今回は、理系公務員(技術職)の仕事内容について、区分・職種ごとに、国家公務員と地方公務員それぞれの参考例を取り上げます。志望先の職務内容が少しでもイメージできるように、参考例として説明します。
ここで説明する理系公務員(技術職)は、国家公務員は国家一般職大卒の技術系区分、地方公務員は地方公務員の技術系区分(地方上級、市町村)を対象にしています。
また、今回取り上げる技術系公務員の仕事内容は、あくまでも代表的な参考例です。全ての職員がこの仕事に従事するとは限りませんし、ここで取り上げた以外にも、たくさんの省庁・機関・自治体で、各自の専門分野を活かせるさまざまな仕事があります。
土木職の仕事内容
土木職は、国家・地方どちらの公務員でも、インフラ整備に関わることが基本です。環境や防災、省エネ対策に関与することもあります。単に作るということだけでなく、維持管理や補修、関係機関や業者との調整にあたることもあります。
国家公務員:土木職の業務内容
土木職は、国家公務員(国家一般職)の場合、各機関が対象とする社会資本の整備・管理に関して、企画調整、調査計画、設計・清算、施工管理、管理保全などの業務を行います。採用機関によっては、防災、省エネルギー、新エネルギーにも関わります。
例えば、国土交通省の地方整備局では、国交省が管轄する道路、河川、港湾、空港、公園などが対象ですし、防衛省の地方防衛局であれば、自衛隊、在日米軍関係者や施工業者との調整、および、現場監督なども、業務に含まれます。
また、会計検査院では、技術系行政官として、各省庁が発注した公共工事等の検査や、公共建築物の耐震化状況の検査などに従事します。
地方公務員:土木職の業務内容
地方公務員の土木職は、各自治体が管轄する生活関連社会資本(下水道、教育施設、病院、公園、道路など)の整備・管理、河川や海岸などの開発や防災事業、建築物の耐震対策、庁舎や出先機関の増築・改築などに、技術的な側面から幅広く関わります。
自治体によっては、市街地活性化に向けた再開発など、大きな事業に取り組むこともあります。その一方で、土木職が農業土木を兼ねていて、農地などの整備に取り組む自治体もあります。
建築職の仕事内容
建築職は、それぞれの省庁・機関・自治体が管轄する、建築物などの建設や修繕に関わる業務に対して、技術的な観点から取り組みます。
国家公務員:建築職の業務内容
国家一般職大卒の建築区分のうち、法務省では、法務省の施設整備部門である大臣官房施設課に採用されると、検察庁、矯正建築(刑務所や少年院)、職員宿舎など、全国の法務省管轄の施設の建て替え、改修、補修などに取り組みます。
文部科学省では、国家総合職や国家一般職大卒から施設系職員として採用された場合、その多くは文教施設企画・防災部に配属されます。そこでは、学校施設整備の基本的な計画、国公立の学校施設整備の財政支援、文教施設の災害復旧・防災、文教施設整備の技術的基準などを取り扱っています。
外務省では、世界各国にある我が国の在外公館(大使館、総領事館など)の新築、増改築、保全などを「在外営繕業務」と呼び、これに従事する技術系職員(営繕技官)は国家一般職大卒の技術系区分からの採用であり、建築区分からも採用されています。
地方公務員:建築職の業務内容
地方公務員の建築職は、各自治体が管轄する建築物が対象となります。一般的な庁舎、職員宿舎、公営住宅、公共施設などの建物のほか、浄水場、下水処理場、ポンプ場、橋梁、トンネル、道路など、建築職が要求される業務は幅広く見られます。
また、自治体によっては、景観の維持、市街地の再開発、文化財の保存の維持、防災、耐震化などの事業に関わることも多いといえます。
デジタル(情報)・電気・電子職の仕事内容
デジタル(情報)・電気・電子職は、電気設備、通信設備、情報システム、ネットワークなどの正常な稼働を支える業務に従事します。各自の専門に応じて、各設備の安定的な運用や、職場のデジタル化、情報セキュリティなどの最前線で働きます。
