今回は、国家総合職の官庁訪問で、採用の可能性が高い、あるいは、低い方には、どんな違いが見られるかを取り上げます。官庁訪問では、かなり早い時点から、いわゆる「振り分け」があると思います。
国総の官庁訪問で採用の可能性が高い場合とは?
国家総合職の官庁訪問では、採用の可能性が高い方とそうでない方で、扱い方が違ってくることが普通にあります。人事面接では、かなり早い時期から人事の企画官や課長補佐に会えた方は、相当に評価が良い受験者だと思います。
採用の可能性が高い方は、その旨が告げられることもありますし、課長級・部長級など、職位が高い方との面接がどんどん続くと思います。本省希望なら、採用が有望な受験者は、局長級の職員まで行くことが、普通に行われます。
若手から中堅職員、概ね係長級との面接に比べて、管理職を超えると、職位と面接の厳しさは、だいたい比例するものです。しかし、圧迫面接も含め、あれこれと相当に深く聞かれた受験者は、それだけ採用の望みがあると思います。
さすがに局長級の方なら、非常に鋭く厳しい質問を、重たい雰囲気の中で受けることになると思います。その一方で、面接カードに書いてない事柄をたくさん聞かれたり、原課面接で談笑が起きるほど和やかな雰囲気に遭遇したという受験者もおられます。
このうち、面接の質問内容であるとか、面接の雰囲気が穏やか(和やか)なものばかりだったという方は、採用の可能性との関係が、あまり無いのかもしれません。これらの場合に関しては、断言は出来ません。
ただし、確実に言えることは、採用の可能性が高い方は、職位の高い方との面接にどんどん遭遇したり、コンピテンシー面接や圧迫面接といった、厳しい面接に何度も直面することで、自分という人間が試されているのだと思います。
この他、低い評価では無いが、当落線上にあるという方も、厳しい面接に何度も直面して、本人の適性が試されると思います。官庁訪問は、面接の内容や回数が受験者によって異なるものですが、こういう方が最も多いような気がします。
採用側からすれば、本音はどうなのか?コイツは本当にやれるのか?君は本当に使えるのか?と言いたい所を、厳しい質問を次々と浴びせることで、太鼓判を押してもよいかどうか、最後まで見極めるつもりでいるのだと思います。
どんどん職位の高い方と接したり、厳しい面接に繰り返し直面しても、これは自分に可能性があるんだという気持ちを持ち、(感情的にならず)フラットな平常心で臨み、自分というものをしっかり持って、よほどの失態さえ無ければ大丈夫です。
ちなみに、国総の官庁訪問(10日間)のうち、1週間を過ぎても、面接担当者が管理職では無く係長級とか、前回より職位の低い方という場合もあります。それでも、受かる方がゼロとは言えませんし、最後まで踏ん張るのも、1つの考え方だと思います。
官庁訪問を行う省庁側の事情
国家総合職の官庁訪問において、採用の可能性が試される方ほど、職位の高い方との面接にどんどん遭遇します。逆に、評価が低い方は、後回しとなります。これは、採用側つまり省庁側の事情もあると思います。
仮に、自分が省庁側の人間で、採用担当の職員だとします。そして、面接を行い、まず有望とは思えない受験者がいたとします。この受験者を、次の段階つまり上司に上げようと思うでしょうか?やはり、低評価の方は、扱いが違うのではないでしょうか。
国家総合職の官庁訪問は、たったの10日間です。その間に、なんでもかんでも上司の判断を仰ぐのは、物理的に(日程的に)無理な話です。そこで、若手や中堅職員といった、かなり早い段階で、いわゆる「振り分け」は行われているはずです。
省庁によって異なりますが、若手職員、係長、課長補佐、室長や企画官、課長、部次長、部長級、局次長、局長と、各段階で「この者は上司に上げるかどうか」、ふるいに掛けられているはずです。
その一方、どの省庁も、少しでも優秀な職員を取りたいはずです。しかも、「うち(の省庁)で使える(合っている)人間」を採用したいはずです。その一方、国家総合職の採用試験で最終合格した人間にも、一定の限り(採用候補者名簿)があります。
国家総合職の官庁訪問とは、省庁側から見れば、有能な人材の獲得競争です。しかも、各省庁が採用枠の中で、単に優秀というだけでなく、「うちで役に立つ」と思える人材を早い時点で見極める、いわば「早いもの勝ち」競争です。
こんな状況下で、もし仮に、どう考えても印象が悪く、低評価の受験者を上司に上げたとしたら、その担当者自身の(省内での)評価に響くかもしれません。官庁訪問は、省庁間レベルでも、職員間レベルでも、人材を囲い込む、厳しい競争だと言えます。
このため、国総の官庁訪問では、高評価な方ほど、どんどん上に上げていって、管理職の方に早期の判断を下していただいて、早く囲い込む傾向があります。結果として、受験者は、職位の高い方々と、さまざまな面接を受ける機会に遭遇するはずです。
これはまた、官庁訪問の拘束にも、影響しているはずです。まだ判断を下すには迷いがあるが、他に行かせたくない受験者、あるいは、明らかに内々定が見えていて、絶対に確保したい者は、かなり長時間に渡る拘束がありえます。
自分に関心や興味を持たれているか?
