今回は、国家総合職の大卒程度、および、院卒者試験の人間科学区分を取り上げます。この2区分は、専門試験が択一式・記述式ともに、基本的に同じ共通の問題です。
国家総合職では、秋季に実施される院卒者程度の法務区分と大卒程度試験の教養区分を除く全ての試験区分は、春先に実施されます(「春試験」)。春試験では、院卒者程度と大卒程度試験は同日実施が通例です。
今回取り上げている区分も、春試験に該当する区分です。以下、国家総合職の春試験を前提に説明します。
国家総合職の春試験の1次試験では、院卒・大卒どちらの場合も択一式の基礎能力試験(教養試験)と専門試験が課されます。このうち、基礎能力試験は院卒30問、大卒40問で、専門試験は院卒・大卒ともに解答数40問です(専門試験の総問題数は区分によって異なる)。
また、春試験の2次試験では、院卒者では専門記述試験(記述式の専門試験)、政策課題討議試験、人物試験が課され、大卒程度では専門記述試験、政策論文試験、人物試験が課されます。
基礎能力試験は、院卒者どうし、大卒程度どうしなら試験区分を問わず、共通の試験問題が課される試験です。院卒者と大卒程度の間では共通問題と告知されていませんが、院卒者の異なる区分どうし、大卒程度の異なる区分どうしなら、どの区分でもそれぞれ共通の試験問題となっています。
院卒者の基礎能力試験は30問であり、以下の通り告知されます。
- 知能分野24問:文章理解8問、判断・数的推理(資料解釈も含む)16問
- 知識分野6問:自然・人文・社会6問(時事を含む)
大卒程度の基礎能力試験は40問であり、以下の通り告知されます。
- 知能分野27問:文章理解11問、判断・数的推理(資料解釈も含む)16問
- 知識分野13問:自然・人文・社会13問(時事を含む)
このうち大卒程度の方は、一般的な大卒公務員試験の教材を使って、国総の問題までしっかりと踏み込んで取り組むことで対応できます。院卒者試験の方も、これをベースにすれば良いのですが、これに加えて、院卒者の基礎能力試験の過去問を5~6年分は人事院に請求して問題演習を行うことをおすすめします。
このように基礎能力試験は、それぞれどの区分の場合でも、院卒者・大卒程度試験それぞれに応じた試験対策で対応できます。
大卒公務員の教養試験(基礎能力試験)は、区分(職種)を問わず共通の試験内容が一般的です。教養試験対策(大卒)の参考書を一通り知りたい方には、まず先に大卒公務員の教養試験(基礎能力試験)をおすすめします。
専門試験は、試験区分ごとに課される試験です。専門試験のうち、択一式(1次試験)はどの区分も解答数は40問(総出題数は区分によって異なる)であり、記述式(2次試験)は専門記述試験とも呼ばれます。
専門試験(択一式)は、以下の通り105題中40題解答です。
- Ⅰ部 5題
- 人間科学に関する基礎[人間科学における調査・分析に関する基礎、人間科学における行政的問題を含む。]
- Ⅱ部 15題
- 以下の選択A、B(各15題)から一つを選択
- 選択A:心理系→人間の資質及び行動並びに人間関係の理解に関する心理学的基礎(心理学史、生理、知覚、学習等) 11題、心理学における研究方法に関する基礎 4題
- 選択B:教育・福祉・社会系→教育学、福祉及び社会学に関する基礎 12題、教育学、福祉及び社会学における調査・分析に関する基礎 3題
- Ⅲ部 20題
- 次の14科目(各5題)から4科目を選択し、計20題解答
- 認知心理学、臨床心理学、教育環境学、教育心理学、教育経営学、教育方法学、社会福祉総論、社会福祉各論、福祉計画論、地域福祉論、社会学(理論)、社会学(各論)、社会心理学、現代社会論
専門試験(記述式)は以下の通りです。
- 選択問題 2題
- 次の6題から2題選択
- 心理学に関連する領域 2題[人間の資質及び行動並びに人間関係の理解に関する心理学的基礎、行政的な課題・社会的事象について、心理学的な視点から論述するもの]
- 教育学、福祉及び社会学に関連する領域 1題
- 教育学に関連する領域 1題
