ここでは、国家総合職の官庁訪問のクール制を取り上げます。今回の記事は、前半でクール制の基本的なルール(国家総合職の場合)を説明したあと、後半で国家総合職の場合に注意すべき事柄を取り上げます。
今回の記事の内容は、過年度の実施実績に基づくものです。変更があるかもしれませんので、受験者の方は、人事院の公式サイトから、官庁訪問に関して、ご自身の訪問年度の情報を確認してください。
この記事(ページ)の目次です。
国家総合職の官庁訪問:クール制の基本
国家総合職では、官庁訪問の期間は、各官庁と受験者の一切の接触を禁じた土日祝日を除き、実質10日間です。
クール制とは、国総の官庁訪問で、10日間のうち、最初の3日間づつを第1クール、第2クール、次の2日間を第3クール、最後の1日づつを第4クール、第5クールと区切るものです。つまり、第1~5クールは、3→3→2→1→1日で、合計10日間です。
そして、第1クールと第2クールの間は、同じ省庁を訪問できるのは1回だけ(つまり、翌日・翌々日に同一官庁の訪問不可)、第3クールの間も同じ省庁は2日のうち1回だけ(つまり翌日の同一官庁訪問不可)となっています。
その一方、リセットといって、第3クール、第4クール、第5クールの各初日は、既に訪問したところも含め、任意の官庁に訪問可能です。内々定の解禁は、官庁訪問最終日(第5クール)の正午以降です。
官庁訪問のクール制における採用までの流れ(国総)
国家総合職の官庁訪問では、ルール上、それぞれのクールで同じ省庁を訪問できるのは1日だけです。さらに、官庁訪問には「拘束」があり、1日に訪問できる省庁は、事実上1つだけです。
官庁訪問の拘束とは、特に業務説明や面接が無いのに、その官庁に留まるよう求められることです。拘束は、最終クールに近いほど、あるいは、採用の可能性が高いひとほど、長時間に渡る可能性があります。丸1日続くことも、普通にあります。
官庁訪問では、1日に5回でも10回でも面接を受けることが珍しくありません。それに加えて、拘束があります。このため、官庁訪問で1日に訪問できる官庁は、事実上1つだけだということを、頭に置いておきましょう。
採用側が拘束する理由は、「うちに来た人を他の省庁に取られたくないから」だと言えます。その一方、第2クール以降からの訪問を認めない省庁が多いため、官庁訪問は事実上、第1クールの3日間で選んだ3つの官庁で勝負する必要があります。
国家総合職の官庁訪問では、第1クールに訪問した省庁で、次のクールも来るよう言われたら、その省庁は選考通過です。その一方、次の段階に進めない場合は、その省庁は落選です。落選者に敗者復活戦など無く、不採用ということです。
その後は第2クール以降も、次のクールに進めなかった方は不採用です。これを繰り返し、第5クール(官庁訪問最終日)の「内々定の解禁」時刻を過ぎた時点で、口頭で内々定を伝えられて初めて、採用がほぼ確定します。
官庁訪問では、次の段階に進めない(=不採用)場合、午前中に切られる方もいれば、午後以降、あるいは、夕方から夜遅くにかけて言われる方など、さまざまです。その日1日を我慢強く戦い抜いた方だけが、次の選考に残れます。
選考を通過した受験者は、その場で次のクールの訪問日時を指示されるなり、予約を取ることになると思います。落選の場合は、残念ながらとか、採用は厳しくなりました(可能性は難しくなった)などと言われると思います。
なお、「後で連絡します」は、後で連絡が来て、次回の訪問日時が決まる方も、ゼロではありませんが、かなり少ないと思います。ほとんどの場合は、連絡が来ないと考えたほうが良いと思います。多くの場合は、不採用です。
官庁訪問最終日=第5クール当日でも、不採用になる方が普通におられます。和やかな雰囲気だろうと、厳しい雰囲気だろうと、決して油断せず臨みましょう。最終的には、解禁日時が来て内々定が伝えられた時点で、その省庁への採用が確実となります。
各クールで朝早い時間帯に訪問を
官庁訪問では、どうしても行きたい省庁がある方は、第1クール初日の朝一番を希望してください。官庁訪問では、予約の時点で、競争が始まっています。そして、朝一番に行くということは、その省庁で、丸1日ドップリと戦うつもりで臨みましょう。
仮に、朝一番を申し出たが難色を示された、または、遅い時間帯を提示された場合、表向き先着順とか、早い時間帯は埋まったと言われても、実際はわかりません。本当に分からないのですが、その省庁からの評価が低く、後回しにされたかもしれません。
官庁訪問は初日から、高評価な人とそうでない人で、面接の回数や内容など、扱いが違います。省庁側も、先に優秀な人からどんどん判断を下すはずです。そう考えると、少なくとも、高評価な人を機械的に後回しにはしないはずです。
これは第2クールから最終クールまで、同じことがいえます。とにかく、その省庁の採用枠が埋まってしまわないうちに、先に自分を見てもらう、先に自分を判断してもらうという意味でも、なるべく朝早い時間帯に訪問することを目指しましょう。
官庁訪問枠に「空き」が出来たら?
