防衛省専門職員の参考書:論文試験

今回は防衛省専門職員の論文試験について、実際の試験問題、出題の傾向と対策、試験対策に役立つ参考書まで、一括して取り上げます。

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防衛省専門職員の論文試験の試験問題

防衛省専門職員の論文試験で、直近数年間に出された実際の試験問題は、以下の通りです。

  • 「個別的自衛権と集団的自衛権」及び「個別的安全保障と集団的安全保障」についてそれぞれの特徴を述べ、これらの相関について具体例を用いて述べよ。
  • 文部科学省は現在、グローバル化に対応した教育環境づくりを進めるため、小学校における英語教育の拡充強化を計画している。小学校における英語教育の現状について知るところを述べ、今後の改革としてどのようなものが考えられるか、その改革にともなう問題点も指摘しながら、あなたの意見を論ぜよ。
  • 国家安全保障に関する基本方針として定めた「国家安全保障戦略」について(1)前提となっている我が国を取り巻く安全保障環境を述べ、(2)この戦略を実行する司令塔として設立した国家安全保障会議(NSC)について説明し、(3)この戦略で明記された国家安全保障の基本理念である国際協調主義に基づく積極的平和主義について意見を述べよ。
  • 日本政府が提言する「留学生30万人計画」(2008年)は現在も継続しており、日本への留学生数は現在およそ13万人に達している。その約半数の留学生が高等教育機関卒業後、日本での就職を希望している(独立行政法人日本学生支援機構;JASSO調べ)。留学生の日本での就職は今なお増加傾向にあり、日本社会に定住する外国人の人口が増えていくことが見込まれる。
    日本への留学生は中国を中心とするアジア諸国からの留学生が圧倒的に多いが、その理由として、どのような背景が考えられるか。また、日本企業が留学生を採用するメリット、デメリットを分析しながら、今も継続中の留学生受け入れ政策を今後どのように展開していくべきか、自分の考えを述べよ。
  • 「アベノミクス」と呼ばれる経済政策に関して,①その内容を説明し,②世界(日本を含む)における過去の経済政策との比較(異同)を論じ,③この政策の功罪についてあなたの意見とその理由を述べよ。
  • 国立社会保障・人口問題研究所による2013年の「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」によると,2019年まで世帯総数は増加するものの,平均世帯人員は減少が続き,単独世帯の増加が予想されている。このような単独世帯の増加はどのような要因によると思われるか。また,増加した単独世帯が高齢化した際に想定される問題の解消のために,具体的にどのような仕組みを作っていけばよいかを論ぜよ。
  • 近年、耳にすることの多くなった新たな社会構想の一つに「ベーシック・インカム」論がある。これは、政府が国民一人ひとりに、最低限の生活を送ることができるだけの金額の現金を、その人の所得や資産の多寡、勤労意欲の有無に関係なく無条件で給付するという構想である。この構想にはどのような利点と問題点があるか論ぜよ。
  • いわゆる「成果主義」とは、営業成績など個人の仕事の成果、業績に関する短期的評価を賃金、報酬や人事管理に直接連動させる人事考課システムである。これが国家公務員に適用されたときの得失について述べ、多岐にわたる行政職務における「成果」をどのように評価すればよいか、あなたの意見を記述せよ。

防衛省専門職員の論文試験の傾向

防衛省専門職員の論文試験では、毎年2つの課題が出ています。1題は国際情勢・外交・安保・防衛、もう1題は時事的な社会的課題(温暖化、コロナ、人工知能など)という傾向が続いています。

こうした課題は、防衛省や自衛隊の役割と絡めた問題も頻出です。なお、2つの課題について、大きく論じる問題もあれば、それぞれの課題について小問に分かれて論述させた年度もあります。

防衛省専門職員の論文試験は、問題文自体は長いものの、複雑で高度な論述を要求するものではなく、地方上級などで見られるような、標準的な難易度だといえます。もちろん、頻出分野は地方公務員とは異なり、より国家的・社会的なテーマが中心です。

この論文試験対策は、「国際情勢・国際関係や外交・安保・防衛の基礎知識を学ぶこと」「時事対策をしっかり行うこと」の2つに尽きると思います。このうち時事対策は、社会・経済・教育・科学技術・文化芸術など、一般的で国家的な課題にも備える必要があります。

