公務員試験ガイド

心理学全般の参考書

今回は、心理学全般の参考書を取り上げます。今回の記事は、一般心理学/心理学/心理学概論などの名称で課される心理学の基礎領域をカバーするとともに、応用心理学の各科目の対策も取り上げています。

ここでは、国家総合職(旧・国家1種)の人間科学区分、家庭裁判所調査官補・総合職、地方上級(都道府県、政令指定都市、東京都特別区)、市役所、法務省専門職員・人間科学区分(矯正心理専門職/法務教官/保護観察官)に対応します。

また、心理系公務員の択一式・記述式ともに対応する参考書を取り上げます(以下のリンクは、それぞれの名称によるアマゾン(Amazon.co.jp)の検索結果ページを含みます)。

心理学全般の参考書:過去問演習のメイン教材

まず、試験問題の問題演習や総チェックを通じて、公務員試験に見合った試験対策を行う過去問ベースの教材を2つ取り上げます。

試験にでる心理学

試験にでる心理学 北大路書房」シリーズ(一般心理学、臨床心理学、社会心理学、心理測定・統計の4分冊)は、「シケシン」の通称で知られる人気の定番教材です。

本書は、国家総合職(旧・国家1種)、家庭裁判所調査官補・総合職大卒、地方上級(都道府県、政令指定都市、東京都特別区)、市役所、その他心理系公務員の過去問を出来る限り収録し、これに類題を加味して解答・解説が加えられた参考書です。

シケシンは分野ごとの解説にバラつきがあったり、掲載されていない領域があるといった点も見られます。このため、本書だけで心理系公務員をすべて完結できるわけではないことに留意が必要です。

とはいえ、シケシンはとても網羅性が高く、択一式・記述式のどちらの対策にも使える良書です。また、心理系公務員に必要な参考書を用途別に詳細に取り上げたブックリスト(ブックガイド)があります。

こうした点から、シケシンは、独学で心理系公務員を目指す方には出題傾向を把握できる貴重な参考材料となりますし、過去問演習の必須教材として十分おすすめできます。ブックリストを参考にすれば、足りない部分の補充も可能です。

試験にでる心理学 北大路書房」シリーズは、心理系公務員の過去問を非常に豊富に掲載している点が最大のメリットといえます。これだけの過去問に取り組める市販の教材は他にありません。足りない部分は後述する教材で補充すれば、独学でも心理系公務員にしっかり備えることが可能です。

公務員福祉職・心理職の合格知識

また、「公務員福祉職・心理職の合格知識」は、○×の一問一答集と若干の記述式対策で構成され、A5判サイズ・約270ページというコンパクトに凝縮された参考書です。本書は長く改訂されておらず、法改正や各種統計など内容が非常に古いため、各自で書き込むなり訂正・補完する必要はあります。

とはいえ、福祉系・心理系の公務員に特化した唯一の市販教材であり、国総の人間科学区分、家裁補・総合職大卒、矯正心理専門職/法務教官/保護観察官、地方上級や地方自治体(市町村)の福祉職・心理職を想定した要点整理型参考書です。それに加え、ほんの少しですが、記述式対策を掲載した貴重な教材です。

本書は福祉系・心理系公務員試験の傾向と相性が非常に良く、「どんな問題がどのように出るか」を試験全体から俯瞰的に把握するのに優れた良書といえます。本書だけでは全く足りず、あくまでも入門書・導入本と割り切るべきですが、全ての受験生の羅針盤となる優れた参考書としておすすめします。

また、「合格知識」は、記述式試験の過去問を掲載している点が非常に大きなメリットです。これは受験予備校に通う方以外ではなかなか入手出来ず、福祉系・心理系公務員を独学で目指す方なら、本書を出題傾向を知る判断材料として使うことは、おおいにおすすめできます。

公務員福祉職・心理職の合格知識」は手始めの導入本や直前期の要点整理として取り組み、択一式の基礎~標準的な範囲を一通りチェックしたり、記述式の過去問を知るだけでもおすすめできます。本格的な学習は他書を使う一方で、本書は試験勉強を通じて繰り返し攻略し、頻出分野を知る目安に使うことで、大きな学習効果が得られる良書と言えます。

