教育学/教育学概論

ここでは、教育学/教育学概論の試験対策を取り上げます。今回の記事は、教育学や教育学概論の名称で課される教育学の基礎領域をカバーします(教育学の応用科目に関しても、各記事へのリンクを後述します)。

今回想定する「教育学」や「教育学概論」の試験対策は、以下の公務員試験を対象とします。どれも国家公務員試験です。

  • 国家総合職(人間科学)→専門試験(択一式)の1部および2部(選択B)の教育学に関する問題、専門試験(記述式)の教育学のうち教育学概論に関する問題
  • 家庭裁判所調査官補→1次試験(記述式)の教育学概論、2次試験(記述式)のうち教育学概論に該当する問題
  • 法務省専門職員・人間科学区分(矯正心理専門職/法務教官/保護観察官)→教育学に関する問題(択一式・記述式とも)
  • 国家一般職大卒(行政区分)の教育学

(以下のリンクは、それぞれの名称によるアマゾン(Amazon.co.jp)の検索結果ページを含みます)

教育学も過去問チェックを

教育学(教育学概論)の場合も、試験対策の基本は、過去問を入手して徹底的に取り組むことです。予備校に通う方は比較的容易に入手できます。

一方、独学の方は、家庭裁判所調査官補は裁判所の公式サイトで公開された過去2年分の過去問をDLする、それ以外の国家公務員試験は有料で人事院に請求して過去5年分を入手することができます。

教育学の場合、国家公務員試験に特化して頻出項目のポイントと過去問を数多く掲載した市販の教材は、「公務員試験 新スーパー過去問ゼミ7 教育学・心理学」しか無いのが現状です。

本書は国総/家庭裁判所調査官補/矯正心理専門職/法務教官/保護観察官/国一大卒(行政)にすべて対応します。ただし、毎年改訂されている割に、明らかな解答・解説の誤りや記述の矛盾などが見られ、おすすめはしません。

「スー過去」シリーズは、公務員試験に必要な要点整理と過去問演習が科目別に出来る定番のおすすめ教材です。ただし、この教育学・心理学に関しては、決して評判が良いとは言い切れないと思います。

しかし、人事院で過去問を請求するのは有料で入手までに時間がかかりますし、配布されるのは問題と正答だけです。過去問の入手まで待てないような時間的余裕が無い方には、スー過去も大きな補助教材になると思います。

公務員試験 新スーパー過去問ゼミ7 教育学・心理学」は解答・解説やポイントの記述に間違いが多いため、頻出事項の確認や、実際に出ている過去問はどんな問題かを確かめる用途にとどめるなら、過去問そのものを豊富に手に入れることができる貴重な機会といえます。

もちろんここでは、スー過去とは別に、教育学の試験対策に使える優れた参考書・過去問演習書・用語集などを詳しく後述します。

教育学で攻略すべき項目とは

教育学(教育学概論)の内容は非常に多様ですが、国家公務員試験で出題される領域は、ほぼ決まっています。

先ほどの「公務員試験 新スーパー過去問ゼミ7 教育学・心理学」では、教育学の頻出項目を教育史、教育社会学、教育法規、生涯学習、教育方法学という5領域に分けています。以下、スー過去が挙げる頻出事項を引用します。

教育史
西洋教育史:ルソー、ペスタロッチ、デューイなどの近代の教育思想、アメリカの教育史
日本教育史:江戸期の教育家、明治期の教育政策・制度史、大正期の新教育運動、戦後の教育の民主改革
教育社会学
教育社会学理論:デュルケム、ブルデューなどの学説、「隠れたカリキュラム」などの専門用語
調査・統計:白書などの子ども・教育の現状を示す統計データ、社会調査の基礎的な方法論
教育法規
学校の法規:教育基本法、学校の基本規定、就学・義務教育、教育委員会、学校と地域の連携の法規定
児童・教員の法規:児童・生徒の管理・懲戒、教職員の義務・服務、教員の人事管理、教員研修
生涯学習
生涯学習:ラングラン、ハッチンスなどの生涯学習思想、社会教育制度(職員、施設)、生涯スポーツ
教育方法学
教授・学習理論:歴史上の著名な教授方法・学習方法(ドルトン・プラン、プログラム学習、バズ学習など)
学習指導要領・カリキュラム:学習指導要領の内容・歴史的変遷、スペアーズのカリキュラム類型
発達・学習:ピアジェの発達段階説、発達課題説、条件付けの理論、適性処遇交互作用(ATI)
教育評価:ブルームの教育評価類型、教育評価の方法(絶対・相対・個人内評価など)、評価の阻害要因