防衛省専門職員の論文試験の対策

防専の論文試験は、上記通り過去の試験問題を踏まえれば、「国際・外交・安保・防衛」と「時事的な社会的・国家的課題」に取り組む必要があります。

「国際・外交・安保・防衛」と防衛省・自衛隊

このうち、「国際・外交・安保・防衛」に関しては、実質的には安全保障論の専門記述試験に近いともいえます。まずは、各自で安全保障論に関する参考書をしっかりと読み込み、論点整理にも活用しましょう。

また、防専の論文試験では、「自衛隊の災害派遣活動や災害派遣において自衛隊が自治体やNPOと協働する際の留意点」などの出題例がありますし、時事的な事柄と防衛省や自衛隊の活動そのものを問う出題も、十分ありえるテーマです。

このため、防衛省や自衛隊の公式サイトや公式の刊行物・パンフレット等は一通り読み込み、特に基本的な職務内容や現在取り組んでいる主要な出来事などは、必ず確認しましょう。

その一方、「防衛白書」は毎年7~8月に刊行され、日本を取り巻く安全保障環境、日本の安全保障・防衛政策、日本の防衛の取り組み、防衛力の能力発揮のための基盤が掲載されます。

防衛白書の内容は、防専の論文試験なら、どこから出てもおかしくないテーマばかりです。防衛省専門職員の受験生なら、必ず入手して読み込むべき必須の教材といえます。

もちろん、防衛省や自衛隊を中心に、安全保障に関する政府の重要な公式発表は随時チェックすることをおすすめします。閣議決定された「国家安全保障戦略」など、ニュースや新聞で大きく取り上げられた出来事は必ず確認します。

ここまでは、防衛省専門職員の論文試験のうち、安全保障・防衛や国際関係・国際情勢・外交、防衛省・自衛隊に関する課題対策を取り上げました。一方、「時事的な社会的・国家的課題」に関しては、以下に述べる時事対策が欠かせません。

論文が苦手/時事対策をどうするか

一方、防衛省専門職員の論文対策は、時事対策もしっかりと取り組むべきでしょう。国家公務員向けになるような幅広いテーマと、安全保障・外交と防衛省・自衛隊に関わるテーマはしっかりニュースや新聞などをチェックします。

防専の論文試験は、時事的な課題自体は一見難しく感じますが、要求される記述内容は、地方上級などの標準的なレベルといえます。このため、標準レベルの大卒公務員の論文対策や参考書でも、十分通用します。

論文試験 頻出テーマのまとめ方

論文試験 頻出テーマのまとめ方」は、地上・国一・市役所大卒向けですが、防衛省専門職員をはじめ、大卒公務員の論文試験に幅広くおすすめできる定番参考書です。

本書は、冒頭に最新のトピックという、1つのテーマに絞った特集項目のほか、約20のテーマごとに、インプット部分の「知識と理解」、アウトプット部分の「出題例と研究」があり、論点ごとの知識を、深く詳しく叩き込むことができる参考書です。

論文試験 頻出テーマのまとめ方」は毎年改訂されており、購入時は最新年度版をおすすめします。掲載テーマも毎年見直されていますが、情報化、高齢化、少子化、災害対策、公務員像、国際化、多様性、科学技術など、公務員試験で必要な論点を一通りカバーしています。

防専の方が本書を使うのは、「国際・外交・安保・防衛」や防衛省・自衛隊以外の論点対策です。つまり、防専の論文試験で頻出の「時事的な社会的・国家的課題」対策です。

防専の論文対策では、地域の話題やローカルで問題になっている事柄ではなく、国全体を見たときに政治経済や社会問題になっている国家的課題や、文化・科学技術の論点を中心に、ニュースを追っていくことを意識してください。

過去に実際に出た防専の課題でいうと、地球温暖化(パリ協定)、コロナ、外国人労働者、人工知能を取り上げた出題例があります。変わったところでは、読書や電子書籍の利用状況を問うた文化庁の意識調査を元に、各自の読書観を問う問題が出たことがあります(2022年)。

このため、防専の方が「論文試験 頻出テーマのまとめ方」を使う場合、もちろん全てのテーマに取り組むのが理想ですが、地域の話題やローカルな論点よりも、国家的課題や文化・科学技術の論点に絞って取り組んでも良いかと思います。