2冊を上手に併用しよう

心理系公務員の専門試験で、過去問をベースにした教材はこの2つが定番といえます。過去問を使った貴重な問題演習が豊富に出来る「試験にでる心理学 北大路書房」シリーズ、随時チェックする出題分野の参考材料や記述式対策に使える「公務員福祉職・心理職の合格知識」を「過去問演習のメイン教材」と位置づけて上手に併用し、独学でも心理系公務員を乗り切ることは十分可能です。

心理学全般の参考書:インプット用途

ここでは、「インプット用途の参考書」を取り上げます。これは、過去問ベースの教材と併用して、よく出ている頻出事項から優先的に読み込み、心理学公務員に必要な知識をインプット教材です。

心理学 (New Liberal Arts Selection)

まず、「心理学 (New Liberal Arts Selection) 有斐閣」は、一般心理学や心理学概論と呼ばれる、基礎心理学の全般を網羅した定番参考書としておすすめです。

本書は、心理学の基礎領域を網羅しており、国総、家裁補、矯正心理専門職の方には基礎固め・択一式の参考書として、法務教官、保護観察官、地方公務員の方には一般心理学や基礎心理学の参考書として十分おすすめできます。

もちろん、本書は基礎心理学のテキストであり、国総など応用心理学の諸領域が課される試験であれば、応用領域の各科目の対策を行う必要があります。これについては後述します。

このテキストは約700ページのボリュームであり、公務員試験で出ることの無い項目も含まれます。一から順序よく読み進めるよりも、先述の過去問ベースの教材を取り組んで、理解不足だったり何度も出てくるような項目に絞って読み込んだほうが効率的といえます。

心理学 (New Liberal Arts Selection) 有斐閣」は公務員試験を考慮するなら、心理測定については後述通り他の参考書で補充すべきですが、一般心理学や基礎心理学といった心理学の基礎部分を一通り学べる初めてのテキストとしておすすめします。

心理学(東京大学出版会)

一方、「心理学 (New Liberal Arts Selection) 有斐閣」が合わなかった方には、「心理学 東京大学出版会」をおすすめします。こちらは約400ページであり、改訂も頻繁に行われており、最新の傾向にも対応できるのは強みといえます。

本書も、国総、家裁補、矯正心理専門職の基礎固めや択一対策、法務教官/保護観察官や地方公務員ならメインテキストとして、すべての心理職公務員に対応できます。公務員試験に必要な知識を抜かりなくインプットするのに最適な参考書として使えます。

心理学の基礎/図説 現代心理学入門(培風館)

このほか、地方公務員、法務教官、保護観察官の方なら、「心理学の基礎 培風館」と「図説 現代心理学入門 培風館」の併用に替えることもおすすめできます。

「心理学の基礎 培風館」は心理学史、発達心理学、社会心理学が無いものの、バランスよく標準的な記述で、心理職公務員の入門書として極めて高い定評を得ている参考書です。

「図説 現代心理学入門 培風館」は、出て来る人名がやや少ないものの、幅広くさまざまな心理学の領域を解説した優れた概説書です。こちらは図が多めでわかりやすく、両書を併用することで心理系公務員に必要なインプットは完結できます。

こうしたことから、地方公務員、法務教官、保護観察官の方なら、「心理学の基礎 培風館」と「図説 現代心理学入門 培風館」の組み合わせで、心理系公務員の基礎~標準的な知識のインプットは十分可能といえます。

どのテキストが良いのか

ここまで、メインテキスト=インプット教材として、おおよその目安としては、国総、家裁補、矯正心理専門職の方は「心理学 (New Liberal Arts Selection) 有斐閣」または「心理学 東京大学出版会」、法務教官、保護観察官、地方公務員(地方上級、市役所)の方は、先に挙げた2冊または「心理学の基礎 培風館」と「図説 現代心理学入門 培風館」の併用から、どれか1つで構わないので、過去問ベースの教材と併用して、理解不足な項目や頻出項目を読み込んで、知識の補強に活用しましょう。

