「過去問500」および「過去問350」は、実務教育出版から出ている過去問演習書です。過去問演習書とは、実際に出題された直近の過去問を一気にこなすことで、試験勉強の総仕上げができる問題集です。
過去問演習書は、メイン教材で公務員試験の勉強を一通りこなした方が、試験範囲全般に渡って最近の出題問題をこなす用途におすすめです。その一方、本試験の直前になって、何も勉強したことが無い方が、最低限やっておくという使い方も見られます。
「過去問500/350」は、公務員試験の試験別に、さまざまなラインナップが出ています。過去問演習書の中では最もおすすめできる教材であり、今回はこの問題集を詳しく説明します。
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過去問500/過去問350のラインナップ
「過去問500」/「過去問350」は、以下のラインアップが揃っています。実務教育出版では、これらすべてを、「合格の500シリーズ」と呼んでいます。
まず、「過去問500」は、国総(教養と専門の2分冊)、国家一般職大卒(教養と専門の2分冊)、国家専門職(教養/専門で1冊)、地方上級(教養と専門の2分冊)、市役所上・中級(教養/専門で1冊)、東京都・特別区1類(教養/専門で1冊)が出ています。
その一方、「過去問350」は、大卒警察官(教養試験)、大卒・高卒消防官(大卒/高卒で1冊。教養試験)、地方初級(教養試験)、高卒警察官(教養試験)、国家一般職高卒・社会人(教養試験)が出ています。
過去問500/350とは?
「過去問500」/「過去問350」は、試験別に最新の過去問を収録した問題集です。それぞれの巻頭には、試験ごとの概要を説明したガイドがあり、過去にどんな問題が出たかの分析データも掲載されています。
このため、受験する公務員試験ごとに、どんな分野からどんなレベルの問題が出ているのかを把握することが可能です。第一志望だけに取り組むことも構いませんし、併願の方は、複数の試験対策を行うこともおすすめできます。
過去問500/過去問350の構成
「過去問500」/「過去問350」では、巻頭の最新年度問題(緑色ページ)は、出題時そのままに収録しています。本文にあたる白色ページは、直近の過去問を、科目別に収録しています。
この問題集は、最新の試験の出題順や出題比率に応じて配分されています。つまり、重要な科目ほど掲載問題数が多くなっており、本試験と同じくウェイトの大きな科目をより多く学習できるようになっています。
また、本試験後に法改正や制度変更があった問題は、現状に合わせて改題し、時事・事情問題のデータは、最新のものに更新しています。このため、購入の際は、最新年度版の購入をおすすめします。
過去問500/350はどういう問題集か
「過去問500」/「過去問350」は、原則1ページに1問(上部に問題、下部に解答・解説)という構成です(問題文が長い場合は、見開きで左ページが問題、右ページが解答・解説)。問題を解いてすぐに確認しやすく、反復学習もしやすい問題集です。
過去問を直前期に早く正確に解く
「過去問500」/「過去問350」は、試験勉強が初めてという方には、説明がさっぱりわからず、不親切だと思う方も多いと思います。実際に、解説・解答部分は非常に簡潔ですし、不親切といえばその通りかもしれません。あえて必要最低限の記述にとどめているといえます。
それは、そもそも本書は、試験勉強にしっかり取り組んできた方を想定しており、難易度や傾向が近い直近の過去問に集中的に取り組むことで、早く正確に解く力を鍛えることで、合格を確実にする用途の問題集だからです。
「過去問500」/「過去問350」の解説・解答も、初歩から読み返す必要が無いように、問題を解くポイントに極力絞りつつ、要点はきっちりと記載してあります。メイン教材をこなしてきた方で、合格に近い方であれば、自分で補完して理解することができると思います。
本書を上手に使おう
きちんと勉強してきた方なら、「過去問500」/「過去問350」の解説で、行間に省かれている知識・法則や計算の過程は、自分で書き出すなり解釈しましょう。実力がついていれば十分可能ですし、安心して使えるはずです。それが出来ないと、合格は難しいとも言えます。
本書は、奇をてらった珍問や、極端に難しい難問は極力避けており、よくでる頻出問題かつ基礎~標準問題を厳選しています。目安としては、本書の解説が分からない問題が半分以上あると、苦手科目を中心にしっかり勉強し直すのが良いと思います。
過去問500/350のさまざまな活用法
この問題集は、試験範囲を総ざらいするのに最適な教材ですし、全く勉強してこなかった方にも、直前期に最低限の学習をするのにおすすめできます。ただし、(特に全く勉強してこなかった方の場合は、)当サイトで紹介した参考書を併用し、知識や解法を補充しながら学習すべきかと思います。
