今回は、地方公務員の技術職(大卒程度)を取り上げます。ここでは、都道府県、政令指定都市(政令市)、東京都特別区(東京23区)、市役所、町村役場における、技術系区分の採用試験を対象とします。
(政令指定都市とは、札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市、相模原市、新潟市、静岡市、浜松市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、岡山市、広島市、北九州市、福岡市、熊本市の20市です)
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地方公務員の技術職の区分
地方公務員の技術職では、土木、建築、機械、電気、電子、情報(デジタル)、化学、物理、農業(農学)、農業土木、林業(林学)、畜産、水産、環境などの区分(職種)ごとに採用試験が実施されます。
ただし、技術系区分の場合、自治体によって、分類の仕方、区分の名称、募集を行う区分が違います。自治体によっては、採用自体が無い区分がありますし、同じ区分でも年度によって募集を行わない場合があります。
地方公務員の技術職の試験日程
地方公務員(大卒程度)の試験日程は、技術職の場合も、地方上級(都道府県、政令指定都市、東京都特別区)と、(政令市以外の)一般的な市役所・町村役場に分けられます。
地方上級は、全国的に1次試験の集中実施日(6月第4日曜日)がありますが、北海道、東京都、東京都特別区、大阪府、大阪市など、独自に別日程で実施する自治体もあります。
一般の市町村では、地方上級の集中実施日と同日(A日程)、7月第2日曜日(B日程)、9月第3日曜日(C日程)、10月第3日曜日(D日程)と呼ばれる、全国的に1次試験の集中実施日がいくつか見られます。
一般に、県庁所在地や中核市など、規模の大きな市ほど、多くの区分で採用を行い、A~B日程など、早い日程で実施する傾向があります。その一方、全国的に最も多くの市役所が集中するのがC日程です。D日程は、他の日程に比べて、さほど多くありません。
なお、自治体の中には、こうした集中実施日とは別に、独自日程で実施するところもあります。また、公務員試験は、日程さえ重ならなければ、いくつでも併願受験が可能です。
このため、志望先や併願候補の自治体に関して、公式サイトや刊行物などで、過去の実施実績を確認し、受験年度の受験案内(募集要項)が発表されたら、早めに入手してチェックしましょう。
地方公務員の技術職の試験内容
地方公務員の技術職の試験種目は、教養試験(基礎能力試験)、専門試験、論文(作文)試験、面接試験があります。
一般的に、地方公務員では、1次試験で筆記、2次試験で面接を課し、1次試験合格者だけが2次試験に進み、2次試験合格者=最終合格者が採用されるという流れが一般的です。これは、技術職の場合も同じです。
ただし、地方公務員の採用試験は、自治体ごとに異なります。自治体によっては、こうした一般的な流れとは異なるところもあります。各自が志望する自治体の試験情報は、こまめにチェックして、公式情報をしっかり確認しましょう。
地方公務員の技術職の教養試験
教養試験(基礎能力試験)は、択一式(五肢択一式)で行い、一部の自治体や区分を除き、区分を問わず、共通の試験内容を課すことが一般的です。
このため、教養試験は、理系公務員(技術職)の方でも、行政系・事務系や福祉系・心理系など他の区分と同じように、標準的な大卒程度公務員試験の試験勉強を行えば、十分に対応できます。
大卒公務員の教養試験(基礎能力試験)は、区分(職種)を問わず共通の試験内容が一般的です。教養試験対策(大卒)の参考書を一通り知りたい方には、まず先に大卒公務員の教養試験(基礎能力試験)をおすすめします。
教養試験の科目別出題数に関しては、教養試験の科目別出題数(大卒)を参考になさってください。
地方公務員の技術職の専門試験
専門試験は、区分によって試験内容が異なる試験種目です。択一式で課すことが一般的ですが、自治体の中には、記述式で課すところもあります。択一式と記述式の両方を行う自治体も、ごく一部ですが存在します。
専門試験は、例えば土木区分なら、ご自身が大学などで研究テーマに挙げた分野に限らず、土木系学科で一通り学ぶ内容を、幅広く課されることに留意してください。
また、専門試験では、いわゆる工学系の区分(土木、建築、機械、電気、電子、情報・デジタルなど)を中心に、「工学の基礎」(「工学に関する基礎」、あるいは、「数学」「物理」など)という科目が課されます。
工学の基礎とは、数学や物理(区分によっては化学も)の高校~大学教養レベルの問題です。工学の基礎は土木、電気(設備)、機械(設備)、建築では40問中10問、化学区分では7問という重要科目です。
その一方、農学(農業)、林学(林業)、水産などでは、工学の基礎が課されることは、ほとんどありません。
こうした、理系公務員(技術職)に特有な試験科目に関しては、理系公務員(技術職)の試験科目で解説していますので、参考になさってください。
専門試験の問題数は?