3つを比べると、「心理学 (New Liberal Arts Selection) 有斐閣」は700ページのボリュームですが、どんな公務員試験にも対応できるだけの内容といえます。特に記述式が課される方や、各項目をじっくり取り組みたい方におすすめします。

その一方、「心理学 東京大学出版会」は400ページ程度で、改訂もよく行われており、標準的なテキストといえます。択一式対策には十分な内容ですし、何度も繰り返し読み返すテキストとして最もおすすめできます。

グラフィック心理学(サイエンス社)

なお、ここまで取り上げたテキストは別に、テキストの内容がなかなか頭に入らないという方は、「グラフィック心理学 サイエンス社」の追加をおすすめします。

「グラフィック心理学」は、臨床分野がほぼ無いなど、本書だけで公務員試験をこなすのは無理があります。しかし、心理学の全体像をサラッと頭に入れるのには最適な教材であり、メインのテキストでは理解不足な点を補充する用途には最適な良書です。

グラフィック心理学 サイエンス社」は、200ページのなかに、2色刷りで文章と図表が見開きとなった非常に分かりやすい構成で、ビジュアルから視覚的に理解できる、おすすめの補助的な参考書です。

心理学全般の参考書:記述対策のメイン教材

ここからは、心理系公務員で記述式試験が課される方なら、知識の補充や論点整理にぜひ使っておくべき参考書を紹介していきます。

新・心理学の基礎知識

心理系公務員で記述式が課される方には、「新・心理学の基礎知識 有斐閣ブックス」をおすすめします。心理学の基礎から応用領域、心理統計まで包括的にカバーし、膨大な論点をわかりやすく説明した本格テキストです。

本書は、心理学の理解に必要な約330のテーマを取り上げ、問題と解答という形式で解説した論点集のような参考書です。心理学の大学院入試や公務員試験で幅広く使われており、旧版の「心理学の基礎知識」以来、30年以上読み続けられている定番参考書です。

このため、一般心理学などの基礎領域だけでなく、応用心理学の各分野や心理統計にも踏み込んでいるといえます。また、設問のレベルも解答の記述も、非常に高度な水準ですし、国家総合職や家庭裁判所調査官補の記述対策にも、十分おすすめです。

新・心理学の基礎知識 有斐閣ブックス」は、基本的な用語も解説されていますし、高度な事例問題や論述問題を豊富に掲載しており、あらゆる心理系公務員で使える解説書です。問題と解答・解説がセットとなった構成で、調べ物的な辞書代わりにも使える参考書といえます。

キーワードコレクション心理学

その一方、「キーワードコレクション心理学 新曜社」は、心理学の対象、環境の認知、学習、記憶、動機づけ、感情、思考と言語、パーソナリティ、社会と集団の9つのジャンルから構成され、重要キーワードを厳選して解説した学術用語集です。

本書は用語集とはいえ、心理学の領域をバランスよく丁寧に解説した参考書です。調べ物的な使い方だけでなく、はじめから順序良く読み進めても役に立つ参考書としておすすめです。

キーワードコレクション心理学 新曜社」も、心理系大学院受験における定番参考書としてよく知られており、ある語句や事象の説明を求める説明問題や、特定の事例を取り上げて論じさせる論述問題が多い心理系公務員においても、記述式対策の論点整理におすすめできます。

どちらの教材が良いか

ここまで、心理系公務員で記述式試験が課される方には、「記述対策のメイン教材」として2冊の参考書を紹介しました。どちらかといえば、「新・心理学の基礎知識 有斐閣ブックス」は国総や家裁、「キーワードコレクション心理学 新曜社」は矯正心理専門職/法務教官/保護観察官や地方公務員に向いているといえます。

記述式対策の参考書もどちらか1冊で構いません。こうした参考書を使って、わからない論点をサッと調べて知識の補充を行ったり、記述式試験の論点整理を行いましょう。

心理学辞典(有斐閣)

