児童自立支援専門員や児童生活支援員とは、児童自立支援施設において、児童の自立を支援する職員です。児童自立支援施設は、非行行為や家庭の問題により、生活指導が必要な児童を受け入れる施設です。
(児童自立支援施設については、児童自立支援施設とはにまとめていますので、併せて参考になさってください)
実際の仕事は、生活指導、学習指導、スポーツ、集団作業、職業指導・進路相談、医師や教員との連携、家庭環境の調整、保護者や関係機関との連絡、地域との連携、各種行事の実施など、それぞれの役割に縛られず、強力しあって柔軟に対応します。
現在の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」(厚生労働省)によれば、児童自立支援専門員と児童生活支援員の業務内容は、「生活指導、学習指導、職業指導及び家庭環境の調整。」であり、ともに児童の自立支援を行う職員といえます。
児童自立支援専門員と児童生活支援員のどちらも、24時間の住み込みが基本であり、小規模な集団の家庭的な寮生活で、親代わりの存在として、児童たちと寝食をともにします。
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児童自立支援専門員と児童生活支援員の違い
児童自立支援専門員と児童生活支援員の違いは、一言でいえば、自立を支援するのが児童自立支援専門員、生活を支援するのが児童生活支援員です。ともに児童に寄り添う存在の中で、児童自立支援専門員が父親的役割、児童生活支援員が母親的役割とも言われます。
どちらかといえば、児童自立支援専門員は、力仕事や共同作業、職業指導など、経済的にも社会的にも、自立できる力を伸ばすのに対して、児童生活支援員は、炊事、洗濯、料理といった家事など、暮らしていく上で必要な生活力を伸ばす役割だといえます。
かつて児童自立支援専門員と児童生活支援員は「教護」「教母」、児童自立支援施設は「教護院」と呼ばれました。その後、児童福祉法の1997年改正(1998年施行)により、名称の変更と同時に、児童生活支援員に定められた性別要件も撤廃されています。
児童自立支援専門員と児童生活支援員は、「教護」「教母」だった歴史的経緯や、任用要件の違いなどから、一定の役割分担が見られるといえます。もちろん、生活・学習・職業指導など、柔軟な対応が必要ですし、業務内容は重なる部分も大きいです。
児童自立支援専門員も児童生活支援員も、社会福祉士を持つ方が多いほか、児童自立支援専門員は実務経験、児童生活支援員は保育士を持つことで要件を満たす方も多いといえます。
児童自立支援専門員・児童生活支援員になるには
児童自立支援専門員は任用資格ですし、児童生活支援員も(後述通り)事実上の任用資格といえます。任用資格とは、その資格が必要な職務に任用されて初めて、効力を持つ資格のことです。
児童自立支援専門員の場合
児童自立支援専門員になるには、以下の要件のどれかに該当する必要があります。その上で、児童自立支援専門員に任用されて初めて、効力を有する資格(任用資格)です。
- 医師であって精神保健に関して学識経験を有する人
- 社会福祉士の資格を持つ人
- 都道府県知事の指定する養成機関を卒業した人
- 大学や大学院で指定科目を履修して卒業し、児童自立支援事業の実務を1年以上、または、その他の実務を2年以上経験した人
- 高校を卒業し、児童自立支援事業の実務を3年以上、または、その他の実務を5年以上経験した人
- 教員免許を保持している人が、1年以上児童自立支援に従事、あるいは、2年以上教員の職務経験がある人
実際の児童自立支援専門員は、社会福祉士や実務経験で要件を満たす方が多いといえます。養成機関には、国立武蔵野学院附属児童自立支援専門員養成所があり、全日課程(定員25名)と通信課程(定員40名)があります(ともに養成期間は1年間)。
児童生活支援員の場合
児童生活支援員は、以下の要件のどれかに該当する必要があります。
児童生活支援員は、法令上は任用資格ではありません。しかし、児童生活支援員自体が、児童自立支援施設のために働く職業であるため、実質的には、任用されて初めて有効となる資格といえます。
- 保育士の資格を持っている
- 社会福祉士の資格を持っている
- 3年以上の児童自立支援事業での実務経験がある
どんな人材が求められるか
児童自立支援専門員や児童生活支援員は、さまざまな問題や悩みなどを抱えた子供たちに、深い愛情とともに寄り添う姿勢を持ちつつ、時には厳しい態度で接する人間性が要求されます。
非行行為や被虐待の経験を抱えた児童たちは、親からの愛情を受けてこなかったり、社会に対する不安や不信感を抱えています。
個々の児童が抱える事情を踏まえ、粘り強い指導や、ひとりひとりを理解する観察力も必要ですし、児童本人だけではなく、医師(または嘱託医)や教員、保護者や関係機関とのコミュニケーション能力も求められます。
要件取得後の採用は?
児童自立支援専門員・児童生活支援員ともに、国立または公立の施設で働くには、その施設のそれぞれの運営主体(国や地方自治体)が行う採用試験に合格して、該当する施設に配属される必要があります。
採用試験は国や各自治体によって異なります。自治体の中には、福祉職という形で採用試験を行うところや、児童自立支援専門員と児童生活支援員のそれぞれについて、独立した採用枠を設けて採用試験を行うところが、少なくありません。
児童自立支援施設は施設数が少なく、ほとんどの場合、職員の募集は欠員補充として実施されることが一般的です。採用状況は決して楽とはいえませんが、やりがいのある仕事に挑戦する価値が十分にあるといえます。
なお、国公立や私立を問わず、全国の採用情報に関しては、全国児童自立支援施設協議会のウェブサイトで、全国の職員募集情報を確認することができます。