- 福祉に関連する領域 1題
- 社会学に関連する領域 1題
- (注)同じ領域から2題選択可。
国家総合職の場合、同じ名称の区分なら、専門試験は択一式も記述式も、院卒者試験と大卒程度試験の間では、基本的に共通の問題が課されます。院卒者試験の方も、大卒程度試験の方も、専門試験の試験内容は同じであり、大卒程度の各区分に見合った試験勉強で対応できます。
国家総合職(大卒および院卒者/人間科学区分)の専門試験(択一式)の1部は、メンタルヘルス、ジェンダー、思想、社会福祉、統計基礎など、社会学、心理学、社会福祉、教育学、統計学(または調査・研究法)から基礎的な問題が1題づつ出る傾向があります。1部自体の対策は、後述する2、3部および記述式の対策で十分対応できます。
国家総合職(大卒および院卒者/人間科学区分)の専門試験(択一式)の2部のうち、選択Aは心理学全般と心理統計が出題されます。心理学全般の参考書で幅広く心理学を固めましょう(これは1部対策にもなります)。
その一方、科目別対策として、以下の記事で紹介する参考書の追加をおすすめします。
国家総合職(大卒および院卒者/人間科学区分)の専門試験(択一式)の2部のうち、選択B=教育・福祉・社会系では、教育学、福祉及び社会学に関する基礎 12題、教育学、福祉及び社会学における調査・分析に関する基礎 3題が出ます。
このうち、教育学に関しては、教員採用試験の教職教養試験で課される「教育原理」と同じです。教育学/教育学概論がそのまま試験対策として使えます。
福祉に関しては、福祉系公務員:専門試験の参考書を参照して、福祉系科目をトータルで勉強することをおすすめします。
社会学に関しては、社会学(福祉系・心理系向け)にまとめており、これらの参考書・問題集に取り組むことをおすすめします。もちろん、社会調査法(社会調査)も手がけておくべきでしょう。
国家総合職(大卒および院卒者/人間科学区分)の専門試験(択一式)の3部は、次の14科目(各5題)から4科目を選択し、計20題解答します。以下のとおり各科目ごとの記事を参考に、試験勉強を行いましょう。
社会福祉総論、社会福祉各論、福祉計画論、地域福祉論は、福祉系公務員:専門試験の参考書で対応できます。
社会学(理論)、社会学(各論)は、社会学(福祉系・心理系向け)で対応できます。特に「社会学(New Liberal arts Selection) 有斐閣」および過去問集(スー過去または「解きまくり」)に取り組むことをおすすめします。
国家総合職(大卒および院卒者/人間科学区分)の専門試験(記述式)=専門記述試験は、心理学、教育学、社会学、社会福祉から専門的な課題が出題されます。今回の記事で触れた1~2部および3部で選択する科目の試験勉強をしっかりと行い、その中で論点整理を行うこと、および、徹底した過去問演習を行えば、十分解ける問題です。
論点整理だけでなく、過去問・模試を繰り返し何度も解き直くなかで、徹底的な出題内容の検証を行い、どの分野をどの程度勉強するか試験勉強にフィードバックします。もちろん、専門試験の過去問を5~6年分は人事院に請求しておきましょう。
国家総合職の2次試験では、院卒者では政策課題討議試験、大卒程度では政策論文試験が課されます。このうち政策論文試験については、国家総合職・大卒:政策論文試験で詳しく説明しています。
国家総合職では院卒者・大卒とも、2次試験で人物試験が課されます。これは面接試験(個別面接)です。これについては、国家総合職(大卒)・2次面接試験対策が参考になります。
国家総合職では最終合格=採用とは限らず、官庁訪問という採用活動を経て、自ら各府省の内定を勝ち取る必要があります。
国家総合職の官庁訪問は、春試験では院卒者/大卒や区分を問わず全ての受験者に適用される共通の統一ルールが設定されます。その一方、秋試験の2区分(院卒者の法務区分、大卒程度の教養区分)はそれぞれ個別にルールが設定されます。国家総合職の官庁訪問については、国家総合職の官庁訪問で詳細に取り上げています。