官庁訪問(国総)のコンピテンシー面接と圧迫面接

今回は、国家総合職の官庁訪問における、コンピテンシー面接と圧迫面接を取り上げます。

なお、あくまでも一般論として、公務員試験や民間企業の就活で幅広く行われる、「コンピテンシー面接」や「圧迫面接」について、この記事の最後に説明しています。そもそも「コンピテンシー面接」「圧迫面接」って何?という方は、先に参考になさってください。

国総におけるコンピテンシー面接や圧迫面接とは?

国家総合職の官庁訪問において、コンピテンシー面接や圧迫面接が行われる場合は、志望動機、自己PR、趣味・特技・資格、ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)、性格(長所、短所)、クラブ・サークルなど、どんな質問項目でも、受験者を試すネタとなりえます。

特に国家総合職の官庁訪問では、「上司と意見が対立したときはどうするの?」など、初めから最初の回答で終わること無く、何度も詳細な説明を求めるような、議論を仕掛けてくる質問が、普通に出てきます。

また、最初に質問があって、自分が回答したとして、それに対して「なぜ?」、それに回答すれば「なぜ?」、、、と、2~3回で終わらず、次々と深く掘り下げて、延々と詳しい説明を問われ続けることもあります。

コンピテンシー面接では、最初の回答からどんどん深堀りされて、自分の発言のある点だけ取り上げられたり、より詳しく話すよう促されたり、理由や根拠を提示するよう求めたられたり、自分の発言の矛盾点を突かれたり、、、が何度も行われます。

圧迫面接では、具体的に深く話すよう促されたり、自分の発言を全て叩き潰されたり、回答した受験者が動揺するような、揺さぶりをかけてくる面接官もいます。特に、官庁訪問で何度もしつこく聞かれる質問の定番は、「志望動機」といえます。

そもそも、国家総合職の官庁訪問は、受験者によって面接の回数や内容が異なることが普通です。コンピテンシー面接や圧迫面接に関しても、しつこく何回も遭遇したという方もいれば、厳しい面接には全くといっていいほど遭わなかったという方もおられます。

国総の厳しい面接には冷静さ・論理性と率直さ・柔軟性を

国家総合職の官庁訪問では、議論になりやすい質問を提示して、コンピテンシー面接や圧迫面接を用いることで、その議論を何度も深く掘り下げた時に、その受験者がこれをどうさばくのか、その言動と振る舞いを評価しています。

ある質問に対して回答します。そこで職員の方に反論されます。もしも受験者が、反論に対して、知識や考えがない所で再反論していたら、どこかで必ず綻びやボロが出てきます。うまく切り返せたつもりでいても、自分の言動に矛盾が生じます。

相手は現役エリート官僚で、頭脳も知識も最高レベルの方々です。自分が知っている範囲や自分で考えた問題意識を、冷静かつ論理的にぶつけるのは良いのですが、ムキになって熱くなったり、論破をしてやろうなどとは、決して思わないことです。

とはいえ、これとは逆に、面接官の反論に対して、いちいち「すいませんでした」というのも、いかにも考えが浅く、安直な人間との評価も受けかねません。そこで、「なぜ採用側がこんな質問をするのか?」という原点に立ち返るべきです。

採用側が議論を誘発する質問を(ときには扇情的に)行うのは、受験者が持つ「論理的かつ冷静な思考能力」を試しているからです。しかも、間を空けずに行うことで、その「即応能力」を試しています。

その一方、分からないことは分からないと言えるか、分からないときに教えを請うことができるか、自分の知識や能力を超えている事柄に、何事もごまかすこと無く、正直に申し出ることが出来るかという、「謙虚さ、率直さ、柔軟性」も判断しています。

このため、最初の回答に対して採用側があえて反論してきた場合、もし自分が分かる範囲であれば、冷静かつ論理的に自ら臨んで再反論を行い、一貫してきちんとした根拠を提示し、辻褄の合う主張を行うことは、ちゃんと評価されると思います。

その一方、自分が知っている範囲を超えてまで、何でも再反論するのは、内容次第で「この者は無理を通して失敗するかもしれない」「持論に固執して我が強く、一緒に仕事はしにくい」「うちの省庁では使えない」などと評価されるかもしれません。

また、自分の知識や能力を超えて、その場の思いつきで発言すると、どんどん質問される中で、どこかで必ずボロが出てしまいます。理解できている範囲で発言することは大事ですが、自分の考えや言動に矛盾が無く、一貫性を持つことが重要です。