どちらにしても、防専の論文試験は、政治経済や社会問題だけでなく、文化・芸術まで幅広く、国家や国民のあり方や意識をめぐる論点を押さえましょう。また、本書は難易度的には適切ですが、基本は地上・国一・市役所大卒向けに書かれた参考書です。

そこで、防専の方は地方公務員とは異なり、国家公務員として要求される課題ですから、あくまでも国家的な視点で記述すべきことに留意してください。もちろんこれは、「論文試験 頻出テーマのまとめ方」の使用の有無に関わらず留意すべき点です。

その一方、「論文試験 頻出テーマのまとめ方」は地上・国一・市役所の方には、文章の書き方や答案例が極めてハイレベルであり、とても厳密で分け入った記述となっています。これは一般的な公務員受験生だと、本試験で書けるレベルでは無いと思います。

その一方、本書は毎年改訂されており、頻出論点を非常に的確かつタイムリーにまとめた良書といえます。このため、防専の方が使う場合も、細部に拘泥せず、論点ごとに合格に必要な記述はこういう方向で行くんだという参考程度で良いと思います。

論文試験 頻出テーマのまとめ方」を使う場合は、些末な議論にこだわらず、左側に書かれたコメントや強調表現を参考に、要所に絞って効率よく読み進めれば、重要な論点を網羅的に理解する上で十分におすすめできる参考書といえます。

1週間で書ける!! 公務員合格作文

防衛省専門職員の論文試験では、1題は出る「時事的課題」には、標準レベルの大卒公務員の論文対策や参考書でも通用するといえます。文章の書き方が分からないという方も、基本的な文章の組み立て方や構成方法が習得できる、一般的な大卒公務員向けの参考書が役に立ちます。

そこで、そもそも論文の書き方がわからないという方には、「1週間で書ける!! 公務員合格作文」を読んでおくことをおすすめします。論文の構成や書き方に関して、全くの初歩から教えてくれる参考書です。

本書は、とにかく「書き方」に特化した参考書です。論点や知識のインプットを目的にするなら、防専の方は先に挙げた「防衛白書」や「論文試験 頻出テーマのまとめ方」、安全保障論の専門書や防衛省・自衛隊の公式刊行物・ウェブサイト、ニュースなどの時事対策に取り組んでください。

1週間で書ける!! 公務員合格作文」は、人によっては1週間で済まないかもしれませんし、知識のインプットを目的にした参考書ではありません。その一方、文章の組み立て方や書き方といった、「ノウハウの習得」を目指した導入本であり、超基礎から優しく解説しています。

本書は、第1編で時間配分、文字制限、分量やキーワード、接続詞など論文の「形式」面、第2編で全体像を把握して先に定義付けを行い、問題点から背景を探り当て、問題点と自分の主張を結びつける、「内容」面からの書き方を伝授してくれます。

第3編では20以上のテーマを取り上げ、問題ごとに必要な基礎知識と文章の構成方法を解説し、あえて100点満点ではなく、誰でも達成可能な「合格レベル」の解答例を掲載しています。

第3編に関しては、防専の方には知識の習得目的では不足しがちですし、そこは「防衛白書」や「論文試験 頻出テーマのまとめ方」など先述の他書を利用すべきです。もちろん、第3編を通じて、実践的な「組み立て方」「書き方」の習得を目指すことが、非常に有益だといえます。

巻末には国家一般職大卒(旧・国家2種)や地方自治体の問題も掲載していますが、防専の方は、やはり第1~3編を通じて、「論文試験の基礎」「答案の組み立て方・書き方」を習得するのに最適な参考書といえます。

本書の内容は、超基礎からです。防専の方にとっては、あまりに当たり前すぎて、無駄に感じる方もいるかもしれません。しかし、そうした方も含め、全くの初歩から本試験レベルまで、書き方のノウハウを網羅的に学べる良書としておすすめできます。

1週間で書ける!! 公務員合格作文」は、論文試験のアプローチを頭の中で理解するだけでなく、実践的な「組み立て方」「書き方」を網羅的に習得させてくれる、優れた入門書としておすすめします。

防衛省専門職員の教養試験(基礎能力試験)対策は

大卒公務員の教養試験(基礎能力試験)は、区分(職種)を問わず共通の試験内容が一般的です。教養試験対策(大卒)の参考書を一通り知りたい方には、まず先に大卒公務員の教養試験(基礎能力試験)をおすすめします。