理系区分(職種)の公務員試験は、今回取り上げた試験内容も含め、ほぼ同じ試験対策で対応できます。理系公務員の参考書を一通り知りたい方は、当サイトでは一括して取り上げています。→理系公務員の参考書をおすすめします。
今回は、労働基準監督官B(理工系)の試験内容と対策を取り上げます(労働基準監督官は労働基準監督官A(法文系)とB(理工系)の区分があります)。
以下の試験内容のうち、「2/7」などと表記しているのは、人事院が公表している全体を7としたときの配点比率です。人物試験・身体検査は配点比率が無く、それぞれ合否判定を行います。
1次試験は以下の通りです。
- 基礎能力試験(択一式)40題 2/7
- 知能分野27題→文章理解[11]、判断推理[8]、数的推理[5]、資料解釈[3]
- 知識分野13題→自然・人文・社会[13](時事を含む。)
- 専門試験(択一式)46題出題・40題解答 3/7
- 必須問題→労働事情(就業構造、労働需給、労働時間・賃金、労使関係、労働安全衛生)[8]の計8題
- 選択問題→工学に関する基礎(工学系に共通な基礎としての数学、物理、化学)[38]の38題から32題選択
- 専門試験(記述式)4~6題出題 2題解答 2/7(注)
- 必須問題→工業事情1題
- 選択問題→工学に関する専門基礎(機械系、電気系、土木系、建築系、衛生・環境系、応用化学系、応用数学系、応用物理系等の工学系の専門工学に関する専門基礎分野)から3~5題出題し、うち1題選択
2次試験は以下の通りです。
- 人物試験
- 人柄、対人的能力などについての個別面接(参考として性格検査を実施)
- 身体検査
- 主として胸部疾患(胸部エックス線撮影を含む。)、血圧、尿、その他一般内科系検査
(注)1次試験の合否は基礎能力試験と専門試験(択一式)の結果で決まります。専門試験(記述式)は第1次試験合格者を対象として評定し、最終合格者の決定に反映します。
労働基準監督官Bの試験対策
労基の教養試験(基礎能力試験)はA・Bとも共通問題ですし、以下の通り同日実施の国家専門職と全く同じ問題が導入されています。
基礎能力試験(合計40問)は、同日実施の国家専門職(大卒)(国税専門官、財務専門官、労働基準監督官など)の間では、全く同じ共通問題です。国家一般職大卒・地方上級レベルの標準的な大卒公務員の試験勉強で対応できます。
- 知能分野 27題→文章理解 11題、判断推理 8題、数的推理(一部の国家専門職や防専では「数的処理」)5題、資料解釈 3題
- 知識分野 13題→自然・人文・社会(時事を含む) 13題
- 数的処理(判断推理、数的推理、図形、空間)→判断推理8、数的推理5出ます。この2科目だけで基礎能力試験の3割以上を占め、真っ先に取り組むべき最重要科目です。
- なお、国家専門職の一部や防専では、数的推理を「数的処理」と呼びます。
- 文章理解→現代文6、英文5で古文は出ません。やはり出題数が多く、必ず勉強すべき科目です。
- 資料解釈→3問出ます。コツコツとしっかり取り組むことで学習効果の高い科目です。
- 社会科学(時事対策を含む)→時事が3問、法律、政治、経済が各1問出ます。一般知識(知識分野)では最もウェイトの高い重要分野です。
- 人文科学→日本史、世界史、地理、倫理思想が各1問出ます。ここを落とす受験生は少なく、やはり勉強すべき分野といえます。
- 自然科学→生物(または地学)、物理、化学が各1問出ます。優先度は低いものの、典型問題・基礎問題だけでも勉強すると点が取りやすい分野です。
教養試験(基礎能力試験)対策
大卒公務員の教養試験(基礎能力試験)は、区分(職種)を問わず共通の試験内容が一般的です。教養試験対策(大卒)の参考書を一通り知りたい方には、まず先に大卒公務員の教養試験(基礎能力試験)をおすすめします。
専門試験対策
専門試験(択一式)は、労働事情8問と工学の基礎38問(32問選択解答)です。工学の基礎では、数学と物理で合わせて30問程度、化学は8問程度出題されています。