国家公務員:デジタル(情報)・電気・電子職の業務内容
国家一般職大卒は、デジタル(情報)、電気、電子を「デジタル・電気・電子職」として一括して採用します。各自の専門によって、業務のデジタル化、情報セキュリティ対策、各種設備の営繕業務など、仕事内容が大きく異なります。
厚労省では、情報系の職員を中心に、同省が保有する情報システムの企画・立案・運用、調達に係る審査・評価・指導、情報セキュリティ対策、省内のICT化の強化に従事します。
農水省では、情報通信や情報処理に詳しい職員が、3000を超える行政手続を、全てオンライン化するプロジェクトを進めています。また、デジタル地図の技術を活用して、現場の農地情報を統合する共通管理システムの開発を進めています。
外務省では、国家一般職大卒のデジタル・電気・電子区分から、情報通信、情報処理、理数科に明るい技術系職員を採用しています。外務省と在外公館との通信システムの開発・運用・管理、情報セキュリティ対策、省内業務のICT化などに従事します。
地方公務員:デジタル(情報)・電気・電子職の業務内容
地方公務員の場合、デジタル(情報)・電気・電子職を、一括して採用する自治体もあれば、2つまたは3つの区分に分けて採用する自治体も多く見られます。やはり、電気、電子、情報・デジタルなど、職種・区分によって業務内容が違ってきます。
具体的には、各自治体が管轄する庁舎、職員宿舎、学校、病院、公営住宅、上下水道、港湾などの電気設備、LAN、防災行政無線などの構築と維持管理、自治体の行政手続などのデジタル化やサイバー攻撃対策などに取り組みます。
工業用の水道設備や、公営電気事業者として発電施設を有している自治体では、それらに関わる電気・電子・情報設備の設計・管理も担います。その一方、情報・デジタル系の職員は、庁内のデジタル化や情報セキュリティ対策の実務を担うことがあります。
このほか、技術センターなどを持つ自治体では、ものづくり分野におけるIoT・ICT技術、太陽光発電などの再生可能エネルギーなど、研究開発や企業への技術支援、あるいは、電子機器の信頼性試験などを行っています。
機械職の仕事内容
国家公務員・地方公務員どちらの場合も、機械職は、それぞれの省庁・機関・自治体が管轄する各種設備、公共交通機関、社会資本の設置・修繕・運用について、機械系統の技術的な観点から取り組むことになります。
国家公務員:機械職の業務内容
国家一般職大卒の機械職において、国土交通省で航空関連の部署を志望する場合、主な配属先は、航空局(東京航空局と大阪航空局の2つ)、地方航空局、空港事務所、または、出向先(新関西空港、空港周辺整備機構)が挙げられます。
そこで主な業務内容としては、国が管理する空港や管制塔・庁舎、航空保安施設に必要な機械施設、特殊車両の管理、運用、保守に関する企画、立案、調整、監督、検査等の業務を行っています。
防衛省では、防衛計画の大綱や中期防衛力整備計画の策定は、国家総合職出身の職員が関わります。その一方、国家一般職大卒の機械職で採用された職員は、その目的を達成するために、実際の装備品の調達や整備に関わる準備・支援を担うことがあります。
国家一般職大卒の機械職では、防衛技官として採用された場合、装備品の試験の準備や整備に関わる調整、ロケットなどの研究、民間企業や関連部署とのミーティングなど、防衛省が進める政策を、実務的な現場で取り組む職員がおられます。
地方公務員:機械職の業務内容
地方公務員の機械職では、各自治体が管轄する本庁舎、出先機関、公共交通機関、学校、公民館、図書館、上下水道、廃棄物処理場、体育館、陸上競技場、文化施設など、機械設備の設計、工事監督、点検、修繕に関わる業務に従事します。
機械職の場合、公共施設において、給排水などの衛生設備工事や、冷暖房等の空調設備工事など、機械設備工事の監督を担います。一般に、工事を受注した事業者が、設計段階通りの適切な施工かどうかや、計画通りに工事が進んでいるか監督します。