なお、「過去問500」/「過去問350」は普通に過去問演習に使えるだけでなく、本試験に合わせて問題数と時間を区切れば、模試のような本番の予行演習が可能です。また、何度もこなした後も、一通り目を通すことで、出題傾向や問題レベル、必要な知識・解法の再確認ができます。
国家専門職の場合(過去問500)
「国家専門職[大卒]教養・専門試験 過去問500」は、国税、財務は択一式の全科目に問題・解説を掲載しています。労基Aは一部の科目だけ問題文のみ、労基Bは一部の問題文だけ掲載しています。
皇宮護衛官大卒、法務省専門職員(人間科学)、食品衛生監視員、防衛省専門職員では、教養試験(基礎能力試験)は国家専門職で同じ問題が出るため、国税や財務と同じ共通問題をこなせば対応できます。
また、皇宮護衛官大卒の課題論文試験、法務省専門職員(人間科学)や食品衛生監視員の専門試験は、一部の問題文のみを掲載しています。これらは、他に市販の教材で入手できる可能性が困難であるため、情報量が極めて少ないのですが、購入を検討しても良いと思います。
外専の教養試験(基礎能力試験)
外務省専門職員の教養試験(基礎能力試験)は、国家一般職大卒と共通問題です。外専の教養試験(基礎能力試験)対策は、「国家専門職[大卒]教養・専門試験 過去問500」ではなく、「国家一般職[大卒]教養試験 過去問500」を使いましょう。
消防官の場合(過去問350)
「大卒・高卒消防官 教養試験 過去問350」は、東京消防庁から市役所・消防組合に至るまで、全国すべての消防本部の教養試験に対応します。区分が分かれていない採用試験であれば、大卒・高卒どちらの方にもおすすめできますし、高卒程度の方ならこれ1冊で問題ありません。
大卒程度の消防官が実施される場合
ただし、消防本部によっては、大卒程度と高卒程度で採用試験を分けて実施する自治体・消防組合もあります。この場合、大卒程度を志望する方は、「大卒・高卒消防官 教養試験 過去問350」に加えて、大卒程度にしか出ない問題への対策も必要です。
実務教育出版では、「大卒警察官 教養試験 過去問350」が、全国の大卒程度の警察官・消防官採用試験に対応しているとしています。志望先が区分を分けて試験を行う場合、大卒志望の方は、こちらも追加して取り組むのが良いと思います。
2冊に取り組むのが理想だと思いますが、(おすすめはしませんが)1冊に絞るなら、消防官の出題傾向に近い「大卒・高卒消防官 教養試験 過去問350」と、大卒程度の問題対策になる「大卒警察官 教養試験 過去問350」と、各自で優先する方を選ぶのが良いかと思います。
過去問500/350がある全ての公務員試験
ここまで見てきた「過去問500」/「過去問350」シリーズは、以下の公務員試験が出ています。
- 国家総合職 教養試験 過去問500
- 国家総合職 専門試験 過去問500
- 国家一般職[大卒]教養試験 過去問500
- 国家一般職[大卒]専門試験 過去問500
- 国家専門職[大卒]教養・専門試験 過去問500
- 地方上級 教養試験 過去問500
- 地方上級 専門試験 過去問500
- 東京都・特別区 1類 教養・専門試験 過去問500
- 市役所上・中級 教養・専門試験 過去問500
- 大卒警察官 教養試験 過去問350
- 大卒・高卒消防官 教養試験 過去問350
- 国家一般職[高卒・社会人]教養試験 過去問350
- 地方初級 教養試験 過去問350
- 高卒警察官 教養試験 過去問350
※大卒程度公務員試験では、教養試験(基礎能力試験)は事務系・行政系、理系(技術系)、福祉系・心理系など、共通問題が一般的であるため、どの区分(職種)の方でも使えますし、警察官と消防官は別途出版されています。ただし、専門試験に関しては、国家専門職を除き、一般的な事務系・行政系の区分(職種)向けの内容です。
過去問500/350は難しい?
「過去問500/350」に取り組むと、難しいという方が少なくありません。本書は、試験勉強を徹底して繰り返してきた方が、試験範囲の習得に目途がついたところで、過去問を使って実力を確認し、本試験レベルの問題を、早く正確に解き切る演習書です。
本書は、メインの教材で堅実に実力をつけた方なら、そうそう難しいと感じることは無いかと思います。掲載問題は、頻出項目を一通り網羅する一方、過去の本試験問題の中から、標準的な良問を重視して揃えていると思います。
また、解説に関しても、試験勉強をクリアしている方を想定しているため、これくらいの記述なら行間を理解できるだろうという前提で、無駄の無いスマートな記述となっています。
こうした点から、「過去問500」/「過去問350」を難しいと感じていても、正解率にこだわりすぎる必要は無いと思います。ただし、出来なかった問題でも、解説を読んで、正答を導く詳細なプロセスが、自分でイメージできて補完できるかどうかが重要だと思います。
これが出来るようであれば、ほとんどの問題を理解できると思いますし、一定の理解度には到達していると思います。あとはとにかく、どの問題でも、読んだあとの解説を閉じて、計算や論理的思考を実際に書き出しながら、自分で正答を導く練習を徹底しましょう。