公務員試験の適性試験とは

今回は、公務員試験の適性試験を取り上げます。

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公務員試験の適性試験とは

適性試験とは、公務員試験においては、事務処理能力の早さや正確性が問われる試験です。

適性試験と適性検査の違い

公務員試験では、適性試験のことを「適性検査」「事務適性検査」と呼んだり、逆に、適性検査のことを「適性試験」と呼ぶ場合があることに、注意が必要です。

なかには、公務員試験における適性試験と適性検査について、混同されている方やブログ、情報サイトなどもありますので、ここは要注意といえます。

適性試験と適性検査の違い(見分け方)ですが、適性試験は、主に「事務処理能力」など、「能力」を測る試験です。一般的に適性試験は、点数化されて合否に反映され、教養試験や専門試験などと同じく、試験種目の1つと位置付けられることが多いです。

一方、適性検査は、いわゆる性格検査です。その人の性格や資質を検査するもので、一般的には点数化されず、合否に直接影響しません。あくまでも、個々の人物を採用することが、妥当かどうか判断する上で、参考材料として活用されるものです。

当サイト「公務員試験ガイド」でも、主に事務処理能力を測り、点数化されるもの(合否に影響するもの)を「適性試験」、主に性格や資質を測り、点数化されないもの(合否に直接は影響しないもの)を「適性検査」とみなします。

ご自身の受験先の公務員試験で、適性試験や適性検査のどちらが課されるのか、迷った場合は、受験先の受験案内(募集要項)や公式サイトなどで、(あくまでも一般論ですが、)こうした点を参考になさってみてください。

民間企業の適性対策は通用しない

なお、民間企業の適性試験、適性検査、能力検査、性格検査などは、公務員試験と一見似ていても、まったく同じとは言えませんし、重視の度合いや取り扱いが全く違います。やはり公務員試験の適性試験は、公務員試験に特化した対策が必要だと思います。

適性試験の試験形式

適性試験の試験形式は、一般的な公務員試験でみられる択一式(五肢択一式)です。問題数と試験時間は、国家公務員(国家一般職など)と地方公務員(都道府県、市役所など)で、違いがあります。

国家公務員では、おもに120問を15分で解く形式、地方公務員では、おもに100問を10分で解く形式が見られます。ただし実際には、試験を行う公務員試験ごとに違うため、志望先の受験案内(募集要項)で必ず確認しましょう。

仮に、120問で15分(900秒)なら、1問あたり7.5秒です。100問で10分(600秒)なら、1問あたり6秒です。どちらにせよ、全問を解くのは非現実的ですが、1問10秒以内で解き続けることが、一般的な目安(目標)といえます。

適性試験は、問題自体はとても優しいです。ただし、問題数が膨大で、制限時間の中でどれだけ解き切れるかが問題です。また、適性試験特有の試験形式や採点方式のため、出来ない問題を飛ばしながら解くことは、極力避けるべきです(詳しくは後述します)。

どんな問題が出るのか?

適性試験の問題は、5分野、あるいは、6分野が出ると言われます。計算、分類、照合、置換、図形把握の5つ、および、5つの中から複数の分野が組み合わさった複合問題を含めると、6分野ということになります。

1.計算
四則計算の数式で、答えが最大になる式、答えが同じになる式、答えが正しい式を選ばせたり、計算式の空欄の穴埋め問題などが出ます。
2.分類
例えば、数字、言葉、記号などが、どの分類に該当するか、あるいは、いくつかの分類の選択肢が提示され、ある数字(または言葉、記号など)が、どの分類に該当するかを選ばせる問題です。
3.照合
いわゆる「間違い探し」です。同じものや正しいものを選べという問題もあります。
ある情報を提示され、その情報と同じもの(あるいは違うもの)を選ばせる問題があります。
複数の情報を比較して、間違ってる箇所や、間違ってる個数を選ばせる問題もあります。
提示される情報は、文章、データ、文字列(アルファベットと数字の組み合わせ)など、さまざまです。
4.置換
漢字、カタカナ、アルファベット、数字などから、例えば「漢字→漢字」や「カタカナ→数字」など、置換(置き換え)の例が示された上で、特定の文字列をどう置換すべきかを問う問題です。
5.図形把握
公務員試験の図形問題、特に空間把握に近い問題です。
ある図形が提示され、変形や回転、切り分けた後の同じ図形や、断面図などを選ばせる問題です。
図形把握は単純な計算や思考力が通用せず、想像力を要する問題です。苦手にする受験生が多く、図形問題が苦手な方は、早期から着手すべき分野です。
6.複合問題
上記1.~5.のうち、計算と照合、分類と図形把握など、複数の分野が組み合わさった問題です。
各分野単独の問題より、難易度というか、手間が少し上がりますが、1.~5.の対策を行えば、十分に対応できる問題です。

スパイラル形式とは

公務員試験の適性試験は、スパイラル形式が採用されています。これは、先ほど挙げた5分野(または6分野)のうち、いくつかの分野を順番に同じ問題数づつ出題し、それを繰り返すという形式です。

例えば、計算→照合→空間把握の順に10問ずつ出題(合計30問)した後、また計算→照合→空間把握を10問づつ(合計30問)出題し、これを4回繰り返して全部で120問を課すという形式です。

