ここでは、都道府県の警察本部(東京都は警視庁)が行う、警察官の採用試験を取り上げます。今回は、大卒および高卒・短大卒の採用試験を対象に取り上げます。
※警察官採用試験の参考書に関しては、大卒・短大卒・高卒とも、一括して警察官採用試験の参考書で紹介していますので、そちらの記事をご覧ください。
この記事(ページ)の目次です。
警察官採用試験の区分
警察官の採用試験は、警察本部が置かれている都道府県ごとに(東京都は警視庁です)、男性と女性に分かれて実施されます。また、男女それぞれにおいて、大卒程度と高卒程度に分かれて実施されます。
なお、警察官の採用試験では、大卒程度と高卒程度を、A区分・B区分、警察官A・警察官Bというところもあります。短大卒の方は、高卒程度の採用試験を受験することになる自治体が多いといえます。
警察官採用試験において、受験資格の学歴要件が、大卒程度(警察官A)は「大学(短大を除く)卒業者および卒業見込者」、高卒程度(警察官B)は「大学(短大を除く)卒業者および卒業見込者は不可」という場合は、短大卒(見込)の方は、高卒程度(B)を受験することになります。
実際に多くの場合、短大卒の方は、高卒程度を受験することになります。その一方、大卒や高卒とは別に、短大卒程度の採用試験を行っている県も、ごく一部に見られます。その場合、大卒・短大卒・高卒を、1類・2類・3類と呼ぶ県もあります。
警察官の共同試験(男性のみ)
警察官の採用試験は、都道府県の警察本部(東京都は警視庁)ごとに実施されます。ただし、警察官の採用試験には、いくつかの都道府県が一緒になって実施する「共同試験」という制度もあります。
共同試験の受験者は、共同試験に参加している都道府県から、第1または第2志望を選んで受験します。そして、第1志望の都道府県が1次不合格でも、成績次第で第2志望の都道府県で1次合格→2次試験に進めるというものです。
共同試験は、半数以上の都道府県が導入しています。共同試験を実施する自治体や、その組み合わせは年度ごとに違っているため、志望先の公式サイトや受験案内(募集要項)などで確認しましょう。
現在、この共同試験制度は、男性の採用試験にのみ導入されており、女性の警察官採用試験にはありません。女性の警察官採用試験は、それぞれの志望先である都道府県ごとに受験する必要があります。
警察官の受験資格
警察官採用試験の受験資格は、都道府県によって異なります。職務の特性から身体基準を設けていることは一般的です。また、年齢制限(受験年齢の上限または下限)や学歴要件を設けている自治体も多いといえます。
身体基準
警察官採用試験の身体基準に関しては、視力、色覚、聴力等について一定の基準があります。その他、四肢・関節機能、胸部・伝染性・心臓疾患等の有無など、職務遂行に支障が無いことを求める基準もあります。
身長や体重に関しても、以前はほとんどの自治体で設定していましたが、かなりの割合で廃止または緩和する動きがあります。身体基準は、年度によって、自治体ごとに変更があるため、志望先の受験案内(募集要項)は必ず確認しましょう。
年齢要件・学歴要件
大卒程度の警察官では、受験年齢の上限(受験年度の4月1日現在)を28~34歳の間で定め、「大学(短大を除く)卒業者および卒業見込者」という学歴要件を求める自治体が多いといえます。
高卒程度の警察官では、受験年齢の下限が18歳、上限(受験年度の4月1日現在)は28~35歳の間で定め、「大学(短大を除く)卒業者および卒業見込者は不可」または「高卒(見込)者」という学歴要件を求める自治体が多いといえます。
なお、大卒・高卒のどちらの場合も、1年に複数回試験を行う自治体では、採用時期の関係で、試験によって大卒(高卒)見込者が受験できない場合や、大卒(高卒)見込者のみが受験できる場合があります。
警察官採用試験の試験日程
警察官採用試験の試験日程(1次試験の実施日)は、自治体によって異なります。1年に1回しか実施しない自治体もありますが、大卒程度で約6割、高卒程度で約3割の自治体が、実施時期を分けて1年に2~3回おこなっています。
