工学の基礎」が課されます。工学の基礎は、高校~大学2年程度の数学や物理の問題です。

工学の基礎は、公務員試験によって、「工学に関する基礎」、あるいは、「数学」「物理」という科目として課されます。工学の基礎は、教養試験の一般知識で課される数学や物理とは、全くの別物と考えた方が良いと思います。

工学の基礎は、土木、機械、建築、電気、電子、情報(デジタル)では、専門試験の問題数の半分を占める公務員試験もあります(国家一般職大卒など)。化学や農業土木でも、半分ほどではありませんが、それなりの出題数を占める科目です。

なお、工学の基礎は、農業・農学や林学などの区分で出ることは、ほとんどありません。また、地方上級(道府県、政令市)では10問出ますが、東京都や東京都特別区では出ません。

専門択一と専門記述

専門試験の出題科目は、職種・区分が同じなら、異なる採用試験でもほぼ同じ試験内容です。出題内容は、各職種・区分に属する、大学の各学部・専攻の学習範囲に相当します。また、専門試験の択一対策の勉強が、記述式の試験対策にもつながります。

専門試験で記述式試験が課される場合は、計算の途中の経過も書かせる計算問題、専門用語を説明させる問題(説明問題)、論文試験のように専門的な事柄に対して考えを求める問題などがあります。

専門記述の勉強では、計算問題対策は途中式を省かずに早く正確に書く、説明問題対策は1つ1つの語句や現象などを文章(書き言葉)として説明する、論文のような問題には専門知識とそれに基づく論述を採点者に分かるように書くことを習慣化・練習しましょう。

択一式でも記述式でも、公務員試験で問われやすい頻出項目は同じです。専門択一の勉強が、そのまま専門記述の対策に繋がりますし、過去問をベースに何度も出るところに絞った勉強で、効率よく合格ラインに乗ることが可能です。

論文試験の勉強法

理系公務員の勉強法で、受験生が最も苦戦するのが、論文対策です。出題される課題が、自分が大学などで学んだ専門分野とは全く違うことが多いです。政治・経済・社会・国際・科学技術・文化などのテーマで、自分の考えを素直に論じることが要求されます。

論文試験の勉強は、本試験まで最低でも1年前(つまり受験年度より前年の本試験終了後)からは、自分が受験する本試験の論文試験で何がでてもおかしくない前提で、時事問題やニュース等、意識してフォローしていきましょう。

また、公務員試験の論文試験では、与えられた課題に対して、出題者の意図からズレることなくストレートに答え、そこに自分だけの考え方や発想を盛り込み、論理的な文章を書く能力が求められます。

当然ながら、論文(作文)試験には、試験時間や文字数の制限があります。そこで、自分の考えが読み手(添削者)に的確に伝わる文章を、短時間で簡潔にまとめあげる練習が必要です。

当サイトは、独学でも十分に公務員試験に合格すると考えています。ただし、論文試験に関しては、できることなら、過去問などを利用して、自分なりに文章の構成を考えて、実際に答案として書き出し、答案の添削を何度も受けることをおすすめします。

身近に相談できる先生や先輩、大学などで行っている公務員試験向け講座など、添削指導が受けられる機会があるなら、積極的に活用しましょう。

また、一部のハローワーク(国の施設)や、東京しごとセンター(東京都の施設)など地方自治体の施設でも、就職希望者向けの論文添削講座を、不定期に開催しています。これらは、公務員試験に特化していませんが、利用を検討する価値はあると思います。

こうした機会が無い方でも、結構なお金はかかりますが、公務員試験の受験予備校を利用するのもひとつの選択肢です(理系公務員の予備校はどうなのか?)。こちらは公務員試験に特化した有料講座だけあって、適切な添削を受けられると思います。

論文試験の勉強は、何度も添削を受けてフィードバックを行い、自分だけの手本と考えてストックしておくことが望ましいと言えます。

面接試験の勉強法

理系公務員にも、多くの場合、面接試験があります。面接対策も、試験勉強の初めから着手するのが望ましいと思います。ただし、そこまで余裕が無いなら、想定問答や面接カードの検討など、本格的な面接対策は、1次試験終了後でも良いと思います。

勉強のしようが無い面接試験ですが、理系公務員であっても、個別面接はほぼ全ての公務員試験で必ず課されています。民間の就活に比べると、倍率は相当低くなりますが、そのぶんだけ、1人1人を精査する、重要な試験種目といえます。

ほとんどの公務員試験では、理系公務員でも個別面接が主流です。ただし、中には、集団面接や集団討論を課す公務員試験もあります。こうした形式の場合、他の受験者を邪魔しないことや、自分のアピール、コミュニケーション能力が求められます。

何を聞かれ、どう話すべきか

理系公務員にとって、面接試験は大きな落とし穴になりかねない重要な試験種目です。まず、専門用語をなるべく使わず、一般に誰が聞いても理解してもらえるような、簡潔かつ平易な言葉で伝える訓練が必要です。

理系公務員だからといって、面接試験で専門的な事柄を問われるとは限りません。その一方、志望動機と自己PRは、かなりの確率で聞かれると思います。面接官にその内容がよく伝わるような、分かりやすい言葉づかいを心がけてください。

特に理系公務員なら、「なぜ民間ではなく公務員なのか」「なぜうちの省庁・機関(自治体)なのか」など、志望動機は様々な切り口で聞かれます。また、志望先が取り組む事業について、専門外の事柄をどれだけ知っているか、あえて試されることもあります。

面接対策をどうするか

公務員試験でも、人物重視の傾向が強まっていますが、市販の参考書でも公務員試験の予備校でも、過去の実施内容を入手できる機会がありますので、これらを活用して、的確な対策を行えば、十分に対応できます。

面接試験に関しても、大学などが主催する公務員試験講座や、ハローワークや地方自治体の施設、公務員試験の予備校などで、模擬面接を実施しています。無料・有料問わず、こうしたサービスを活用することで、十分に乗り切れると思います。

ここまで、理系公務員の勉強法について考えてきました。当サイトでは、理系公務員の場合も、独学でも十分に合格できると考えています。理系公務員の参考書・問題集については、理系公務員の参考書で一括して取り上げています。