理系公務員の工学の基礎では、数学・物理に加え化学が課されるのは労基Bだけです。公務員試験向けの教材だけでなく、大学受験や大学での使用教材も活用し、しっかりと備えましょう。
専門試験(記述式)は、工学系の基礎問題が必須問題、専攻分野に関わる問題が選択問題といえます。過去問を参照し、大学の学部レベルで使った教材にしっかり取り組むことで対応できます。
労基Bの労働事情について
労基B(理工系)で課される労働事情とは、公務員試験の「社会政策」という科目が該当します。社会政策という科目の中に、労働経済、労働事情、社会保障という分野が含まれます。
ただし、労基Bでは、労働事情が独立した科目として課されます。その出題範囲は、「就業構造、労働需給、労働時間・賃金、労使関係、労働安全衛生」と明記されています。
公務員試験の社会政策(労働経済、労働事情、社会保障)に対応するメイン用途の市販教材というと、「スー過去」(実務教育出版)も「過去問解きまくり」(LEC)も出ていません。
そこで他書から選ぶとなると、「公務員Vテキスト 社会政策 (地方上級・労働基準監督官) TAC出版」がおすすめできます。2色刷りで読みやすく、地上と労基A(法文系)を対象にしたテキストですが、労基Bの方にもおすすめできます。
本書は、「労働経済・事情」の章だけこなせば、労基Bの労働事情のほとんどの範囲に対応できます。本書で触れてない部分は、労基Bは理系の学生を想定しているため、大学のテキストで良いので、労働関係の科目や労働安全衛生の学習をおすすめします。
また、「公務員Vテキスト 社会政策 (地方上級・労働基準監督官) TAC出版」は同種のテキストに比べて、よく改訂されているのもおすすめポイントです。購入の際は、最新版の購入をおすすめします。
労働事情は、時事的な動向に大きく左右される科目です。労働問題や労働分野に関するニュースをこまめにチェックしましょう。さらに、厚労省から出ている「労働経済白書」や「厚生労働白書」が元ネタになった問題も数多く見られます。
これらの白書も、できればちゃんと購入して、本文を一通り読むことが望ましいと思います。また、厚労省が公式サイトで公開している、それぞれの概要版のPDFファイルを確認するのも良いと思います。時間が無い方は、概要版だけでもこなしましょう。
「公務員Vテキスト 社会政策 (地方上級・労働基準監督官) TAC出版」は演習問題もついていますが、基本はあくまでもテキストです。市販の教材で、労基Bに特化した労働事情の過去問は無く、問題演習の機会がほとんど無いのですが、以下の問題集を紹介しておきます。
まず、「国家専門職[大卒] 教養・専門試験 過去問500」は、労基Bの専門試験で択一式の問題がほとんど無いのですが、記述式の過去問も掲載されています。情報量が極めて少ないのですが、どんな問題なのか感触を知るだけでも、損はないと思います。
その一方、労基B以外で労働事情が出る公務員試験には、地方上級(大卒程度の都道府県および政令指定都市の行政系職員)が挙げられます。地上のうち全国型、関東型、中部北陸型に該当する自治体で、「社会政策」という科目で毎年2~3問出ており、労働経済・労働事情と社会保障がそれぞれ1問あるいは2問出ています。
労基A/Bと地上の採用試験は、難易度があまり変わらないため、「地方上級 専門試験 過去問500」もおすすめです。あったほうが良いとは思いますが、労働事情の掲載問題はほとんど無く、労基Bなら数問のためだけに無理に使う必要は無いかもしれません。
このほか、労基Bの専門試験で、十分におすすめできる市販の問題集・演習書はまず見かけないというのが正直なところです。それだけに、「公務員Vテキスト 社会政策 (地方上級・労働基準監督官) TAC出版」だけでも、しっかりこなしたほうが良いと思います。
人物試験対策
また、人物試験の対策も、面接試験、官庁訪問の参考書(大卒程度公務員)を参考に、しっかりと備えましょう。