これに付け加えるなら、とりわけ教育史、教育社会学、調査・統計のうち社会調査や内閣府の「子供・若者白書」(旧・青少年白書)からの出題、教育法規、教育方法学(特に発達・学習など教育心理)、上記以外では教育行政、教育時事がよく出ています。

教育学が課される国家公務員試験なら、ここまで取り上げた項目を重点的に取り組むことで、ほとんどの頻出分野はカバーできるといえます。

もちろん、国総、家裁、矯正心理専門職/法務教官/保護観察官、国一(行政)という試験ごとに、頻出項目や難易度の違いを見逃さないため、やはり過去問を入手して確認することが欠かせないといえます。

教育学の参考書:教職教養が使える

公務員試験の教育学に特化した市販の参考書は、先述通りおすすめはしませんが「公務員試験 新スーパー過去問ゼミ7 教育学・心理学」を除けば、ほぼ皆無といえます。その一方、国家公務員試験の教育学(教育学概論)は、ほとんどの部分が教員採用試験(教採)の教職教養と重なっていることが知られています。

このため、国家公務員試験の教育学対策に、教員採用試験の教職教養の参考書を使うことは定石となっており、あとは足りない部分を並行して補充すれば良いことになっています。

もちろん、学習の際は、どの教材でも言えることですが、最新年度のものを使うようおすすめします。

教採の教職教養はボリュームのある良書がたくさんあるのですが、教採に比べて国家公務員試験の教育学は出題比率がそう高くないため、網羅性と効率性を両立した視点から、以下の教材がおすすめです。

特に過去問演習としては、教採向けの問題集にしては解説が詳しく、頻出問題を一通り網羅した「実務教育出版 教員採用試験 教職教養 よく出る過去問224」がおすすめです。

この問題集があれば、過去問演習は十分ですし、先述通り「公務員試験 新スーパー過去問ゼミ7 教育学・心理学」は、志望先の頻出事項や実物の試験問題の確認にとどめる使い方で割り切ることができます。

また、インプットには、「教員採用試験 教職教養らくらくマスター 実務教育出版」がおすすめです。二色刷りで図表も交えてとても見やすく、要点整理型参考書ですが初学者でもしっかりと効率よく学ぶことができる良書です。

これら2冊は互いの構成が対応しており、両書を併用することで非常に高い学習効果が得られます。

また、択一式対策にも記述式対策にも使える教育用語集として、「教員採用試験 教職 基本キーワード1200」をおすすめします。分からない専門用語が出てきたときに、その場で調べて理解できる優れた用語集です。

「教員採用試験 教職 基本キーワード1200」はとても解説が詳しく、記述式が課される試験の対策にも、さまざまな概念/理論/人名/学説などの論点整理を効率よく行うことができます。

専門用語の説明が出来なければ、択一式はもちろん、記述式の用語説明問題でも事例問題でも、何も答えることが出来ません。「教員採用試験 教職 基本キーワード1200」は択一式対策で用語の確認をするのも、記述式対策で論点整理をするのにも使える良書といえます。

なお、教育答申、教育時事、教育用語の対策は、教員採用試験の教員採用試験の参考書3 教育答申、教育時事、教育用語集がそのまま使えるため、こちらの記事も参考になさってください。

教育社会学の参考書を補充しよう

教職教養だけでは国家公務員試験の教育学は万全ではありません。

教採の教職教養は、教育原理、教育心理、教育法規、教育史や教育時事、教育答申から構成されています(先述のスー過去の頻出項目でいえば、教育方法学や生涯学習は、教採の教育原理や教育心理に相当します)。