これとは別に、できれば「心理学辞典 有斐閣」も追加すると良いでしょう。感覚・知覚、学習、認知、感情、行動、発達、パーソナリティ等の基礎心理学はもちろん、教育・社会・臨床などの応用分野まで網羅しています。

心理学辞典 有斐閣」は、項目ごとの説明が標準的で読みやすく、分からなかった点の知識の補充にとどまらず、記述式試験で見られる用語説明問題の練習にもなります。とても人気の高い辞典でもありますし、記述式の参考書では分からないという方は、本書の併用は大きな学習効果が得られると思います。

心理学全般の参考書:確認・チェック用教材

ここまで紹介したのは、心理学における択一式・記述式のインプットを行う参考書でした。ここからは、学習した知識や論点の理解度を確認・チェックするための教材を取り上げます。

自分でできる心理学問題集

自分でできる心理学問題集 ナカニシヤ出版」は、4-6サイズで約160ページというコンパクトサイズで、基礎心理学を網羅した5択式の問題集です。

本書についてナカニシヤ出版では、「臨床心理士、あるいは、公務員心理職、教員採用試験や大学院の受験対策用に自学教材として最適です」としています。取り扱っている問題は基礎~標準レベルが中心で、知識の確認を重視した問題集といえます。

自分でできる心理学問題集 ナカニシヤ出版」は、教養・標準・持論の3つのコースに分かれ、標準コースでは性格・社会・人間関係・発達・学習・認知・動機づけ・知覚・心理測定・教育評価、特論コースでは心理学史とトピックスを取り扱っています。

本書は、心理学概論や一般心理学といった基礎領域は一通りカバーしています。また、公務員試験の択一式と同じ5択式を採用しており、メイン教材としては不足ですが、択一式の頻出事項のチェックに最適な問題集といえます。

この問題集は改訂がされておらず、内容が古いのが唯一の難点です。ただし、公務員試験は、一定の人材の確保が目的であり、年度によって難易度や傾向が大きく変わることが無い試験です。

その一方、本書は古くから変わらない、典型的な頻出課題を幅広く押さえており、今でも根強い人気を誇る問題集といえます。本書に加え、上記で紹介した「心理学 東京大学出版会」と「新・心理学の基礎知識 有斐閣ブックス」の組み合わせは、受験生に非常によく好まれる定番パターンでもあります。

自分でできる心理学問題集 ナカニシヤ出版」は、コストパフォーマンスが非常に高く、まずはよく出る頻出箇所の問題集としておすすめです。コンパクトなサイズですし、スキマ時間を活用し、試験勉強を通じて気づいたときにサッとこまめにチェックする用途に最適です。

心理学検定 基本キーワード

心理学検定 基本キーワード」(実務教育出版)は、心理学検定の出題テーマを200以上の見出しキーワードごとに解説したテキストです。随時手元に置いておき、足りない知識をその都度補充したり、記述式試験の対策に使える参考書としておすすめです。

本書も公務員試験の教材では無く、約380ページという分量で、全て読むのは現実的ではありません。しかし、心理学検定は、大学卒業程度の心理学の標準的な内容に該当します。本書も、公務員試験や大学院入試において、幅広く使われる良書です。

心理学検定 基本キーワード」は、白と黒を基調にした、堅実な論点解説テキストです。巻末の詳細な索引が便利ですし、わからなかった語句をサッと調べたり、専門用語を軸に論点整理を行うような、根強い人気を誇る教材としておすすめです。

心理学全般の参考書:科目別対策

国家公務員や地方上級の心理系公務員では、問題が解けない分野を中心に、以下の各領域に踏み込んだ参考書にも取り組みましょう。

特に、国総(人間科学)、家裁の方は、以下の「科目別対策」は、必ず行うべき必須の内容といえます。

法務省専門職員・人間科学区分(矯正心理専門職/法務教官/保護観察官)の方も、認知心理学臨床心理学社会心理学で取り上げた「グラフィック認知心理学」「よくわかる臨床心理学」「臨床心理学キーワード」「グラフィック社会心理学」「社会心理学キーワード」まで踏み込んで取り組むことをおすすめします。

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