官庁訪問(国家総合職):採用者の割合と人物像

今回は、国家総合職の官庁訪問において、採用者の割合(採用試験の最終合格者に対する割合)や、どんな人が採用されるのか、その人物像を考えていきます。

官庁訪問を通じた採用者の割合(国家総合職)

国家総合職・採用試験の最終合格者のうち、実際に各省庁に採用されているひとの割合は、事務系(法文系)区分(院卒行政、政治国際、法律、経済)の合計数で見ると、毎年3~4割にとどまっています。つまり、3人に2人近い人は、採用されません。

その一方、同じ国家総合職でも、教養区分では、最終合格者のうち6~7割の方が採用を勝ち取っています。なお、教養区分の場合、3年次に受験する方が多いため、ある年度の採用者の多くは、その前年度の採用試験の最終合格者が占めています。

また、技術系区分は、区分によるバラツキがあって一概にはいえませんが、どの区分も、概ね事務系よりは高い割合で採用されているといえます。

国総の官庁訪問において、技術系区分は、事務系区分ほどはキツくないと言われます。また、教養区分の方は、採用されやすく、有利というか強い傾向はあります。もちろん、どの区分も、「甘い」とか「楽勝」ということはありません。油断は禁物です。

国総の採用者の割合は、どの区分でも、採用されない人が、一定の割合で存在します。つまり、官庁訪問という、なかなか過酷なプロセスでふるいに掛けることで、国家公務員の職務に合致した人材を選んでいるのだと思います。

国総に採用されるのはどんなひと?

国家総合職の官庁訪問において、どんな人が採用されるのか、建前上は「人物重視」と言われるのですが、実際の採用者も不採用者も、何が良くて何が悪かったのか分からない、採用の基準は、全くのブラックボックスだといえます。

ときには、官庁訪問を回る受験者、あるいは、職員の中にも、「官庁訪問は運だよ」とおっしゃる方もおられます(注:この種類の発言に乗っかって、自分も軽はずみな言動をするのはNGですよ)。

一応、官庁訪問の前には、採用試験の成績があります。官庁訪問では、業務説明や質疑応答、面接を何度も受けることになり、志望動機や知識や論理的な考え方など、徹底して問われます。しかし、本人の手応えと関係ないところで、採用が決まります。

つまるところ、官庁訪問とは、こうした徹底したやり取りを通じて、「変わった人」「おかしな人」「普通じゃない人」「個性が強い人」「独特な人」「独善的な人」「協調性のない人」を落としていく作業なのでは無いかと思います。

各省庁から見れば、扱いやすい人、一緒に仕事したい人、うちの省庁が取りたいと思う人を取る。そういう視点で見ると、官庁訪問とは、言動や振る舞いをはじめ、何かどこかが、他人と違っている人を、落としていく作業と言えるかもしれません。

官庁訪問にどう臨むべきか(国家総合職の場合)

国家総合職の官庁訪問では、極端に言えば、「コイツのことを気に入った」「コイツとなら一緒に仕事ができる」と思ってもらえるかどうかが、採用かどうかの分岐点なのかもしれません(もちろん、基本的なマナーや礼儀正しさが前提です)。

官庁訪問で行う人事面接や原課面接というのは、採用試験で測ることのできない、その人が持つ性格から適性を見ています。要するに、うちの省庁でこの人を受け入れてよいのかどうか、うちにこの人がフィットするかどうかという点です。

知識というのは、勉強すれば誰でも習得できます。志望省庁について、全くの無知・不勉強というのも論外ですし、ある程度は事前に調べておくべきですが、単なる知識ヲタクというだけでは、国家総合職への採用は難しいと思います。

国総の官庁訪問では、知識も重要ですが、それよりも、熱くならず、理路整然に対処できる即応能力や、自分の立場を率直に受け入れる謙虚さやフレキシビリティ、さまざま場面に合わせられる順応性といった、省庁の人間としての適性が重要です。

例えば、圧迫面接やコンピテンシー面接を繰り返し受ける中で、熱くなったりムキになったり、職員を論理で押し込んだり、敵対的と解釈されるような言動は、協調性の欠如と判断されますし、そんな失態をふるい落とすのが官庁訪問です。

裏を返せば、官庁訪問では、どれだけ厳しい面接に遭遇しても、冷静に論理的に主張できるところは発言する一方、知らないことは率直に認め、謙虚に教えを請うような、柔軟性と学習意欲を示せるひとは、評価されやすいといえます。

官庁訪問(国総)に必要な「熱意」「謙虚さ」とは

国総の官庁訪問では、「熱意」と「熱くなる」ことは、ハッキリと分けて考えるべきです。「熱意」というのは、直接的には、その省庁が第一志望であり、是が非でも採用してもらいたいことを明確に示すことだと思います。

その一方、官庁訪問で圧迫面接やコンピテンシー面接に直面し、我を忘れて感情的になってはいけません。その最たるものが、「熱くなる」ことだと言えます。どんな面接でも、穏やかで冷静に判断し、ブレること無く、論理的に話すことが重要です。

採用する側は、この者がうちの省庁に合っているかどうかを主眼に判断します。これは受験者から見れば、その省庁が最終的に何を目指していて、そのことをよく分かっていることや、その考えに共感し、その一員になりたいことを表すべきです。

また、国総の官庁訪問において、採用側は、「この人と一緒に仕事したいと思うかどうか」「コイツはうちにとって良いやつかどうか」を測っています。そう思ってもらえるような言動や振る舞いというのは、結局は「謙虚さ」に尽きると思います。

そもそも、国家総合職において、なぜ採用試験の合格=採用ではなく、官庁訪問という非常に厳しい採用プロセスがあるのかと考えた時に、「官庁訪問にあって採用試験に無いもの」を考えれば、必要なものは自然と浮かんで来るでしょう。

一言でいえば、採用試験だけでは測ることのできない、国家総合職としての適性、各省庁に見合った人物かどうかを試しているのだと思います。知識だけなら、採用試験だけで十分です。それを補うのが、「熱意」と「謙虚さ」では無いでしょうか。