技術系区分の専門試験は、地方上級の場合、択一式で40問・全問解答制が最も一般的な基本形です。市役所や町村役場の場合も、40問・全問解答制が一般的で、地方上級に準じた試験傾向を示します。
その一方、自治体の中には、総問題数や解答数を増やしたり、選択解答制を導入している自治体もあります。また、技術系区分では、専門試験で記述式を課す自治体も少なくありません。なかには択一式が30問など、総問題数を減らす自治体もあります。
技術系区分の場合、同日実施の自治体どうしでは、全国的に共通問題が幅広く出題されています。
地方公務員の技術職の科目別出題数(専門試験)
ここで、地方公務員の主要な技術系区分と、択一式の場合の専門試験の一般的な基本形を取り上げます(40問・全問解答制の場合)。実際に採用される区分、各区分の分類の仕方、区分の名称などは、自治体によって異なります。
これは全国的に幅広く見られる、最も一般的な出題パターンです。過年度の実施実績に基づいた参考情報であり、志望先の自治体によっては、これと異なることがある点に留意してください。
- 土木→数学・物理10、応用力学6、水理学6、土質工学4、測量2、都市計画2、土木計画6、材料・施工4
- 農業土木→数学3、応用力学3、水理学4、測量2、土壌物理2、農業水利・土地改良・農村環境整備14、農業土木構造物5、材料・施工2、農業機械2、農学一般3
- 土木関係は、総合土木区分などの名称で、土木と農業土木を一括した区分として募集する自治体もあります(その場合は、選択解答制を導入する自治体が多く見られます)。
- 建築→数学・物理10、構造力学5、材料学2、環境原論4、建築史2、建築構造4、建築計画5、都市計画3、建築設備2、建築施工3
- 電気、電気・電子工学→数学・物理10、電磁気学・電気回路10、電気計測・制御4、電気機器・電力工学6、電子工学6、情報・通信工学4
- 機械→数学・物理10、材料力学4、流体力学4、熱力学4、電気工学2、機械力学・制御4、機械設計6、機械材料3、機械工作3
- 電気または電気・電子工学区分、機械区分については、設備区分という名称を用いる自治体もあります。
- 化学、総合化学→数学・物理7、物理化学9、分析化学3、無機化学・無機工業化学6、有機化学・有機工業化学9、化学工学6
- 農芸化学→物理化学5、分析化学2、無機化学3、有機化学5、生物化学7、土壌学・植物栄養学6、食品科学6、応用微生物学6
- 農学、農業→栽培学汎論5、作物学5、園芸学5、育種遺伝学5、植物病理学4、昆虫学4、土壌肥料学4、植物生理学4、畜産一般2、農業経済一般2
- 畜産→家畜育種学5、家畜繁殖学4、家畜生理学4、家畜飼養学4、家畜栄養学4、飼料学3、家畜管理学6、畜産物利用学5、畜産経営一般5
- 林学、林業→森林政策・森林経営学13、造林学(森林生態学、森林保護学を含む)12、林業工学4、林産一般5、砂防工学6
- 水産→水産事情・水産経済・水産法規8、水産環境科学5、水産生物学5、水産資源学4、漁業学4、増養殖学4、水産化学5、水産利用学5
- 環境→物理5、化学5、環境概論5、廃棄物・資源循環工学5、大気・地球環境学5、水・土壌環境学5、環境生物・生態学5、環境衛生学5
地方公務員の技術職の難易度は?
技術職の難易度に関して言うと、地方上級は国家一般職大卒とともに、標準的な大卒公務員試験の出題内容です。市役所は、地方上級と同等かやや易しい問題だといえます。
技術職は、毎年似たような問題が頻繁に使われており、大学での知識を前提にすれば、過去問メインの学習で十分対応できます。公務員試験は、一定の安定した人材の確保が目的であるため、難易度や頻出項目が、年度によって大きく変わることが無いといえます。
当サイトでは、理系公務員(技術職)であっても、独学で十分に対応できると考えています。理系公務員(技術職)の参考書をお探しの方は、理系公務員の参考書で一括して取り上げています。