上下水道や廃棄物処理場などでも、機械設備の設計・保守管理の業務を担います。定期的なメンテナンスはもちろんですが、台風や豪雪など、大規模な災害時などでも、現場の確認を行うことがあります。
自治体によっては、産業技術センターのような試験・調査を担う研究機関を持っています。こうした機関に配属された場合、産業技術に関する試験研究や、地域の企業に対する技術指導や相談業務を担うこともあります。
化学職の仕事内容
化学職は、国家・地方公務員とも、専門的な観点に基づいて、各省庁・機関・自治体が担う事業の遂行を、実務面から支えている区分・職種です。多くの化学職は、環境分野に関するものですが、財務省税関や警察庁など、犯罪に関わる業務もあります。
国家公務員:化学職の業務内容
環境省では、化学物質や排ガス規制、電動車の普及などの脱炭素化といった事業に対して、企画立案や制度設計、メーカーなど事業者からの聞き取りといった、さまざまな事業の土台作りの実務に取り組むことがあります。
原子力規制庁では、放射性物質や加速器等の利用に関する規制、原子力災害の予防対策、緊急時に備えた訓練や資機材整備、放射線モニタリングシステムに関して、予算や契約、会議の調整、文書管理など、庁内外の調整を担うことがあります。
財務省税関では、化学品の通関業務に関わり、食品や化学品の成分分析、不正薬物の鑑定業務に携わる職員がおられます。また、関税中央分析所に配属され、税関から依頼を受けた輸出入物品の分析業務に携わることもあります。
警察庁では、DNA型鑑定施設において、全国の警察から嘱託を受けた被疑者資料のDNA型鑑定を実施しています。都道府県の科学捜査研究所へ出向し、様々な事件の手がかりの鑑定や、実際に犯罪現場に臨場して現場の検証等を行うこともあります。
地方公務員:化学職の業務内容
地方公務員の化学職は、健康福祉局、保健所、環境局、下水道局、水道局など、保健福祉、環境保全、上下水道に関係する部署への配属が一般的です。その一方、自治体によっては、試験研究機関を有しており、調査研究に従事する職員もおられます。
化学職が関わる範囲は自治体によって異なりますが、一般的には、大気汚染、水質、土壌汚染、騒音、廃棄物など、モニタリング・検査・調査・測定を行い、必要に応じて規制や指導、環境影響評価制度の運用などに関わります。
また、各自治体が策定する環境対策、防災対策、原子力対策などの各種施策に関して、専門的な見地から、総合調整、企画立案、予算の作成・執行など、一般的な実務に携わることもあります。
農業・農学職の仕事内容
農業・農学職は、国家・地方公務員とも、生産振興、有害な鳥獣・害虫対策、技術指導、施設整備、農地保全、災害対応、食育の推進、経営支援、試験研究、イベントや広報活動などに従事します。
国家公務員:農業・農学職の業務内容
国家一般職の農学区分で最も人気があるのは、農林水産省です。地方農政局だけでなく、本省で勤務する場合もあります。地方自治体では出来ない国レベルの事業について、調査、調整、事業執行、各種支援・指導など、政策現場の実務を担います。
また、警察庁では、DNA型鑑定技術職員の採用を、国家一般職大卒の化学と農学区分を対象に行っています。入庁時に特別な知識を有している必要は無く、国家一般職大卒の採用試験で求められた知識があればよいとされています。
地方公務員:農業・農学職の業務内容
地方公務員の農業・農学職は、農業や農学など自治体によって名称が異なります。農業への理解の促進、多様な担い手の確保、技術指導、経営支援、相談業務、地産地消の推進、農地の保全・活用、有害鳥獣対策など、地域の実情に即した実務を担います。
地方公務員の農業・農学職は、国家公務員よりも、より地域に密着し、生産者や農業関係の団体・企業などと接する機会が多いといえます。一般的な農業行政以外にも、普及指導、試験研究、農業大学校(道府県が設置)の講師などの業務にあたります。