市役所の新教養試験対策/大卒・短大卒・高卒とも対象

今回は、市役所の新たな教養試験を取り上げます。今回は、大卒、短大卒、高卒の、どの程度の方も対象としています。

今回の記事は、都道府県、政令指定都市(政令市)、東京都特別区を除く、一般的な市役所と町村役場の採用試験を対象にします。町村役場の採用試験は、一般の市役所に準じます。

(政令指定都市は、札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市、相模原市、新潟市、静岡市、浜松市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、岡山市、広島市、北九州市、福岡市、熊本市です)

(都道府県、政令指定都市、東京都特別区は、大卒程度は地方上級、高卒程度は地方初級が該当します。それぞれの記事を参考になさってください)

(市役所の全般的な試験内容や試験日程の分類、従来型の科目別出題数に関しては、大卒程度の方は市役所(大卒) 令和5年度試験対応、高卒程度の方は市役所(高卒) 令和5年度試験対応を参考になさってください)

市役所の新教養試験の内容

平成30年度(2018年度)以降、市役所の教養試験(基礎能力試験)は、スタンダード(標準タイプ)、ロジカル(知能重視タイプ)、ライト(基礎力タイプ)のうち、いずれかのタイプを採用して実施されます。

さらに、スタンダードとロジカルは1と2に分かれます。スタンダード1とロジカル1は大卒程度、スタンダード2とロジカル2は大卒・短大卒・高卒程度つまり高卒以上なら誰でも受けられる試験です。

これに対してライトは、1~2などの分類が無く、高卒程度以上に該当する方なら、どなたでも受験できる試験です。試験内容は、高卒程度となっています。

なお、技術系、資格免許職、消防職、あるいは経験者採用など、事務系以外の職種・区分でも、新たな教養試験を導入する市役所が見られます。さらに、同じ市役所の採用試験でも、職種や区分によってタイプが異なる自治体もある点に留意すべきです。

なお、全国に約790ある市のうち、ライト型で実施した市役所は、経験者採用試験を含めても60弱です。大半の市役所は、従来の公務員試験の試験勉強で通用するスタンダードかロジカルで実施しています。

スタンダードとロジカル

平成29年度(2017年度)までの教養試験と比べると、スタンダードは時事問題が重視される点を除けば、従来の試験内容と同じです。ロジカルも従来と同じ試験内容ですが、知能分野(一般知能)の出題数が大きく、自然科学の出題がありません。

スタンダード、ロジカルとも、「古文」、「哲学、文学、芸術等」、「国語(漢字の読み、ことわざなど)」は出題されません。また、ともに120分・40問の五肢択一式で、全問必須解答です。両者の間では、共通問題も多く見られます。

スタンダードとロジカルは、出題科目の構成や科目別出題数が違うだけです。スタンダードは、ほぼ従来型の公務員試験といえますし、ロジカルは出題科目や科目別のウェイトが異なるだけです。この2タイプは、従来の公務員試験の試験勉強がそのまま通用します。

ライトは新しい試験

ライトだけは、従来の公務員試験とは全く異なる試験です。ライトは、「論理的な思考力」「言語的な能力」「社会への関心と理解」の3分野から出題されます。75分・60問の四肢択一式で、全問必須解答です。

またライトは、公務員試験で一般的な五肢択一式ではなく四肢択一式であり、問題自体の難易度は非常に易しくなっています。ただし、従来型よりも試験時間は短く、問題数は多くなっており、早く正確に解く能力が要求されます。

ライトは、「論理的な思考力」9問→「言語的な能力」9問→「社会への関心と理解」12問を2回繰り返す形で出題されます。つまり、「論理的な思考力」18問、「言語的な能力」18問、「社会への関心と理解」24問課されます。

実際の問題は、従来の公務員試験と比べると、「論理的な思考力」は判断推理、数的推理、資料解釈、「言語的な能力」は国語、文章理解、「社会への関心と理解」は政治、経済、社会、時事問題が出ており、時事的な問題は自然科学からも出ています。