多くの都道府県(東京都は警視庁)では、警察官の採用試験を年に複数回実施しています。警察官の採用試験も一般の公務員試験と同じく、日程さえ重ならなければ、いくつでも受験できるため、併願受験のチャンスが大きいといえます。
警察官の採用試験も、全国的に集中しやすい時期があります。例年通りなら、大卒と高卒で、おおむね以下の時期に実施されます。
- 大卒程度:5月上旬、7月中旬、9月中旬。警視庁は、4月下旬、9月中旬、1月上旬
- 高卒程度:5月中旬、9月中~下旬、10月中旬。警視庁は9月第3土曜日、1月第1日曜日
もちろん、これ以外の日程に実施する自治体もありますし、年度によって変更を行う自治体があります。都道府県の各自治体や警察本部(東京都は警視庁)の公式サイトなどで確認しましょう。
警察官採用試験の試験内容
警察官採用試験の試験内容は、教養試験(択一式)、論文(作文)試験、適性検査(性格検査)、面接試験、身体検査、体力検査を課すことが一般的です。警視庁では、国語試験(択一式)も課されます。
警察官採用試験では、これらの試験種目を、1次試験と2次試験に分けて行い、1次試験の合格者だけが2次試験を受験できる場合が一般的です。多くの場合、教養試験は1次で行い、その他の試験が1次か2次かは自治体によって異なります。
また、警察官採用試験では、術科(柔道、剣道)の有段者、スポーツの全国大会の実績、語学(英語、中国語、韓国語、スペイン語など)、日商簿記2級以上、情報処理(ITパスポートなど)等の資格や技能の証明で、一定点を加点する「資格加点制度」があります。
資格加点制度で対象となる資格・技能の範囲や、どれだけの加点が得られるかについては、自治体によって異なります。また、警察官採用試験の試験内容も、自治体によって違います。志望先の公式サイトや受験案内で確認しましょう。
警察官採用試験の科目別出題数(教養試験)
ここで、警察官採用試験の科目別出題数(教養試験)を取り上げます。警視庁は、問題が公表されています。それ以外は、最も多く見られる出題パターンであり、他の時期に受験する方にも、試験勉強のベースとして、あくまでも参考例ですが、一般的な実施例を取り上げます。
(判断推理には、図形判断や空間把握を含みます)
大卒程度の場合
※警視庁1類では、50問・全問必須解答です。
知識分野(一般知識)は25問で、社会科学9(政治2、法律2、経済1、社会4)、人文科学8(日本史2、世界史2、地理2、文学・芸術1、思想1)、国語2、自然科学4(数学0、物理1、化学1、生物1、地学1)、英語2です。
知能分野(一般知能)は25問で、文章理解8(現代文6、英文2、古文0)、判断推理9(このうち空間把握4)、数的推理6、資料解釈2です。
※大卒程度の警察官(警視庁以外)では、5月の実施型で、50問・全問必須解答です。
知識分野(一般知識)は25問で、社会科学9(政治2、法律2、経済3、社会2)、人文科学9(日本史2、世界史2、地理3、文学・芸術1、思想1)、国語0、自然科学7(数学1、物理1、化学2、生物2、地学1)、英語0です。
知能分野(一般知能)は25問で、文章理解9(現代文3、英文5、古文1)、判断推理9(このうち空間把握4)、数的推理5、資料解釈2です。
高卒程度の場合
※警視庁3類では、50問・全問必須解答です。
知識分野(一般知識)は27問で、社会科学9(政治4、経済2、社会3)、人文科学8(日本史2、世界史2、地理2、文学・芸術1、倫理1)、国語2、自然科学4(数学0、物理1、化学1、生物1、地学1)、英語4です。
知能分野(一般知能)は23問で、文章理解6(現代文6、英文0、古文0)、判断推理10、数的推理5、資料解釈2です。
※高卒程度の警察官(警視庁以外)では、9月の実施型で、50問・全問必須解答です。10月実施の教養試験も、ほとんど違いはありません。
知識分野(一般知識)は25問で、社会科学8(政治3、経済2、時事3、社会0)、人文科学7(日本史2、世界史2、地理3、文学・芸術0、倫理0)、国語3、自然科学7(数学1、物理1、化学2、生物2、地学1)、英語0です。
知能分野(一般知能)は25問で、文章理解8(現代文5、英文3、古文0)、判断推理9、数的推理6、資料解釈2です。