もう1つ、国家総合職の官庁訪問で、採用の可能性が高い方にいえるのは、非常にさまざまな面接に遭遇し、多角的な質問であっても、深堀りされる場合であっても、「採用側が自分に関心や興味を持っていると感じられる」かどうかということです。
例えば、面接カード(訪問カード、ES)に基づき、書いた事柄を事務的に1つ1つ聞かれるのは、誰でも経験することだと思います。そのうえで更に、コンピテンシー面接や圧迫面接に何度も直面し、次々と深く問われた方は、自分の適性が試されています。
官庁訪問の面接で「よくある」質問は、公務員の志望理由、なぜこの省庁を希望するのか、大学で学んだ事柄、学生時代に頑張ったこと、趣味、特技、最近興味のあるニュースなどが挙げられます。
特に当落線上の受験者ほど、民間企業の就活状況、他の省庁はどこを回るのか、他人と意見がぶつかったときはどうするのか、気が合わない人とはどう接するのか、キャリアプランを持っているか、10年後・20年後の自分はどうなってるかなど、「たくさん聞かれる」あるいは「しつこく深堀りされる」と思います。
こうした質問を1つ1つ回答しても、採用側が無関心な態度を示す場合、故意にそうした態度を見せて、本人の態度を見極めるケースもありますし、本当にその受験者に関心が無いのかもしれません。ここで諦めるのは拙速ですし、可能性もあると思います。
ここでは、1つ1つの質問を次々に浴びせられる場合でも、1つの質問に対してコンピテンシー面接でしつこく深く掘り下げられる場合でも、これは、自分が採用されるかどうか、試されている勝負どころ、正念場だといえます。
どちらの場合であっても、「自分という人間に対して関心や興味があるかどうか」を感じることができれば、採用の望みが十分あるといえます。一見、面接官が無関心を装っても、圧迫面接の逆を行くような、自分を試している可能性があります。
大事なことは、ここで採用の可能性が探られている、勝負の分かれ目だと気を引き締め、冷静で論理的に話す対処能力と、謙虚で率直な柔軟性をバランス良く使い分け、とにかくブレないこと、普段どおりの自分でさばいていくことが重要です。
官庁訪問に採用試験の席次は影響するか?(国総)
国家総合職の官庁訪問で、採用試験の合格者の成績順(合格席次)は、よほど上位の方を除くと、さほど影響は受けないと思います。少なくとも、「採用試験の合格席次が低いというだけで落ちる」ということは無いと思います。
逆に言えば、採用試験に合格したひとならどんな席次でも、どなたにも採用のチャンスがあると思います。そもそも、採用試験の成績順だけで採否が決まるのなら、官庁訪問をやる意味がありません。
むしろ、国家総合職でわざわざ官庁訪問をやるのは、採用試験だけでは測りきれない、その人物の言動や性格を判断し、総合的に優秀な人間というだけではなく、「うちの省庁に合っている人材かどうか」を見定めることに意味があると言えます。
国家総合職では、採用試験があって、官庁訪問がある。その両者を組み合わせて、各省庁が、それぞれの業務分野や雰囲気に見合った人材を獲得する競争が、国家総合職の採用活動だといえます。
もちろん、国家総合職で、採用試験の席次を全く無視することは無いでしょうでし、誰を採用するのか、ギリギリ微妙な判断を迫られる場面では、いろんな要素の中の1つになりえるでしょう。
当たり前ですが、採用試験の成績は変えることが出来ません。それでも、たった10日間(国家総合職の場合)の官庁訪問の期間中に、自分の取り組み方を修正・改善することで、たとえ席次が高く無い方でも、逆転することは、十分に可能だといえます。