今回は外務省専門職員の時事論文試験について、実際の試験問題、出題の傾向と対策、試験対策に役立つ参考書まで、一括して取り上げます。
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この記事(ページ)の目次です。
外務省専門職員の時事論文試験の試験問題
外務省専門職員の時事論文試験は、新聞の社説・論説記事(やや長めです)を引用した上で、(これを読んで)「~について、あなたの考えを述べよ」という1問必須解答の課題が続いています。
「~について」の部分は、直近に出題された実際の課題は、以下の通りです。
(引用記事:「湾岸戦争30年 安保環境の変化を直視したい」読売新聞2021年1月18日)
この30年の国際情勢の変化に触れつつ、日本が果たし得る役割とその限界について、あなたの考えを述べよ
(引用記事:「米主催サミット 民主主義の基盤強化が急務だ」読売新聞2021年12月12日)
強権主義国家の数が民主主義国家より上回っている背景に触れた上で、自由で開かれた国際秩序の維持に向け国際社会がとるべき方途及び日本の果たすべき役割について、あなたの考えを述べよ
(引用記事:「はやぶさ2の着陸成功 宇宙探査の技術力示した」毎日新聞2019年2月23日)
日本の存在感の向上という観点における日本の技術力の可能性と限界について、あなたの考えを述べよ
(引用記事:「ふるさと納税は原点に戻れ」日経新聞2018年9月20日)
日本の寄付文化について肯定的・否定的側面に触れつつ、あなたの考えを述べよ
(引用記事:「働き方改革法案 誰のための改革なのか」共同通信・堤秀司 佐賀新聞LiVE 2018年2月14日)
働き方改革について、あなたの考えを述べよ
外務省専門職員の時事論文試験の傾向
外専の時事論文は、引用される新聞記事自体は少し長めですが、ものすごく難解で複雑な論述を要求するものではなく、地方上級などで見られるような、大卒程度の公務員試験のなかではごく標準的な難易度の論文試験だといえます。
もちろん、外務省専門職員の時事論文ですから、地方公務員とは異なり、国家的・社会的な課題が中心です。そして、国家公務員としての、グローバルな視点の論述が要求されているといえます。
特に、外専の時事論文試験では、少し長めの社説・論説記事からの引用があります。この文章を単になぞったり真似事のような解答をするのではなく、この文章の要点をきちんと拾って触れた上で、自らの論述に反映させることが重要です。
また、頻出課題は、「外交・安全保障・国際情勢・国際秩序・国際貢献」「社会的・時事的な国家的課題」のどちらかだと言えます。どの場合も、「日本の果たすべき役割」や日本の現状など、「我が国に関する自分の考え方が問われる」点に要注意です。
さらに、「社会的・時事的な国家的課題」に関しては、科学技術、ふるさと納税と寄付文化、働き方改革など、非常に幅広い分野から出題されます。この他にも、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)、東京五輪などの出題例があります。
外務省専門職員の時事論文試験の対策
外務省専門職員の時事論文は、上記通り試験問題の傾向を踏まえると、「外交・安全保障・国際情勢・国際秩序・国際貢献」「社会的・時事的な国家的課題」のどちらにも取り組む必要性があるといえます。
「外交・安全保障・国際情勢・国際秩序・国際貢献」
このうち、「外交・安全保障・国際情勢・国際秩序・国際貢献」は、国際関係論や外交・安保の専門記述試験に臨むつもりで取り組むべきでしょう。まずは各自で、外交・安保・国際関係に関する参考書をしっかり読み込み、論点整理を行いましょう。
もちろん、外務省の公式サイトや公式の刊行物・パンフレット等は一通り読み込むとともに、外務省に関わる政府の重要な公式発表は、随時チェックしましょう。特に、基本的な職務内容や現在取り組んでいる主要な出来事などは、必ず確認しましょう。
特に、「外務省政策会議」「日本の軍縮・不拡散外交」「外交政策への提言」は、書籍として刊行されておらず、外務省の公式サイトに掲載されているため、必ず読んでおきましょう。
外務省の取り組みを知る上で最も重要なのは、「外交青書」と「開発協力白書」です。これらは毎年新年度版が刊行されており、外務省の外交政策・国際貢献や直近の国際情勢を理解できる一次資料として、必ず入手したほうが良いと思います。
これらも外務省の公式サイトで公開されていますが、受験対策として、紙媒体の購入をおすすめします。「外交青書」と「開発協力白書」は、外専でどこから出題されてもおかしくない内容ばかりですし、要約/概要版で済ませず、必ず入手すべきでしょう。
ここまでは外務省専門職員の時事論文試験のうち、「外交・安全保障・国際情勢・国際秩序・国際貢献」に関する課題対策を取り上げました。その一方、「社会的・時事的な国家的課題」に関しては、以下に述べる対策が欠かせません。
論文が得意ではない/社会的・時事的課題の対策
一方、外務省専門職員の時事論文試験では、社会的・時事的な課題が出題されることもあります。この場合、その出題範囲は非常に幅広く、あらゆるテーマからの課題を考慮すべきでしょう。
こういった課題の場合も、少し長めの新聞記事の引用を踏まえつつ、我が国の現状やあり方について、自らの考えを論理的に展開する対策が必要です。
論文試験 頻出テーマのまとめ方
「論文試験 頻出テーマのまとめ方」は、地上・国一・市役所大卒向けに書かれたものですが、外務省専門職員をはじめ、防衛省専門職員や理系公務員(技術職)、福祉系・心理系など、大卒程度の公務員試験なら幅広くおすすめできる、人気の定番参考書です。