その一方、本当に知らなかったことや、考えもしなかった反論に対しては、その旨を伝えて「すいません、勉強不足でした」と申し出ることは、率直さや柔軟性が評価されます。さらに、これから勉強する意欲や熱意を添えてアピールすることも重要です。

誤りを誤りと認めることは、どんな人間にとっても難しいものです。何でもかんでもハイハイと謝るのは安直ですが、知ったかぶりで再反論するのも、頑固な印象を与えます。自分の軸はブレないが、柔軟性も併せ持つという評価が、最も理想的です。

典型的な圧迫面接やコンピテンシー面接に直面したら、感情的にムキにならず、「そう来たか」くらいの気持ちで、自分の考えや主張を貫く場合と、こちらが無知や間違いだと明らかで率直に誤りを認める場合を、上手に使い分けましょう。

想定問答を徹底的に準備・整理しよう

国家総合職の官庁訪問において、コンピテンシー面接や圧迫面接であっても、質問に対する回答自体が、採用の評価に影響するのは同じです。国家総合職なら、「この者がうちの省庁で働いた時に、十分に貢献できる人材なのか」を見ています。

当サイトでも、官庁訪問(国家総合職)の自作ノート/想定問答集/メモの活用法で、想定問答集を作る必要性や、作成するにあたってのポイントを説明しています。その上で、コンピテンシー面接や圧迫面接も織り込んで、しっかりと想定して整理することが重要です。

例えば、志望動機を問われたら、自分の回答と、それが志望省庁で働くことと、最終的にどう繋がっているのか、そこまでの論理的な展開をしっかり準備して、いつ問われても、言葉に出来る(アピールできる)ように、整理しておく必要があります。

あるいは、「自分はどんな性格(人物)だと思うか?」という問いに対して、その性格(人物)から、「志望先の省庁で活きてくる」ことを導くまで整理出来ず、単に「こういう性格(人物)」だけで終わるなら、想定問答としては全く役に立ちません。

採用側は、「一緒に仕事をしたいと思える人」「その人を採用することが、うちの省庁にとって有益な人」を探し求めているのであって、「自分を採用することにどんなメリットがあるのか」ということまで考えて準備すべきです。

人物像に関する質問は、単に長所、短所を聞くのではなく、その回答を受けて、それでうちの省庁でどんな能力を活かせるのか?とか、その性格は周囲のひとからどう思われているか?などと、様々な切り口で問い詰めてくることを想定しましょう。

協調性でいうと、親友はどれくらいいるか、どんな友人か、どのようにして仲良くなったか?と聞かれることもありますし、志望の度合いを測るのに、子供の頃の将来の夢は何だったか?、それが今の志望動機とどう繋がるのか?を問うこともあります。

アルバイトを聞かれる場合でも、その仕事内容や、職場における自分の役割、他の社員からどう思われているか、バイトを経験して得たものなど、それが自分の人間形成や志望動機にどう繋がるのかを、深く問われたときに備えて整理すべきです。

さらに、ある政策課題について、「ある政策が必要かどうか」「それに着手するなら、まずどこから取り組むべきか」「ある事業は誰が主体となるべきか」「採算性と公共性のどちらを優先すべきか」などを受けることもあります。

また、例えば、2つの政策を提示され、「どちらを優先すべきか」「それはなぜか」「費用対効果は妥当か」「(後回しにしたほうの政策を優先した場合に比べて)何がどう違うのか」など、初めから議論になるような質問も、数多く問われます、

その一方、院卒で国家総合職を志望する方は、研究内容とその目的、それをうちの省庁でどう活かせるのか、なぜ研究の道を選ばないのか、なぜうちなのかということを、徹底的に聞かれるはずです。

とにかく、「こうです」「こうでした」で終わらずに、その延長線上として、(最終的には)「それが志望先の省庁で何の役に立つのか」まで、どう結びつけて考えるか(どう話すか)、論理的な展開をしっかり準備すべきです。

ここで、そもそもの究極的な目的は、「我が国の役に立つ」「国益にかなう」ことであり、そのためにその省庁が何が出来るか(何をすべきか)、そのために自分が何が出来るか(何をすべきか)、あるいは、その省庁に自分がどんな役に立つ(貢献できる)人物なのか、自分はどういう人間だからその省庁に合っているのか、ということに一貫性をもたせるべきです。