国家総合職の官庁訪問の場合、第1→第2クールで1日1省庁ということは、第1クールで落選した日があると、第2クールで空いた日が出来ます。ただし、第2クール以降から新たに参加することは、認めない省庁のほうが、一般的に多いと思います。
また、第1~2クールで午前中に切られた場合、その日の午後が空くことになります。午後からでも他の省庁に新たに参加することは、ルール上は可能です。ただしこの場合も、受け入れてくれる省庁があるかどうかは別問題です。
仮に、志望候補として業務説明会への参加や政策・業務分野の予習などを行ってきたが、当初の訪問から外した省庁があれば、訪問枠が空いた時は、ダメ元は承知の上で、新たな参加の可否を打診しても良いかもしれません。ただし、おすすめはしません。
訪問枠が空いたから来るというのは、採用側からは、「どこの省庁でも良いのか?」と、印象や信頼度は良くないと思います。よほどの志望動機がある省庁ならともかく、無理に他の省庁を探したところで、良い結果は得られないと思います。
採用側は、優秀な人からどんどん確保していきます。仮に同じ評価だとしても、早いうちから来た人を優遇するでしょう。こういう意味でも、官庁訪問は、行くなら早く行くことが重要ですし、途中からの参戦は極めて不利だといえます。
また、次のクールまで残っている省庁の担当者がそれを知れば、決して快く思わないでしょう。官僚の世界は、縦も横もつながっているものです。そうした意味でも、空いた枠が出来たからと、無理に予約を取ろうと思わないほうが良いと思います。
午前で切られたとか、第1クールで切られた省庁があれば、むしろそれを前向きに考え、残っている省庁とは何が違ったのか、何が良くて何が悪かったのか、空いた時間を使って、次につながる検証を行い、改善点を次の機会に活かしましょう。
第一志望の省庁=第3クールは初日に行く
国家総合職では、官庁訪問のうち第3クールは2日間です。このうち、初日に来ない受験者は、採用は厳しいと言えます。省庁側にしてみれば、第3クールで2日目を選ぶような受験者は認められないと思われても、仕方の無いことかもしれません。
第3クールの初日は、志望順位が高い省庁か、あるいは、感触が良いと感じた省庁を選ぶのか、ここは迷い所です。しかし、どちらの場合も、「初日に行ったから絶対勝つ」という保証は、どこにもありません。
かといって、第3クール2日目に選んだ省庁は、初日より採用の可能性が低くなることは覚悟すべきです。官庁訪問は、事実上、最初は最大3つの官庁を訪問した後、第3クールで1つの官庁に絞る必要があるのです。
採用側からすれば、2日間ある第3クールで、「なぜうちは初日じゃないのか?」「第一志望なら初日に来るのが当然だ」と思うのが一般的です。初日に行ったから採用とは限りませんが、2日目に行くのは可能性が低くなることは覚えておきましょう。