公務員試験ガイド

地方公務員の出題タイプを考える(大卒/高卒とも)

今回は、地方公務員の出題タイプと科目別出題数の重要性について、地方自治体の採用試験がどのようにして作られているかを紹介しながら、なぜ試験勉強に役立てるべきなのかを説明します。

なお、今回の記事は、大卒・高卒どちらの方も対象にしています。また、地方公務員の場合、同じ自治体の採用試験でも、専門試験は職種や区分によって試験内容が異なりますが、教養試験は職種や区分を問わず共通の試験が課されることが一般的です。

この記事は、一般事務・行政系の職種・区分を対象にしますが、職種・区分を問わず共通問題が一般的な教養試験(基礎能力試験)に関しては、理系(技術系)、福祉系・心理系など、他の職種・区分の方も、ぜひ参考になさってください。

日本人事試験研究センターとは

地方公務員の場合、道府県と政令指定都市が賛助会員となっている公益法人「公益財団法人・日本人事試験研究センター」が、全ての道府県・政令指定都市、および、全国の市町村の約90%の採用試験の問題作成、提供、採点処理を行っています。

日本人事試験研究センターが提供する問題を実際に使うかどうかは、自治体の裁量に任されています。しかし、全問とも自前で独自に作成する自治体は、東京都や東京都特別区など、ごく一部に限られています。

なお、東京都や東京都特別区など、全て独自の試験を作成して実施する自治体(「独自型」または「独自タイプ」と言われます)も、過年度の実施実績に基づく詳細な分析によって、どのような出題内容なのか、ほぼ判明しています。

独自タイプ以外でも、独自の科目や問題を一部だけ混ぜる自治体もあります。その場合でも、大半は日本人事試験研究センターからの問題です。全国的に多くの自治体では、全て日本人事試験研究センターの問題という場合が一般的です。

また、日本人事試験研究センターでは、道府県・政令指定都市と一般の市町村を分けて、それぞれの教養試験と専門試験について、いくつかの採用試験のパターンを提供しています。

地方公務員の出題タイプ

地方公務員のうち、都道府県・政令指定都市・東京都特別区が該当する地方上級(大卒程度)および地方初級(高卒程度)と、政令指定都市以外の一般の市役所では、採用試験の扱いが異なります。なお、町村役場は、一般の市役所と同じです。

地方上級の出題タイプ

地方上級は、統一実施日が設定されていますが、その中でも全国的にいくつかの出題タイプに分類できます。東京都や東京都特別区など、ごく一部の自治体では独自の日程と試験ですが、これも毎年の出題内容が分かっています。

地方上級では、教養試験は、全国型、関東型、中部北陸型、その他の出題タイプ、独自型の出題タイプに分類されます。専門試験は、これらのタイプに加えて、法律専門タイプ、経済専門タイプもあります。

地方初級(高卒)の場合

地方初級の場合は、独自に実施する東京都と東京都特別区を除くと、全ての道府県・政令指定都市で、統一実施日に行われており、同じ出題内容が見られます。

市役所の場合(大卒・高卒とも)

一般の市役所では、1次試験が同じ日の市役所どうしなら、全国的に出題内容がほぼ同じです。市役所は、大卒・高卒を分ける市役所と、大卒・高卒を分けず一括して実施する市役所があります。一括で実施する市役所は、試験内容は高卒程度です。

市役所は、大半が6月、7月、9月で、各月に集中実施日があります。この他、10月にも集中実施日がある一方、ごく一部の市役所が独自の日程で実施します。大卒程度は6~9月、高卒程度は9月に多く実施される傾向があります。

市役所の出題パターンは日程別

一般的な市役所の場合、日本人事試験研究センターは、1次試験の日程(集中実施日)をいくつか指定した上で、日程ごとに試験問題を提供します。このため、同一日程の市役所どうしは、全国的に共通の出題内容が見られます。

日本人事試験研究センターが指定する、いくつかの集中実施日も、例年ほぼ同じ時期が設定されます。このため、市役所の採用試験は、実施時期ごとに、出題パターンが毎年変わらず、科目別出題数が安定して推測できます。

市役所の新教養試験(大卒・高卒とも)

一般の市役所の教養試験は、日本人事試験研究センターが、平成30年度(2018年度)以降、スタンダード(標準タイプ)、ロジカル(知能重視タイプ)、ライト(基礎力タイプ)という、3タイプの教養試験を提供しています。

これは、教養試験の場合です。専門試験を課す市役所の場合、専門試験は従来どおり、同一日程ごとに共通の出題タイプが見られます(そもそも市役所の場合、専門試験を課さず、教養試験のみという市役所も少なくありません)。

スタンダード、ロジカル、ライトの違い

さて、スタンダードとロジカルは1と2に分かれます。スタンダード1とロジカル1は大卒程度の教養試験、スタンダード2とロジカル2は大卒・短大卒・高卒程度、つまり、高卒以上なら誰でも受けられる教養試験です。

スタンダードは時事問題が多め、ロジカルは知能分野(一般知能)が多めで自然科学が無い点を除くと、ともに従来の市役所の採用試験と同じです。この2タイプは、今まで通りの試験勉強で通用しますし、他の公務員試験との併願もしやすいといえます。

ライトは、1~2などの分類が無く、高卒程度以上の方なら、誰でも受験できる教養試験です。ライトは、公務員試験で一般的な五肢択一式では無く、四肢択一式です。問題の難易度は易しくなる一方、試験時間は短く、問題数は多くなっています。

ライトは、実際には、判断推理、数的推理、資料解釈、文章理解、国語、社会科学・時事が出題されます。このうち社会科学・時事は、時事問題が非常に多く、社会/政治/経済/国際に加え、文化/科学技術など人文科学・自然科学からも出題されています。

ライトは、従来の公務員試験とは全く異なる試験と言われます。時事対策を幅広く行い、基礎~標準問題を重視して、より「早く正確に」解くべきです。とはいえ、出題科目は従来の公務員試験と同様ですし、既存の公務員試験の試験勉強で対応できます。

出題タイプを活用しよう

ここまで説明した、地方公務員における出題タイプの分類は、公的なものでは無く、LEC東京リーガルマインドや実務教育出版など、公務員試験に関わる民間企業の詳細な分析に基づく、あくまでも私的な参考情報です。

(市役所の教養試験のスタンダード、ロジカル、ライトは、日本人事試験研究センターが提供する公的な分類ですが、どの市役所がどのタイプかに関して、一般に一括して公開されることはありません)

その一方、公務員試験は、適切な人材の安定的な確保が目的であり、試験内容が年度ごとに大きく変わることがほとんどありません。このため、過年度の実施実績に基づく出題分析は精度が高く有益ですし、受験生の間で幅広く使われています。

もちろん、志望先の受験案内(募集要項)で科目別出題数まで明記された場合は、公式情報であるそちらを優先すべきです。しかし、科目別出題数の明記が無い公務員試験がたくさんありますし、その場合は民間の出題分析の利用がおすすめできます。

当サイトでは、科目別出題数を知る方法や、公式で明記されていない場合の出題分析の入手方法に関して、大卒・高卒とも、志望先の科目別出題数を知ろう(大卒/高卒とも)でまとめています。是非、参考になさってください。

科目別出題数は、「どの科目にどれだけ力を入れるか」という、試験勉強全体の計画に影響する重要な情報です。志望先がどの出題タイプに該当し、どれだけの科目別出題数なのかを知ることは、試験勉強の一番初めに知るべきことだといえます。

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