一般的には、どの分野が出るかは、事前に告知されることがなく、単独の分野に加えて、複合問題を加える試験が多くなっています。このため、試験対策としては、5分野および複合問題を、まんべんなく勉強しておくことが重要といえます。

独自の「減点法」

公務員試験において、適性試験の採点方法(得点の算出方法)は、独自の「減点法」であることに留意すべきです。

まず、適性試験の得点は、正答数から誤答数を引いたものです。

ただし、誤答数は、解答しなかった問題、つまり、無答(無記入・空欄)の問題もカウントします。

※正答数-誤答数(無答を含む)=適性試験の得点

注:無答は、「時間内に解答した(記入がある)最後の問題より前の問題」だけが対象になります。つまり、「時間内に解答した最後の問題より後の問題」は、無答にカウントせず、点数には関係しません。

適性試験の採点例

例えば、120問の適性試験で、時間内に100問目まで解答し、100問のうち30問を飛ばし(無答)、解答(記入)した70問のうち、50問が正答・20問が誤答だったとします。

この場合、全部で120問ですが、最後に解答したのは100問目ですから、その後の20問は、無答にはカウントせず、点数に関係しません。採点に影響するのは、最後に解答した100問目までだけです。

その一方、解答した100問のうち、正答数は50問ですが、誤答数は20問だけでなく、無答の30問を合わせた50問です。つまり、この受験者の得点は、50-50=0点ということになります。

「飛ばす問題」(無答)を増やさない

例えば、120問の適性試験で、Aさんは110問までどんどん解き進め、そのうち30問を飛ばし(無答)、残り80問中、正答が70問、誤答が10問だったとします。

この場合、最後に解答した110問目以降の問題は、採点に影響しません。最後に解答した110問までのうち、正答は70ですが、誤答数は無答の30と誤答の10を合わせた40なので、点数は30点(70-40)です。

その一方、Bさんは確実に手堅く、80問しか解き進まなかった(80問目以降の問題は採点に影響しない)のですが、飛ばした問題(無答)が5問だけで、正答が65問、誤答が10問だったとします。

この場合、正答は65ですが、誤答数は無答の5と誤答の10を合わせた15なので、Bさんの得点は、50(65-15)です。

ここで重要なのは、正答数ならAさんは70問、Bさんは65問の正解ですが、点数はBさんが逆転している点です。また、Aさんは110問まで解答し、Bさんは80問まで解答していますが、その後の解いていない問題は、採点に影響しません。

すなわち、適性試験では、なんでもかんでも飛ばして先に進むことは、誤答数を増やすだけです。「早さ」も重要ですが、飛ばす問題をなるべく増やさず、勘だけでマークせず、手堅く確実に、「正確に」解き進めることも重要です。

適性試験の配点比率とボーダーライン

公務員試験における適性試験は、適性検査とは異なり、点数化されます。また、教養試験や専門試験などに比べて、配点比率は低いのですが、合否に直接影響することが一般的です。

適性試験の受験者の平均点は、概ね6~7割です。ボーダーラインは毎年変動しますが、目標は7割以上、最低でも60%台半ばは取りたいところです。

基準点とは

また、適性試験に基準点(いわゆる足切り点)を設定する公務員試験もあります。例えば、国家一般職(高卒程度)では、3割が基準点です。さすがに3割を切る受験生は、ほとんどいないと思いますが、一応は頭に入れておくべきでしょう。

基準点とは、総合的な点数がどれだけ良くても、特定の試験種目や科目において、一定の点数を満たさないと、不合格になるものです。国家一般職(高卒)の場合、他の試験種目がどれだけ良くても、適性試験が3割を切ると、不合格になります。

このため、適性試験は、一定の「早さ」と「正確さ」を両立させながら、飛ばす問題を増やさず、確実に加点を増やしていくことが、最良の試験対策といえます。

適性試験の対策まとめ

適性試験の対策は、ここまで見てきた通り、以下の各点が挙げられます。

  • 適性試験と適性検査を混同しない。
  • 公務員試験に特化した試験対策を行う(民間とは別物)
  • 問題自体はとても簡単だが、制限時間の中で膨大な問題数がある。
  • 全問解くのは無理だが、1問10秒で解き続けることを目標にしたい。
  • 5分野(6分野)をまんべんなく勉強する。
  • 独自の減点法を踏まえ、「早さ」に加えて「正確さ」「確実さ」も大事。
  • 無答問題や飛ばす問題を増やすことは極力避け、先に先に行こうとしない。

適性試験は、配点比率がそう高くないため、重要度は低いですが、基準点の存在もあるため、市販の問題集で十分ですから、実力を測ることが重要です。

当サイトとしては、適性試験の問題集には、以下の2点をおすすめします。ともに優れた良書ですし、どちらか1冊で十分だと思います。

適性試験の試験勉強は、とにかく「早く」「正確に」「なるべく飛ばさず」問題を解くトレーニングに尽きます。あとは、必ず本番を意識して、日常の試験勉強でも、時間を測って解く訓練を、何度も繰り返し行うことが重要です。