その一方、国家公務員試験の教育学の場合は、教採に比べて教育社会学が加わります。そこでここでは、教育社会学の参考書として使える、入門テキストを取り上げます。

まず、「よくわかる教育社会学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) ミネルヴァ書房」は、約200ページの中に教育社会学の基礎を凝縮した、分かりやすい入門テキストです。

本書は、教育の制度や実態、子ども・青少年の意識や態度、教育社会学の歴史まで、教育社会学が取り扱う内容を、最新動向も踏まえつつ、一通り網羅した良書です。B5版サイズで1項目を見開き2頁で解説し、側注に詳しい解説もついています。

ただし、公務員試験や教員採用試験に特化した参考書ではなく、3人の学者さんによる共著なので、中にはとっつきにくい項目もあるかもしれません。とはいえ、教育社会学の領域をしっかりカバーしつつ、とても良くまとまったテキストとしておすすめできます。

よくわかる教育社会学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) ミネルヴァ書房」は、専門書にしては読みやすさに十分配慮されており、公務員試験/教員採用試験に使える独学向けの入門テキストとして最適です。

一方、「よくわかる教育社会学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) ミネルヴァ書房」が合わなかった方には、「現代教育社会学 岩井八郎 近藤博之 有斐閣ブックス」がおすすめできます。

本書は教育社会学の標準テキストであり、重要用語集もついていて、択一式・記述式対策どちらにも使える良書です。ただし、この参考書も公務員試験の教材ではなく、入門書とはいえ大学での使用を想定した専門書です。

現代教育社会学 岩井八郎 近藤博之 有斐閣ブックス」は、「よくわかる教育社会学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) ミネルヴァ書房」よりも踏み込んだ内容を含んでおり、より実戦に近いテキストといえます。ただし、公務員試験の教育社会学は、あくまでも教育学(教育学概論)の一領域ですから、本書を使う場合は、重要事項を効率よくこなすことが望ましいといえます。

具体的には、巻末の重要用語集をベースにしながら該当部分を選んで読み込んだり、過去問を参照して関連事項をピックアップして重点的に理解するといった読み方で良いと思います。

現代教育社会学 岩井八郎 近藤博之 有斐閣ブックス」は、過去の本試験を見ると、本書からそのまま出題した例も多数あります。論点整理や要点の理解を軸にすれば、択一式にも記述式にも使える良書としておすすめです。

なお、家庭裁判所調査官補では、記述式試験で教育社会学が独立した科目として出題されます。この試験対策については、教育社会学のテキストはまんべんなく読み込むことが重要です。

教育学の学習法まとめ

国家公務員試験の教育学は、まずは過去問を入手して志望先の頻出事項や実際の問題の内容・難易度の確認が重要です。請求できない場合は、先述通り本来はおすすめしませんが「公務員試験 新スーパー過去問ゼミ7 教育学・心理学」をこうした確認用と割り切って投入することも検討します。

教育学の学習の中心は、教採の教職教養の参考書(「教員採用試験 教職教養らくらくマスター 実務教育出版」)と過去問演習の問題集(「実務教育出版 教員採用試験 教職教養 よく出る過去問224」)を活用することで、大部分を乗り切ることができます。これに加え、専門用語が苦手な方や記述式が課される試験の方は、「教員採用試験 教職 基本キーワード1200」で用語確認や論点整理を行うべきです。

教採の教職教養だけでは、教育社会学は足りません。「よくわかる教育社会学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) ミネルヴァ書房」または「現代教育社会学 岩井八郎 近藤博之 有斐閣ブックス」をおすすめします。

科目別対策

今回の記事では、公務員試験における教育学の基礎領域としての教育学(教育学概論)対策を取り上げました。さらに当サイトでは、以下の応用科目に対応しています。

  • 教育心理学→国総(人間科学)、家庭裁判所調査官補、地方公務員の福祉職

このほか先述通り、教育答申、教育時事、教育用語の対策は、教員採用試験の教員採用試験の参考書3 教育答申、教育時事、教育用語集が使えます。