児童相談所とは

児童相談所(児相)とは、児童福祉法に基づく、児童福祉の専門機関です。

児童相談所は、都道府県、政令指定都市(政令市)、中核市、東京都特別区(東京23区)に設置が認められています。実際には、すべての都道府県および政令市と、一部の中核市および東京都特別区が設置しています。都道府県の児相は、児相を設置していない市区町村を管轄します。

児童相談所では、18歳未満の児童を対象に、児童虐待、障害、非行、不登校など、さまざまな相談に対応します。子どもの心理検査や面接、保護者との面接を行い、都道府県庁や市役所・町村役場・区役所、学校、施設、医療機関などの関係機関と連携し、子どもの成長を支援します。

児童相談所では、児童を一時保護所に保護するか、親に戻すか、児童養護施設などに預けるかといった決定も行います。また、児童相談所では、18歳未満の知的障害の方の療育手帳の判定業務も行っています。

児童相談所の仕事内容

児童相談所は、児童福祉法に基づく、子供の人権にかかわる行政の相談機関です。18歳未満の児童のあらゆる相談を受けています。児童虐待や触法(非行)相談など、子供や家族の意向やニーズとは無関係に、相談が開始されることもあります。

児童相談所の相談援助は、それぞれの対象に対して、子供、家族、機関、地域全体をシステムとして捉え、働きかけます。そして、一つのケースに対して、児童福祉司、児童心理司、児童指導員、医師等、多くの専門職が協働して援助を行います。

児童相談所の主な仕事内容は、以下の通りです。

  • 児童の養護、保健、心身障害、非行、育成に関する相談
  • 児童やその家庭について、調査・指導や、医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定を行う
  • 特別児童扶養手当及び療育手帳の判定事務
  • 児童を一時保護所に保護し、その後親に戻すか、児童養護施設などに預けるか決定する

児童相談所の職員

一般的に児童相談所では、以下の職員が配属されます。

  • 行政事務系の職員
  • 精神衛生の知識のある医師(または保健師)
  • 大学で心理学を専攻している児童心理司
  • 児童福祉司

また、児童相談所を設置している自治体の約6割が、児童相談所に現職の警察官を配置しています。さらに、自治体によっては、児童相談所に弁護士を配置またはそれに準じる措置を行っているところもあります。

児童相談所は、多くの職種の方で構成され、さまざまな外部機関と連携を図って、多角的な視点から、チームとして、子どもの健全な成長を支援する機関といえます。

児童相談所の実際は、どんな感じ?

児童相談所は、実際のところはどうなんでしょうか?

専門以外の業務も多い

児童相談所には、福祉職(児童福祉司)や心理職(児童心理司)の方がおられます。それぞれ、ソーシャルワークと心理診断の専門家として、面接や相談業務に乗り出すことが多いと思います。

ただし、どちらの専門職も、本来の専門業務以外に、行政事務やコンサルティング、地域支援といった仕事が少なくありません。また、勤務先によりますが、出張の機会が多かったり、残業することがあります。

児童相談所では、専門職が専門業務だけやっていれば十分という自治体は、まず無いかもしれません。それだけ、職員全体の絶対数が足りないのが現状といえます。

専門家自体の不足

児童相談所では、ソーシャルワークの専門教育を受けた者が、ケースワーカーになるべきです。しかし実際は、行政事務系の職員を児童福祉司として任用し、児相に配属する自治体が少なくありません。

特に行政事務系の職員は、異動のサイクルが短いため、数年たてば異動となり、専門知識や経験が蓄積されにくいという問題があります。福祉職の公務員が、絶対的に不足していることが、大きな要因といえます。

現状では、児童福祉司として勤務する専門職(福祉職)の採用自体が、全国的に多いとはいえません。ただし、少しづつですが、自治体の間で問題意識が広まっており、都市部を中心に、将来的には、福祉職の採用を増やす流れにはなってきています。

それでも公務員として魅力的

ここまで、児童相談所の好ましくない現状を説明しましたが、それでも、公務員である以上、給与面や福利厚生はしっかりしています。休日や育児休業なども、民間に比べれば、普通に取りやすく、過剰労働やバーンアウト防止に取り組む自治体もあります。

児童相談所で働くには?

児童相談所は、全ての都道府県と政令指定都市、および、一部の中核市と東京都特別区に設置されています。児相は、各自治体の児童福祉機関です。児童相談所で働くには、ご自身が志望する自治体の採用試験を受験することになります。

児童相談所で専門職の職員として働く場合、多くの自治体では、児童福祉司、児童心理司、児童指導員の採用を行っています。また、一般的な公務員の福祉職としての採用や、児相および一時保護所に勤務する保育士の採用もあります。

このうち、児童福祉、児童指導、児童心理、保育士など、特定の職種に特化した採用の場合、主な勤務先として、児童相談所、一時保護所、子ども家庭支援センターなどが挙げられます。

一般的な福祉職として採用される場合は、児童相談所、一時保護所に限らず、福祉事務所、高齢福祉課、子ども家庭支援センター、心身障害者福祉センターなど、より幅広い勤務先や業務内容が考えられます。

多くの自治体では、児童福祉や児童指導の受験資格は、社会福祉士や児童指導員、児童心理の受験資格は、大学で心理を専攻した方を求めています。このほか、保育士、児童生活支援員、児童自立支援専門員、精神保健福祉士を求める場合もあります。

また、児相で勤務することを前提として、経験者採用試験、一般任期付職員といった採用枠を設ける自治体もあります。この場合は、一定年数の職務経験を、受験資格に加える自治体があります。

採用試験に関して

採用試験に関しては、どの職種の場合も、人物重視という観点から、大半の自治体で、論文試験や面接試験が大きなウェイトを占めています。

論文試験の場合は、職務に関連する専門性の高い試験を課す自治体が多いといえます。面接試験(人物試験、口述試験)の場合は、いわゆる個別面接のほか、ロールプレイング形式の実技試験を課す自治体もあります。

児童福祉、児童指導、児童心理では、一般的な公務員試験でみられる、択一式試験を課す自治体は少ないといえます。なお、大卒程度の採用試験で、教養試験(基礎能力試験)を択一式で課す自治体の場合は、大卒公務員の教養試験(基礎能力試験)を参考になさってください。

また、地方公務員の一般的な福祉職と心理職については、それぞれ以下の記事で一括して取り上げています。参考になさってください。