ライト型の問題は、従来の公務員試験に比べると、問題文が短く、難易度が低く設定されています。ただし、1問あたりに掛けられる時間が短いため、問題が易しいから高得点が取れるとは限りません。

ライトは、民間企業志望者でも受けやすく、全く新しい試験です。しかし、出題科目を見ていくと、従来の公務員試験の科目をベースにしたものであり、独特の傾向に留意すべきですが、既存の公務員試験の試験勉強で対応できると思います。

ライト型の市役所を受験する場合は、とにかく難問にこだわる必要はありませんが、基礎~標準問題を重視しつつ、他の公務員試験よりも更に「早く正確に」解くことを意識する必要があるといえます。

更に、ライト型は、社会科学・時事問題が4割を占めており、特に時事問題のウェイトが高いことが特徴です。時事問題は政治、経済、国際から、社会、文化、科学技術に至るまで、非常に幅広く出ており、まんべんなくフォローすることが重要です。

スタンダード/ロジカルの科目別出題数

ここで、市役所の科目別出題数を取り上げます。このうち、大半の市役所が導入しているスタンダードおよびロジカルに関しては、先述通り大卒程度と高卒程度に分かれています。

スタンダードとロジカルの市役所の科目別出題数については、大卒程度の方は市役所(大卒) 令和5年度試験対応、高卒程度の方は市役所(高卒) 令和5年度試験対応を参考になさってください。

ライト型の科目別出題数

ここからは、ライト型の市役所の科目別出題数を取り上げます。ここでは、ライト型の中で最も典型的な、7月実施(B日程と言われます)の場合の科目別出題数を紹介します。大卒・高卒の区別が無いライト型を導入している市役所は、全国の市役所の1割未満です。

B日程のライト型は、「論理的な思考力」9問(判断推理と数的推理で6、資料解釈3)→「言語的な能力」9問(国語2、文章理解7=現代文3と英文4)→「社会への関心と理解」12問(全て政治/経済/社会/時事問題)→「論理的な思考力」9問(判断推理と数的推理で7、資料解釈2)→「言語的な能力」9問(国語2、文章理解7=現代文4と英文3)→「社会への関心と理解」12問(全て政治/経済/社会/時事問題)という出題順になっています。

つまり、従来の公務員試験の科目で分けると、判断推理と数的推理(ほぼ同数)で13問、資料解釈5、国語4、文章理解14(現代文7、英文7)、社会科学24(政治/経済/社会/時事)の60問ということになります。

社会科学では、ふるさと納税、政務活動費、国会の権能、ミャンマーのロヒンギャ問題、完全失業率、所得税の性質、クーリングオフの成立要件、パリ協定、小学校における特別の教科(道徳科)、ネット上のキュレーションサービス、法定受託事務、東京一極集中の是正(京都へ移転される機関)、在日米軍基地のうち沖縄の占める割合、衆院選挙、裁判員制度、日米中のGDP、マイナス金利、日本人の死因(ガン、心疾患、脳血管疾患、肺炎)、家庭への電力小売自由化、近年の人口増加率、ノーベル文学賞の日本人受賞者、気象庁の出す警報の種類などを問う問題が出ています。

ライト型の社会科学は、オーソドックスな政治、経済、社会からの出題と、政治・経済・社会から文化・科学技術・自然科学に至る時事問題がバランス良く出ており、まんべんなく学習する必要があるといえます。

志望先の市役所のタイプを調べよう

市役所の受験案内(募集要項)で、どのタイプを出題するか明記している市役所なら、それぞれのタイプに沿った試験対策・試験勉強を進めましょう。また、全国の自治体の試験情報を集めた市販の書籍もあります(詳しくは後述します)。

受験案内に明記されてない場合は?