本書は、毎年改訂版が出ており、冒頭の特集項目「最新のトピック」と約20のテーマで構成されています。毎年見直される収録テーマも、情報化、少子化・高齢化、行政の役割、災害対策、公務員像、国際化、教育問題、科学技術、環境問題など、公務員試験の論文試験に必要な課題を十分にカバーしています。
各テーマでは、インプット部分の「知識と理解」と、実際の試験問題とその研究にあたる「出題例と研究」という流れで、テーマごとの知識を十分に頭に入れた上で、論点を深く詳しく叩き込むことができます。
「論文試験 頻出テーマのまとめ方」の掲載問題は、地上・国一・市役所大卒が中心です。とはいえ、外務省専門職員の時事論文試験で、一般的な社会的・時事的課題が出た場合に備えることが十分可能な参考書といえます。
もちろん、本書だけで足りない部分は、特に外専の方は、地域的・局地的な視点よりも、国全体の視点で政治・経済、社会的課題、文化・科学技術を中心に、ニュースを追っていくことを意識してください。
この記事で先に述べた通り、外専の時事論文では、科学技術、ふるさと納税と寄付文化、働き方改革、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)、東京五輪など、社会・経済・文化・科学技術といった、非常に幅広い出題例があります。
外専の方が「論文試験 頻出テーマのまとめ方」を使う場合も、全てのテーマに取り組むことが望ましいのですが、地域のローカルなテーマよりも、社会的な国家的課題、文化・科学技術のテーマから優先的に取り組んでもよいかと思います。
特に本書は、難易度的には外専で使うことも適切ですが、地上・国一・市役所大卒向けに書かれた参考書だという点は留意しましょう。これは、本書の使用の有無に関わりないことですが、常に国家的な視点を忘れずに論述することには注意しましょう。
外専の時事論文は、政治・経済、社会問題から、科学技術や文化・芸術まで幅広い論点を押さえる一方、地方公務員では無く国家公務員の外専ですから、我が国の現状と課題や取り組みについて、国家的な視点で論点を押さえることを忘れないでください。
ところで、「論文試験 頻出テーマのまとめ方」は、地上・国一・市役所大卒の方には、要求する知識や答案例がとても高度な参考書でもあります。外専の方にも、合格を目指すには、やや厳密で深入りしすぎとも思います。
その一方、本書は毎年改訂されており、的確でタイムリーな論点と頻出課題を網羅しており、他には変えられない良書といえます。このため、外専の方が使う場合も、あまり些末な記述にこだわらず、合格のためにはこういう方向で書くんだという参考程度で良いと思います。
外専の方が「論文試験 頻出テーマのまとめ方」を使う場合も、細部に固執せず、左側に書かれたコメントや強調表現を参考に、効率よく要点をとらえて読み進めれば、重要論点を無駄なく押さえることができる、優れた参考書としておすすめできます。
1週間で書ける!! 公務員合格作文
外専の方の中にも、そもそも論文(作文)試験が苦手だとか、文章の組み立て方・書き方がわからないという方もおられるかもしれません。そうした方には、「1週間で書ける!! 公務員合格作文」をおすすめします。
外専の時事論文対策で、知識のインプットや論点整理・実際の答案練習が目的なら、この記事で先ほどまで述べた内容に取り組むべきですが、本書はとにかく「文章・論文の書き方」に特化した参考書といえます。
「1週間で書ける!! 公務員合格作文」は、文字通り1週間では済まない方も出てくると思います。直前期でも使える参考書ですが、特に文章や論文(作文)が不得手という方は、取り組むなら早いほうが良いと思います。
この参考書は、第1編で時間配分、字数制限、分量やキーワード、ワンセンテンス・ワンテーマの原則、接続詞の使い方など論文試験の「形式面」、第2編で全体像を把握して先に定義づけを行い、自分の主張を問題点と結びつける、「内容面」からの実際の書き方を伝授してくれます。
第3編は、格差社会、地球温暖化、災害対策、男女共同参画社会、ボランティア、規制緩和、産業廃棄物など、20以上のテーマを取り上げ、問題ごとに基礎知識と文章の組み立て方、解答例を掲載しています。
第3編については、基礎知識がやや物足りず、先述通り、インプットや論点整理目的なら他の媒体や参考書を使うべきです。とはいえ、第1~2編のノウハウを踏まえて実践的な「書き方」の習得を目指す演習部分として優れていると思います。
特に「1週間で書ける!! 公務員合格作文」は、あえて100点満点の答案を目指すのではなく、受験生なら誰でも到達できる「合格レベル」の解答例となっています。これなら無理の無い、現実的な習得が可能だと思います。
本書は、巻末に国家一般職大卒(旧・国家2種)や地方自治体の問題も掲載しています。とはいえ、やはり外専の方が使う場合は、第1~3編がメインになるかと思います。
「1週間で書ける!! 公務員合格作文」は、超基礎から本試験レベルまでの内容ですし、あまりに当然すぎて、かえって無駄に感じる方もおられるかもしれません。しかし、特に論文が苦手な方であれば、全くの基本から本試験レベルまで「受かる答案の書き方」を学べる良書としておすすめです。
外務省専門職員の時事論文試験の教養試験(基礎能力試験)対策は
大卒公務員の教養試験(基礎能力試験)は、区分(職種)を問わず共通の試験内容が一般的です。教養試験対策(大卒)の参考書を一通り知りたい方には、まず先に大卒公務員の教養試験(基礎能力試験)をおすすめします。