なお、念の為言いますが、国総の官庁訪問で、何度も受ける面接の中で、同様の質問に対して、面接ごとに言うことが違うのも論外ですし、どこかで必ず矛盾が生じます。これを避けるためにも、想定問答をはじめ、事前の準備を徹底しましょう。

また、どんな質問に対しても、自分の回答やその根拠を見直して、良かった所はアップデートを行い、悪かった点は修正することで、次の面接に改善を活かすことです。これを何度も繰り返すことで、より精度の高い評価を得られるはずです。

国総の官庁訪問で厳しい面接なら試されているのかも

国総の官庁訪問なら、採用の可能性がとても高い受験者には、早い時点でその旨が示唆されると思います。そんな方でさえ、一度や二度と言わず、厳しい面接に直面して、自分という人間が試されるかもしれません。

官庁訪問で、何度も厳しい圧迫面接やコンピテンシー面接に遭遇する方は、当落線上にある方だと思います。同様の評価の受験者がたくさんいて、自分もふるいに掛けられているのだと思って、ここは腹をくくるべきでしょう。

高評価でも当落線上でも無い、初めから望みが薄い受験者であれば、そういう機会がゼロとは言わないまでも、そもそも試されることが少ないと思います。あるいは、最初のうちに何度か試された結果、残念な評価を受けたのだと思います。

ここは受験者としても、厳しい面接を乗り越えることが必要です。もしも自分の評価が低かったら、他の就職先や省庁を勧められたり、内定(採用)の感触や自分への関心が無いと感じたり、ダラダラと無意味な面接が続くと感じることがあると思います。

【参考】コンピテンシー面接とは?

コンピテンシー面接とは、その人が志望先で高い成果を出せるかどうかを評価する面接です。従来の面接の評価内容は、「全体的に優秀かどうか」ですが、コンピテンシー面接の評価基準は、「うちで働いた時に」「高い成果を出せるかどうか」です。

コンピテンシー面接と従来の面接は、質問方法も違います。従来の面接が、多角的に選んだ複数の項目を次々質問するのに対し、コンピテンシー面接は、ある質問に対して、受験者が回答すれば、それに対して何度も質問を重ね、どんどん深堀りします。

質問内容に関しても、一般的な面接では、志望動機、自己PR、キャリア観、経験など、1つの項目を聞いたら次の項目へとなるのですが、コンピテンシー面接では、具体的な経験談や意思決定のあり方など、1つの項目を何度も掘り下げて聞かれます。

また、従来の面接は、質問方法が面接官によって異なり、主観的評価のため、評価基準もバラツキが出やすいものです。これに対して、コンピテンシー面接では一般的に、共通マニュアルに基づく質問と評価が行われ、5段階などの評価基準が設けられます。

なお、英語の「competency」(コンピテンシー)は、単なる能力、資格を指す意味もありますが、日本の「コンピテンシー面接」の「コンピテンシー」とは、「高い成果を生み出す者の行動特性」を指すものと言われています。

【参考】圧迫面接とは?

圧迫面接とは、採用側が故意に、威圧的、敵対的、好戦的、否定的な態度で質問や反論を行う面接のことです。圧迫面接には、意地悪な質問・反論、受験者の回答を否定する、受験者に無反応や関心の無い素振りを見せる、執拗な深堀りなどがあります。

圧迫面接の目的は、ストレス耐性や柔軟性を推し量ることだといえます。極めて厳しい面接に対して、ムスッとしたり、しどろもどろになったり、黙り込んだり、中には泣き出す方もいるでしょうが、こうした方は評価が下がります。

圧迫面接では、質問に対する回答も評価対象ですが、それよりもむしろ、受験者が感情的にならず、冷静かつ論理的に対応できるかどうかの態度を重視して評価します。受験者が不快感を示してるとみなされた時点で、評価は下がります。

圧迫面接は、特に数多くの方々と接する機会が多い職業において重視されます。さまざまな方々が、いろいろな要請や要望、主張やクレームを持ち込んできた時に、十分に対応できる能力があるかどうかを見定めます。

公務員においても、毎日接する人々は実にさまざまです。非常に強いストレスがかかる場面も、少なくありません。圧迫面接は、理不尽で厄介な状況や、過剰な要求をわざと課すことで、実社会でもやっていけるかどうか試すものといえます。