その一方、受験案内にタイプの明記が無い市役所もあります。この場合、試験時間、出題数、出題形式(五肢択一式か四肢択一式か)を確認することで、どのタイプに該当するか、一定の推測ができると思います。

出題科目についても、判断推理、数的推理、文章理解、資料解釈、人文科学、社会科学など、従来の科目が一通り揃っていればスタンダードだと推測できますし、そのうち自然科学が明記されて無いのなら、ロジカルかもしれません。

ライト型であれば、市役所の受験案内に、「民間企業志望者でも受験しやすい」とか、(従来型の公務員試験という意味で)「特別な対策を必要としない」などの記述があると思われます。

また、従来の出題科目ではなく、「論理的な思考力」「言語的な能力」「社会への関心と理解」などと書かれていれば、ライト型だと推測できます。

さらに、先に述べた通り、市役所の中には、事務系、技術系、資格免許職、消防職、経験者採用など、職種・区分を通じて同じタイプの試験を課す市役所もあれば、職種・区分によって異なるタイプの試験を課す市役所もあります。

なかには、年度によってタイプを変更する市役所もあることに要注意です。過去の実施実績は、試験勉強を始めるにあたっての参考にとどめ、各自の受験年度に応じた実際の受験案内を、必ず確認しましょう。

分からない場合は新旧両方の試験勉強を

ここまで述べてきた通り、どのタイプなのか明確に明記されていない市役所の場合は、志望先の市役所のうち、出願する職種・区分がどのタイプに該当するのか、受験年度の受験案内の記述をもとに、自己責任で判断しましょう。

それよりも、志望先の市役所の試験タイプが分からない場合は、従来の公務員試験と、新たな教養試験に該当するライト型対策と、両方の試験勉強を並行して行うことをおすすめします。これが最も無難だと思います。

志望先の市役所がライト型かどうか調べるには

志望先の市役所がライトやロジカルで実施したかどうか調べるには、実務教育出版が毎年4月に最新年度版を刊行している「市役所新教養試験Light&Logical[早わかり]問題集」をおすすめします。本書は、ライトやロジカルで実施した全国の市役所一覧を掲載し、新教養試験の市役所が、ひと目で確認できます。

本書は、大卒程度を対象にした本であり、高卒程度が該当しない説明が含まれる点は留意すべきです。しかし、ライト型かどうかの確認や、ライトの過去問、一般的な新教養試験の説明に関しては、高卒の方も使える内容といえます。

市役所新教養試験Light&Logical[早わかり]問題集」は、市役所の試験内容や、全国の市役所の統一実施日(1次試験)の分類など、市役所対策に欠かせない知識や情報もまとめています。

(もちろん、これはあくまでも過年度の実施実績です。次の年も同じ試験とは限りません。受験年度の市役所の受験案内や募集要項を確認し、自分が受験する年度の試験タイプ・内容をしっかり確かめましょう)

市役所新教養試験Light&Logical[早わかり]問題集」は、二色刷りでとても見やすく、毎年4月中に最新版が出版されています。直近の試験情報や試験問題を掲載するため、最新年度版の購入をおすすめします。

本書は、ロジカル1(大卒程度)と、大卒・高卒どちらの方も使えるライトの過去問を数十問ずつ掲載しています。過去問を再構成するだけでなく、時間が無い方向けに、そこを読めばすぐ解ける「早わかり解説」と、より踏み込んで解法や関連知識を叩き込める「しっかり解説」の二段構えで、過去の出題実績から必要と思われる知識や解き方が習得できます。

市役所新教養試験Light&Logical[早わかり]問題集」は、ライト型の市役所を目指すには最も信頼できる市販教材ですし、新教養試験に対応する唯一の市販教材として、十分におすすめできる必須教材といえます。

従来型の市役所の場合の対策は?

志望先の市役所が従来型(スタンダード、ロジカル)の方は、大卒程度の方は市役所(大卒) 令和5年度試験対応、高卒程度の方は市役所(高卒) 令和5年度試験対応で一括して試験対策を取り上げていますので、参考になさってください。