家庭裁判所調査官補は行政権から独立した国家公務員(国家特別職)であり、司法権に資する福祉系・心理系公務員といえます。
家庭裁判所調査官補・総合職大卒の採用試験は、平成27年度からの制度改正が行われました。改正点は以下の通りです。
- 試験名称の変更:裁判所職員総合職・人間科学区分→裁判所職員総合職・家庭裁判所調査官補
- 家庭裁判所調査官補・総合職の1次試験専門試験の変更
- 試験地の拡大
試験名称の変更は、従来の裁判所職員採用試験の「法律・経済区分」「人間科学区分」という試験区分を、「裁判所事務官」「家庭裁判所調査官補」という名称に改め、職種と試験区分を同じ名称にした分かりやすい改正といえます。
ただし、試験の傾向と対策や過去問演習などを進める場合、「裁判所職員総合職・人間科学区分」(大卒)のままのものが多いため、この旧名称を覚えておくとよいでしょう。
また、1次試験の専門試験の変更に関しては、解答数が3題となったこと(従来は6題)、試験本番に15科目の問題を見て選べるようになったこと、解答字数が一律400文字以内になったこと(従来は問題ごとに文字数の指定があった)が改正点です。
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家庭裁判所調査官補・総合職大卒の試験内容
家庭裁判所調査官補・総合職大卒における試験内容と、全体を15とした場合の配点比率(「2/15」などと表記)が、平成27年度受験案内で告知されています。
1次試験は次のとおりです。
- 基礎能力試験(多枝選択式)40題3時間 2/15
- 知能分野 27題
- 知識分野 13題
- 専門試験(記述式)3題1時間30分 3/15
- 次の15科目のうち選択する3科目(3題)
- 【人間関係諸科学科目】発達心理学、心理学概論、臨床心理学、社会心理学、社会学概論、現代社会論、社会調査法、社会福祉学概論、社会福祉援助技術、地域福祉論、教育学概論、教育心理学、教育社会学
- 【法律学科目】憲法、民法、刑法
- ※人間関係諸科学科目から最低1科目を選ぶこと
- ※解答字数は一律400字以内と告知されています
2次試験は以下の通りです。
- 専門試験(記述式)2題2時間 3/15
- 次の13科目(15題)のうち選択する2科目(2題)
- 臨床心理学、発達心理学、社会心理学、家族社会学、社会病理学、社会福祉援助技術、児童福祉論、高齢者福祉論、教育方法学、教育心理学、教育社会学 各1題
- 民法、刑法 各2題
- ※児童福祉論と高齢者福祉論の同時選択不可
- ※民法のみ2題、刑法のみ2題の選択不可
- 政策論文試験(記述式)1題1時間30分 1/15
- 組織運営上の課題を理解し、解決策を企画立案する能力などについての筆記試験
- 人物試験 6/15
- 集団討論および個別面接
家庭裁判所調査官補・総合職は、院卒者区分・大卒区分で共通問題だと受験案内で告知されています。なお、憲法、民法、刑法の問題は、1次試験・2次試験ともに、裁判所事務官とは異なります。
家庭裁判所調査官補・総合職大卒の試験対策
ここで、家庭裁判所調査官補・総合職大卒の試験対策を取り上げます。
家庭裁判所調査官補・総合職の基礎能力試験
基礎能力試験(教養試験)は40問必須解答です。一般知能(知能分野)27問、知識分野(一般知識)13問だと告知されています。
- 数的処理(判断推理、数的推理、図形、空間)→数的推理10、判断推理4出ます。基礎能力試験の30%以上の出題数を占めており、試験勉強の初めから取り組むべき最重要科目です。
- 文章理解→英文7、現代文4出ます。古文は出ません。文章理解も基礎能力試験(教養試験)の3割弱を占める重要科目です。
- 資料解釈→2問出ます。コツコツ勉強すれば点に繋がる学習効果の高い科目です。
- 社会科学(時事対策含む)→時事3、法律、政治、経済から1づつ出ます。家裁の知識分野では最も出題数が多い重要科目です。
- 人文科学→日本史、世界史、地理、思想が1問づつ出ます。ここもしっかり勉強すべきですし、家裁では取りこぼす受験生が少ない分野でもあります。
- 自然科学→化学、地学、物理が1問づつ出ます。家裁では優先度は低いものの、基礎・典型問題の勉強だけでも通用する分野です。
基礎能力試験(教養試験)は国家総合職レベルを見据えた大卒公務員の試験勉強が必要です。使用する教材は、一般的な公務員試験向けの教材で十分通用します。
大卒公務員の教養試験(基礎能力試験)は、区分(職種)を問わず共通の試験内容が一般的です。教養試験対策(大卒)の参考書を一通り知りたい方には、まず先に大卒公務員の教養試験(基礎能力試験)をおすすめします。
家庭裁判所調査官補・総合職の専門試験
専門試験のうち心理系科目は、まずは心理学全般の参考書で心理学の全般的な学習をしっかり固めることをおすすめします。その上で、以下の記事を参考に科目別対策を行っていきましょう。
- 心理学概論→心理学全般の参考書で対応できます。
- 臨床心理学
- 社会心理学
- 社会学概論→社会学(福祉系・心理系向け)で対応できます。
- 社会福祉学概論、社会福祉援助技術、地域福祉論→福祉系公務員:専門試験の参考書
- 教育学概論→教育学/教育学概論
- 教育心理学
- 憲法
- 民法→民法(専門記述対策/国総レベル)(基礎固め・入門書は民法の参考書)
- 刑法
福祉系科目は、1次試験で社会福祉学概論、社会福祉援助技術、地域福祉論、2次試験で社会福祉援助技術、児童福祉論、高齢者福祉論があります。これらは福祉系公務員:専門試験の参考書で対応できます。
現代社会論および2次試験の家族社会学、社会病理学、教育方法学についても、大学で使用・指定されたテキストを用いて、各自が独自に学習することで対応できます。
憲法は基本的な論点からの一行問題・説明問題が続いています。民法や刑法は非常に高度な事例問題・論述問題が出ます。民法は、民法(専門記述対策/国総レベル)に取り組みましょう。