児童心理司とは

児童心理司(心理判定員)とは、心理学の専門的な学識に基づき、心理判定の業務に関わる職員のことです。

心理判定の専門職員は、児童相談所では「児童心理司」、その他の施設(福祉事務所、身体障害者更生相談所、知的障害者更生相談所、発達障害相談支援センター、障害者支援施設、障害児入所施設など)では、「心理判定員」と呼びます。

児童心理司も、従来は心理判定員と呼ばれていました。ただし、厚生労働省の児童相談所運営指針の改正に伴い、2005年(平成17年)からは、児童相談所(児相)の心理判定員に対しては、「児童心理司」の呼称が使われています。

児童心理司の仕事内容は?

児童心理司は、心理検査(知能検査、人格検査)、心理面接・面談、行動観察などを通じて、心理判定(心理診断)・心理アセスメントを行います。また、判定会議への資料作成・提出や、判定会議に出席して意見を述べることがあります。

(判定会議とは、児童福祉施設への入所措置、里親や指定医療機関への委託措置、措置による指導や継続指導、それらの事例の再検討、その他必要な事例に関して、医学・心理・福祉の専門職員が参加して行う、判定を行うための会議です)

その一方、学校や関係機関との連絡調整・技術支援・助言など、心理の専門家としての業務に関わります。医師や児童福祉司などとチームを組み、心のケア、レクリエーション、カウンセリングなど、指導と助言を通じた、心理療法を担うこともあります。

児童心理司は、家庭、学校、一時保護所、社会福祉施設などを訪問する機会もありますし、虐待、非行、しつけ、療育手帳などに関する相談にも応じます。心理学的な視点に立ちながら、様々な職種と連携し、児童と保護者に関する悩みに対応します。

アウトリーチと児童心理司

児童相談所は、アウトリーチ支援を行います。アウトリーチとは、行政機関などが、必要をする人に必要な支援を行うことです。福祉分野においては、対象となる方のところに直接出向いて、必要なニーズを探り、心理的なケアや情報提供などを行います。

アウトリーチ支援において、児童心理司は、当事者の能力、関係性、認知特徴などをアセスメント、ケアしながら、当事者との関係を築き、潜在するニーズを引き出します。そして、児童福祉司と協働し、関係機関への助言・指導に関わります。

児童心理司と児童福祉司との違い

児童心理司と児童福祉司は、よく似た言葉ですし、ともに協力し合って(協働)、個々のケースに関わります。ただし、その職務には、明らかな違いがあります。

児童心理司は、心理判定の専門家です。心理アセスメントや心理ケアを行い、心理福祉司や関係機関に対して、専門的な見地から、連絡調整・助言・技術的な指導を行います。認知的な特徴や心理的な側面から、問題解決に関与します。

ちなみに、児童相談所運営指針において、児童相談所では、児童心理司のほかに、心理療法担当職員を配置することが規定されています。しかし実際には、児童心理司が、心理療法(心のケア)を兼務することも、多いといえます。

児童福祉司は、児童福祉の専門家です。福祉相談への対応、実態調査、社会診断などを行い、さまざまな相談の進行状況を管理します。

児童相談所では、心理系公務員の児童心理司と、福祉系公務員の児童福祉司が、それぞれの観点から調査・支援・指導を行います。両者が連携して、児童の問題に取り組みます。

児童心理司になるには

児童心理司になるには、「(児童福祉法が定める)任用資格要件を満たす」「公務員試験に合格する」必要があります。この2点を満たして初めて、児童心理司に就くことができます。

児童心理司は、任用資格です。任用資格とは、その職に就いたときに、初めて効力を有する資格です。また、その職に就いている間にのみ、効力を発揮する資格と言えます。

児童心理司の任用資格要件は、大きく分けると、以下の各点です。

  1. 大学または大学院で、心理学を専攻して卒業する。
  2. 医師であり、精神保健に関して学識経験を有する者。
  3. 児童心理司の養成機関を卒業する。

児童心理司の養成機関に関しては、国立武蔵野学院附属児童自立支援専門員養成所(受験資格が厳しめ)と国立障害者リハビリテーションセンター学院 児童指導員科(学費が高額)しかなく、ともに埼玉にあるため、一般的な取得方法とはいえません。

一般的には、児童心理司の任用資格要件を取るには、大学や大学院で、心理学を専攻して卒業することが、現実的だといえます。

院卒/臨床心理士が有利?学部卒でも採用される?

児童心理司の採用試験は、大学院修了者、または、臨床心理士など心理系資格取得者が有利と言われます。ただし、児童心理司は、全国的に大幅な増員が進んでいます。学部卒の方を採用する可能性が大きい、規模の大きな自治体の受験をおすすめします。

首都圏や関西など、都市部を中心に、児童心理司でも、学部卒を採用している自治体はたくさんあります。学部卒なら、児童心理司の採用枠が1~2名程度の自治体だと厳しいでしょうが、なるべく採用人数が多い自治体の受験をおすすめします。

心理学の非専攻職員もいる?

児童心理司も、心理判定員だった時代には、(心理学を専攻した経験が無い)一般事務・行政職の公務員からも、研修を受けた上で、心理判定に任用されることが一般的でした。今でも、地方の自治体を中心に、そう珍しいことではありません。

ただし現在では、大学や大学院で心理学を専攻した方で、心理職、あるいは、心理判定の専門職員として採用され、児童心理職(児童心理司)として任用されることが、都市部の自治体を中心に、一般的になってきています。

児童心理司(心理判定員)の採用試験

児童心理司を独立した採用枠として採用試験を行う自治体の場合、受験資格は地方自治体によって異なります。早期から、公式サイトや直近の募集要項(受験案内)など、受験できそうな自治体の採用情報を、集めていきましょう。

児童心理司(心理判定員)の採用試験ですが、択一式に関しては、「教養試験・専門試験とも課す」「教養・専門の一方だけ課す」「専門試験が記述式」「教養・専門とも課さない」など、自治体によって異なります。

教養試験(基礎能力試験)は、どの区分・職種でも、課される試験内容が共通であることが、一般的です。このため、児童心理司の方も、大卒程度の教養試験(基礎能力試験)の試験対策は、大卒公務員の教養試験(基礎能力試験)を是非とも参考になさってください。

その一方、論文(作文)試験、人物試験(面接試験)、口述考査や実技試験(ロールプレイング形式)、適性検査または適性試験など、児童心理司に関しては、人物重視の試験種目を課す自治体が多いといえます。